さて、連休も終りました。4日間源氏を離れすっかり充電できました。気分一新、まだまだ難関の宿木に挑みたいと思います。よろしくお願いします。
p78-86
7.薫大君を追懐しつつ中の君に同情し恋慕す
〈p60 薫の君も、「何というお気の毒なことだろう」〉
①匂宮の六の君との婚儀のことを聞き薫は中の君のことを心配する。
花心におはする宮なれば
→「花心」素晴らしい言い方ではないか。
→夜離れが多くなるだろう。それをうまく言い聞かせることこそ薫の役目。
②「あいなしや、わが心よ、何しに譲りきこえん、、、、」
以下、これまでの経緯への薫の長い長い心内描写
大君に無体な行状に及ばなかったこと。
大君に中の君を勧められても大君を想う気持ちは変えられなかったこと。
中の君を匂宮と娶せれば大君は自分になびくだろうと術策を弄したこと。
→皆々済んでしまったこと。今さら繰り返しても仕方がなかろう。
→過去を振り返りつつ結局は自分のしたことに理由をつけ肯定している。
→自尊心を捨てられない薫というべきか。
③帝の御むすめを賜んと思ほしおきつるもうれしくもあらず
→薫にも大君に似た結婚恐怖症・拒否症みたいなものを感じるのだがどうか。
→「自分は日向を歩いていく男ではない。妻帯は重荷になるだけ」という思いだろうか。
④この君を見ましかばとおぼゆる心の月日にそへてまさるも、ただ、かの御ゆかりと思ふに、思ひ離れがたきぞかし、
→かの御ゆかり = 大君のゆかり
→本編が「紫のゆかり」の物語とすれば宇治十帖は「大君のゆかり」の物語である。
⑤け近く使ひ馴らしたまふ人々の中には、おのづから憎からず思さるるもありぬべけれど、まことには心とまるもなきこそさはやかなれ。
とりたてて心とまる絆になるばかりなることはなくて過ぐしてんと思ふ心深かりしを、
→女房たちともひと時の肉体関係は結んでも心を通わすことはしない。
→女性は仏道修行の妨げと思っている。女性拒否症に近い。
⑥薫「北の院に参らんに、ことごとしからぬ車さし出でさせよ」
→中の君の二条院は薫のいる三条宮の北に隣接している。
⑦薫「さばれ、かの対の御方のなやみたまふなるとぶらひきこえむ」
→いくら中の君の後見者と公認されてる薫でも主人のいない留守に人妻の所へ出かけるのはいかがなものだろう。不思議な感じがします。
⑧薫 今朝のまの色にやめでんおく露の消えぬにかかる花と見る見る
女郎花をば見過ぎてぞ出でたまひぬる。
→朝顔は無常の象徴。女郎花は女性・好色を表す。薫には女郎花は眼中にない。
(脚注13)
補遺 p82 人の上さへあじきなき世を思ひめぐらしたまふ
→百人一首 No.99 後鳥羽院
人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆえにもの思ふ身は
後鳥羽院は源氏物語のこのあたりを意識してNo.99を作ったのだろうか。
→もう一か所須磨のところも挙げられている。
かかるをりは、人わろく、恨めしき人多く、世の中はあぢきなきものかなとのみ、よろづにつけて思す。
→「後鳥羽院はこのとき自分を光源氏になぞらへてゐた」(丸谷才一)
浮気心を花心と言い回しによってかくも素敵な言葉に変身するとはね。
大君に対する憐憫、同情、恋慕が入り混じる薫の複雑な心境が連綿と語られるこの段。
後悔、自己嫌悪どこまでも悩める薫ですね。
かと言って出家の覚悟もなくただ憧れているだけのように思えます。
挙句、匂宮のことまで恨み辛みで憎らしく感じる・・・
そして匂宮の留守を狙っての訪問も常識知らずですね。
結局、薫はどういう人間なのでしょう。大人に成りきれていないですね。
こういう男は生涯独身を貫いた方が良いのでしょうか?
良く解らなくなってきました。
朝顔、女郎花対照的ですね。
字面だけ見ても清楚で儚げとなまめかしく好色そのものの感じがします。
ありがとうございます。
薫の追憶が延々と続きます。独り相撲と言おうか堂々巡りと言おうか。発展性があるとは思えません。
「こういう男は生涯独身を貫いた方が良いのでしょうか?」
→おっしゃる通りですね。
→「オマエ、何が不足でそんなにすねているんだい」と言いたくなります。
匂宮への劣等感、自分への自尊心。
「何で世上ナンバーワンのこのオレがこれだけ苦しまなければならないのか、、、」
普通ならどこか違った所に捌け口を見つけるなり溜まった鬱憤を爆発させるなり、何かありそうなものだが薫の場合じっと胸に秘めて自身との問答を繰り返すのみ。
→男としてはこんな男にはなりたくない、、と思います。
→女性もこんな男はゴメンでしょうね。でも心の内は外から分かりませんからねぇ。
追記 p82 人の上さへあじきなき世を思ひめぐらしたまふ
のところ、投稿に補遺を付けました。ご覧おきください。