橋姫 しめやかにこころの濡れぬ川霧の立ちまふ家はあはれなるかな(与謝野晶子)
さて、宇治十帖です。「ここから新しい話が始まる」と考えるのがいいと思います。前篇からの時の流れと主要登場人物についてしっかり頭に入れておくことが大切です。
[時代] 幻の巻がG52年、源氏は翌年出家して嵯峨御堂で過し2年後(G54年)に亡くなっている(想定)。橋姫は源氏の死後15年、即ちG67年から始まります。
薫の年にすればK20年ということになります。今後この年号で進めていきます。
換算: G=K+47 です。
[主要人物] (復習も兼て)
薫 表向き 源氏と女三の宮の息子、夕霧は異腹兄、明石の中宮は異腹姉
源氏の遺言で冷泉院が後見人となっている(冷泉院は薫を弟と思っている)
匂宮からみれば叔父
身分としては天皇家に仕える臣下(源氏と同じ)即ち匂宮は主人筋
実際 父は柏木(臣下が主筋の妻たる皇女に不倫してできた不義の子)
これが暴露されると官位・財産みな危うくなる
このことを知っているのは読者と弁の君(後出)のみ
匂宮 明石の中宮の第三皇子、源氏の孫、紫の上の秘蔵っ子
(K+1才) 皇位継承候補者 明石物語の本流 源氏似の好き者
薫は臣下だがライバル・友だち(源氏と頭中との関係)
八の宮 桐壷帝の第八皇子(冷泉帝が第十皇子) 源氏の異母弟
(K+31才) 母は大臣家出身の女御(それなりの身分)
八の宮の北の方 父は大臣 八の宮の愛妻だったが娘二人を産んで早逝
大君(K+2才)
中の君 (K才)
他に前篇に続いて登場する人物、年令だけ記しておくと、
冷泉院 K+29
夕霧 K+26
明石の中宮 K+19
女三の宮 K+21
p164-171
1.不遇の八の宮、北の方とともに世を過す
〈寂聴訳巻八 p82 その頃、世間からはすっかり無視されてしまい〉
①冒頭 そのころ、世に数まへられたまはぬ古宮おはしけり。
→新たな物語の始まり。「おっ、この古宮って誰だろう?」と読者は身を乗り出す。
②八の宮の紹介
母女御は大臣家でそれなりの身分であり、皇位継承も噂されていたがうまく行かず鳴かず飛ばずで今は世に背を向けている(詳細後出)
③八の宮の北の方 父は大臣で八の宮との仲は睦まじかった。
深き御契りの二つなきばかりをうき世の慰めにて、かたみにまたなく頼みかはしたまへり。
→失意の皇子と仲のいい北の方。読者の興味は深まる。
2.北の方逝去 八の宮、姫君二人を養育する
〈p83 年月がたちましてもお子がお生まれになりませんので、〉
①八の宮夫婦に二人の女君が相次いで生まれる。
→齢とってからの子ども。推定では大君は29才、中の君は31才の時の娘
②北の方は中の君を産んで産後の肥立ちの悪さから死亡
→母なし子の設定。父と二人の娘たちが残される。
→女三の宮のケースに似ていると思うがどうか。
母藤壷女御は尚侍朧月夜に気圧されて早死に。父朱雀帝は女三の宮を不憫に思う。
③北の方の今際の言葉「ただ、この君をば形見に見たまひて、あはれと思せ」
→中の君は北の方の忘れ形見。宮は愛おしく思わざるを得ない。
④二人の姫君の描写(対比)
中の君 容貌なむまことにいとうつくしう、ゆゆしきまでものしたまひける。
大君 心ばせ静かによしある方にて、見る目もてなしも、気高く心にくきさまぞしたまへる。
→中の君、可愛らしく美しい。大君、気立てがしとやかで気品高く奥床しい。
⑤幼きほどを見棄てたてまつりにければ、ただ宮ぞはぐくみたまふ。
→乳母たちも見棄てて去っていく。2才とゼロ才の姫を抱えて宮は途方に暮れたことであろう。
⑥心ばかりは聖になりはてたまひて、故君の亡せたまひしこなたは、例の人のさまなる心ばへなど戯れにても思し出でたまはざりけり。
→出家はしてないが心は聖(俗聖)。八の宮を象徴する言葉。
→でも、この頃浮舟が生まれていたのだと思うと割り切れないが(後の話です)
弥生三月、今日より宇治十帖の始まりですね。
改めて人物の相関関係、年齢がよく解り有り難いです。
この辺しっかり頭に入れておきたいですね。
忘れたら宇治十帖の冒頭に遡りましょう。
宇治十帖はどの作者や研究者も面白いとの評判、我々も大いに期待したいですね。
冒頭1、2は序章として説明から入っていますが本文の季節はいつごろでしょうね?
1と2では季節がわかりませんが3では「春のうららかなる日影に」とあるので今頃のことかと思えるのですが如何でしょう?
