宿木(20・21・22) 中の君、薫を招き入れる

p128-136
20.匂宮、六の君の容姿に魅せられる
 〈p99 匂宮は、右大臣家の六の君の御様子を、〉
 国宝源氏物語絵巻 宿木(二)の場面です。

 ①匂宮の見た六の君
  大きさよきほどなる人の、様体いときよげにて、、、、、すべて何ごとも足らひて、容貌よき人と言はむに飽かぬところなし。
  →絶賛である。匂宮もぞっこんまいったことであろう。
  →六の君が誉められれば褒められるほど中の君が哀れになる。

 ②二十に一つ二つぞあまりたまへりける。いはけなきほどならねば、片なりに飽かぬところなく、あざやかに盛りの花と見えたまへり。
  →21~2才 女盛りである。(匂宮は26才)

 ③夕霧の大君(雲居雁腹)は東宮に入内している。
  そして六の君(藤典侍腹)が匂宮(東宮の次の東宮候補)と結婚
  →夕霧の絶大なる権勢の程が示される。

 ④六の君の父(夕霧)の父は源氏
  六の君の母(藤典侍)の父は例の惟光 
  匂宮の母(明石の中宮)の父は源氏
  →源氏の孫と孫の結婚である。
  →惟光の孫が匂宮の妻になった(やがて中宮になるかもしれない)

  →惟光は夕霧が娘に言い寄っていると聞いて「明石の入道の例にやならまし」と喜んだことがあった(少女p135)。その夢が実現しようとしている。
  →惟光はどうしたのだろう。三日夜の婚儀の場面で消息でも伝えて欲しかった。
  
21.中の君、匂宮の夜離れを嘆き、薫に消息
 〈p101 こうしてそれから後は、〉

 ①匂宮は好むと好まざるにかかわらず(両方だろう)二条院の中の君の所へは離れがちになる。

 ②中の君「なほ、いかで忍びて渡りなむ、むげに背くさまにはあらずとも、しばし心をも慰めばや、」
  →夫の実家(二条院)に移って来たのに夫は新妻の実家(六条院)に入り浸り。これでは身の置き所がない。宇治に少しの間でも帰りたいと思うのは無理なからんところである。

 ③中の君、薫に文を出す。
  「、、、、、さりぬべくは、みづからも」(来て下さるとありがたい)
  →余程切羽詰ったのかもしれぬがこれは大胆!

 ④「みづから」とさへのたまへるがめづらしくうれしきに、心ときめきもしぬべし。
  御文を、うちも置かずひき返しひき返し見ゐたまへり。

  →そりゃあ薫も嬉しかっただろう。でもちょっと軽率、罪作りな話である。

 ⑤「あなかしこ」
  →この時代から手紙の末尾の常套句であった。

22.薫、中の君を訪ね、懇ろに語り慰める
 〈p103 さて次の日の夕方に、〉

 ①さて、またの日の夕つ方ぞ渡りたまへる。
  →そりゃあ薫は有頂天になって飛んで行ったことでしょう。

 ②女君も、あやしかりし夜のことなど思ひ出でたまふをりをりなきにしもあらねば、、、
  今日は、御簾の内に入れたてまつりたまひて、、
  →何かあやしいですね。中の君の気持ちには今一つ納得できません。

 ③宮の御心ばへ思はずに浅うおはしけると思しく、かつは言ひもうとめ、また慰めも、かたがたにしづしづと聞こえたまひつつおはす。
  →う~~ん、これは薫にとっても難しい局面ですね。中の君も隙を見せてはいけないでしょうに。
  →中の君のお腹には匂宮の子どもがいる。匂宮との仲を御破算にして私が面倒をみましょうなんて薫には言える訳がないし、、、。困ったものです。

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4 Responses to 宿木(20・21・22) 中の君、薫を招き入れる

  1. 青玉 のコメント:

    女盛りの六の君の美しさ、ましてや財力にあかしてかしづく女房たちの数、個性的な装束などが夕霧の権勢を知らしめています。
    六の君はあの惟光の孫なのですね。
    その消息は書かれていないですが当然この世にはいないのでしょう。
    時代は源氏や惟光の孫の時代に入っているのですね。

    中の君の立場はますます危ういものになりそうです。
    宇治へのつのる思いは解りますがこういった心の隙が薫を付け入らせることになると思うのです。
    ここは辛いでしょうが毅然と耐えて欲しいところです。

    女心の悲しさ、弱さでしょうか?
    頼るもののない中の君にとって薫は唯一の後見人。
    しかし薫、中の君二人の覚悟と思慮が足りません。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      六の君の美しさは筆を尽して描かれていますね。美貌も家柄も権勢も全て揃った当代第一の女性だったのでしょう。匂宮にとってもこちらが表の世界なのでさぞご満悦だったのでしょう。

      物語上六の君は脇役なので言葉も心内も書かれてなく、ましてや歌もありませんが、少し匂宮とのからみでエピソードでも書いてもらえるとよかったのかも知れません。

      惟光は源氏と同年齢とすると当年72才になります。第一部で消えて以後一切書かれていませんがまあ源氏の忠実な部下ですから源氏の死後、菩提をしばらく弔って亡くなったと思っておきましょうか。

  2. 式部 のコメント:

     危なげな関係ながらも中の君が多少なりとも心の内を吐露できる相手、頼れる相手は薫しかいないのです。
     薫はおおらかにそれを受け止め、恋愛感情と切り離した対応ができる大人になってほしいと思います。
     匂宮の性格上、多少の心配、嫉妬は感じさせた方がよいので、読者はドキドキしながら中の君と薫の次の展開を心待ちにしましょう。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      確かに天蓋孤独な中の君には薫が唯一の相談相手なのかもしれません。でもいかにも危なっかしいですね。薫に大人になって欲しいという面もありますが中の君にももう少し現実をacceptできる女性になって欲しいと思います。
        →この点青玉さんのご意見に賛成です。

      手紙でモーションを掛けられて心弾ませる薫。当然男女間に敏感な匂宮も放ってはおくまい。おっしゃる通り次の展開が楽しみです。

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