p108-119
13.匂宮、中の君をいたわり慰める
〈p84 寝乱れた匂宮のお姿も、〉
①寝たくれの御容貌いとめでたく見どころありて、、
→これはない。中の君には失礼千万。当然身なりを整え前夜も何ごともなかったように颯爽と登場しなくっちゃ。
②匂宮「などかくのみなやましげなる御気色ならむ」
→脚注14は不審。匂宮は当然中の君の妊娠を知ってたと思うのだが。
③なつかしく愛敬づきたる方はこれに並ぶ人はあらじかしとは思ひながら、なほ、また、とくゆかしき方の心焦られも立ちそひたまへるは、御心ざしおろかにもあらぬなめりかし。
→中の君の可愛さは抜群だが六の君にも魅かれてしまった。
→匂宮はウキウキ。正直な心情であろう。一夫多妻は哀しい世界である。
④匂宮「さらずは夜のほどに思し変りにたるか」
中の君「夜の間の心変りこそ、のたまふにつけて、推しはかられはべりぬれ」
→問答が面白い。中の君としては「あなたこそ新妻を得て心変りしたじゃない!」と叫びたいところであろう。
→この辺り、源氏が女三の宮を迎えた時の紫の上の気持ちに似ていようか。
14.匂宮、中の君のもとで六の君の返歌を見る
〈p88 引き出物としていただいた珍しく美しい衣裳の〉
①いつのほどに急ぎ書きたまひつらん、と見るも、安からずはありけんかし。
→六の君からの返事を中の君の前で見る。見せる。そりゃあ中の君は堪らないでしょう。
②六の君の養母女二の宮(落葉の宮)の登場。
→代筆だったからよかったものを。六の君からの強烈なラブレターだったらどうしたのだろう。
15.中の君、わが身の悲運を諦観する
〈p89 「何だか不平がましい口ぶりなのも、〉
①普通の身分の者は一夫一妻。だが匂宮の身分では多妻が当たり前。
世間の声も中の君は幸せ者だというばかり。
→中の君も抗いつつも諦めざるを得ない。でも納得できようもない。
中の君 おほかたに聞かましものをひぐらしの声うらめしき秋の暮かな
→悲しい歌である。
②今宵は、まだ更けぬに出でたまふなり。
中の君 、、、まどろまれぬままに思ひ明かしたまふ。
新婚二日目の夜、匂宮はいそいそと六条院に出かけていく。
→これは切ない。源氏が女三の宮の所へ出かける時の紫の上に照応する。
16.夕霧、薫を宮中から同伴 薫、婚儀に協力
〈p92 その日は、明石の中宮のお加減が〉
①夕霧は匂宮・六の君の三日夜の婚儀に薫を招く。
→婚儀を更に盛り立てるため匂宮と並び立つ薫にも来て欲しい。
→薫は夕霧の異母弟、匂宮・六の君の叔父。
(夕霧は薫の出生の秘密を本当に知らなかったのか、、知らなかったとして読むのが正当なんでしょうね)
寝くたれの御容貌いとめでたく・・・
いくら中の君に早く会いたいとは言え昨夜の寝乱れた姿のままではね~
両方に魅かれる匂宮、多情ですね。
そこへもって後朝の使者が返歌を持参。
代筆とは言え、中の君にとっては辛い仕打ちです。
匂宮の立場を頭では理解できても感情は穏やかにはいかないのは当然でしょう。
世間では玉の輿と思われようが女心はそれとはまた別物ですもの。
宇治への思いがますます深まっていくようですね。
そしていよいよ三日夜の婚儀。薫もその祝宴を盛りたてる・・・
ここで夕霧の「大臣は、人知れずなまねたしと思しけれ」
何となくおもしろくない夕霧のこの感情おもしろいですね。
夕霧は薫の出生の秘密を知っていたでしょうね。
おっしゃる通り知らなかったとして読むべきなのでしょう。
ありがとうございます。
1.中の君という内室を自邸においておきながら六条院の六の君(こちらの方がやがては北の方になる)との婚儀に出かける匂宮。然もこの婚儀は初夜・二日目・三日夜の儀と三日間続けて通わなければならない。当然夜には激しい愛の交歓が続く。朝帰り寝くたれの姿でご機嫌を取りに来られても中の君としては何をか言わんでしょう。
→現代人には理解不能の一夫多妾制であります。
2.六の君の魅力については後で出てきますが当然容姿も人柄も最高級であったのでしょう。母の藤典侍のことは書かれていませんが六条院で養母女二の宮(落葉の宮)から英才教育を受けたものと思われます。
六の君に代っての女二の宮の歌
女郎花しをれぞまさる朝露のいかにおきけるなごりなるらん
この歌一条御息所が夕霧に詠みかけた例の(雲居雁に取られた)歌と似ていると思いませんか。(これも代筆、女二の宮に代っての母御息所の歌です)
女郎花しをるる野辺をいづことてひと夜ばかりの宿をかりけむ
(夕霧p134)
3.薫への夕霧の感情、面白いですね。夕霧としては薫がもっと羨ましそうな顔をして六の君との縁談を断ったことを後悔するような一言でも言って欲しかったのでしょうか。ほんと微妙な人の心を細かく書き込んでるものだと感心します。