八の宮、初登場ですね、51才ですか。
遺された姫君と共に俗世との縁を切りひっそり隠遁生活を送る古宮のイメージが湧いてきます。
過去に大きな挫折があったが今は美しく成長した二人の姫君が生きがいのご様子。
仕えていた者や乳母たちも去り屋敷も荒れ放題、男手一つでの養育はさぞや大変な状況・・・
その中で物語はどのような展開が繰り拡げられるのか今日のスタートは季節と相まって楽しみです。
ありがとうございます。宇治十帖です。何と言っても響きがいいですねぇ。これまでキチンと読んできたご褒美に宇治十帖が楽しめるってことだと思っています。
1.1.2.は新物語の説明部分だから特に季節にも触れておらず実質3.の春の「うららかなる日影に」から、即ち丁度今頃の季節から語り起されるということだと思います。偶然ですがいいですねぇ、ご指摘ありがとうございます。
2.華やかな世界に背を向け隠遁生活を送る没落貴族、然しそこには若く美しい姫君が二人。これぞ雨夜の品定めでも触れられていた「鄙には稀なる美女」の典型的設定ですね。これに都のトップスター「匂ふ兵部卿、薫る中将」が絡んでいく。「紫のゆかり」とは丸で違う、「明石物語」ともちょっと違う「中の品」の女性を巡るお話が始まりますよ、、、って感じじゃないでしょうか。
(青黄の宮さんよりコメントもらいました。青玉さんからも歓迎メッセージお願いします)
いよいよ宇治十帖に入りましたね。「源氏物語 道しるべ」開店から1年8ヶ月、進捗予定表どおりに源氏マラソンを走り続けられていることに敬意を表します。あれこれと忙しくて、コメントをするどころか清々爺の解説もまともに読んでなかった小生ですが、好きな宇治十帖はできる限りフォローしていきたいと思っています。
「源氏は若菜から」と言われるものの、小生は心理描写が多く、物語の展開が遅くて暗い第2部(若菜~幻)はあまり好きになれません。これに比べて、第1部(桐壺~藤裏葉)や宇治十帖(橋姫~夢浮橋)は華やかでストーリーが面白く、派手なアクションもあって、わくわくします。映画も面白いストーリーのものや華々しいアクションを楽しめるものが好きだから、単細胞な人間に生まれついたのでしょうね。
女性も第1部を華やかに彩る夕顔、朧月夜、玉鬘、そして宇治十帖の悲劇のヒロインである浮舟に魅力を感じます。浮舟は可愛い上に、最も可哀想で、最もエロティック。これこそ、男性が内心では最も魅力を感じる女性ではないでしょうか。登場は先の話だけど、清々爺が浮舟の魅力をどのように語るかを楽しみにしています。
今回はまず登場人物のプロフィールを整理してもらって、ありがたいですね。突然、八の宮とその娘たちが登場し、最初読んだ時は「えっ、源氏にそんな弟がいたの」と少し違和感を持ちましたが、読み返してみると、確かに読者に興味を抱かせる上手な登場のさせ方ですね。これからの名解説を期待しています。
おっ、やっと戻って来てくれましたね。ありがとうございます。
「今日は嬉しい雛祭り」です。
おっしゃる通り宇治十帖、特に浮舟が登場する東屋からは抜群に面白いですね。それまではチト重厚ですが「薫と匂宮」&「大君と中の君」二組それぞれの気持ちを掘り下げて読んでいきたいと思っています。
私は薫になったつもりで読んで行きますので青黄の宮さんには是非匂宮になったつもりで読んでいただけたらと思います。きっと面白いコメントの応酬ができると思いますよ。時間がある時、気がついた時で結構です。どうぞよろしくお願いします。
小生が匂宮? いいですね。できれば、匂宮や光源氏のように自由奔放な人生を送りたいといつも思っていました。でも、実際は薫のように真面目を装い、うじうじと気持ちを抑えざるを得ませんでしたからね。せめて、宇治十帖のコメントでは匂宮になって、DNAに忠実に生きてみたいと思います。
賛同を得られてよかったです。人間の心の表と裏、どっちも大事。表のままに生きていく匂宮vs裏に固執せざるを得ない薫。どちらも人間の姿だと思います。女性を真面目に愛する貴君には匂宮がお似合いだと思いますよ。どうぞDNAのままにコメントしてください。
青黄の宮 さんお久しぶりです。
ずっとずっ~とお待ちしておりました。
リタイア後もやはり何かと完全にはフリーにさせて貰えなかったのでしょうね。
このブログのコメントが宇治十帖より更に賑わいそうでうれしいです。
当初6人のメンバーでスタートされたとか、再度宇治十帖の読み方も時の流れと共に変化が生じているかも知れませんね。
その辺のところもまたコメントしていただきたいと思います。
清々爺さんとの丁々発止のやり取り期待してしています。
青玉さん、ご無沙汰しています。共通の恩師、坂本先生より「楽しかった名古屋での集い! あのメンバーで談笑しましょう。お願いします。」と記した賀状を頂戴しました。「仰げば尊し、我が師の恩」、今年中にいつか会合をアレンジするのはどうでしょうか?
それにしても、青玉さんのコメントは凄い。小生がスカイブルー(青玉)さんのコメントに励まされてケニア通信を書き続けたように、清々爺も青玉コメントのお陰で元気に源氏マラソンを走り続けることができていると思いますよ。毎回欠かさずのコメントという量だけでなく、コメントの質の高さにも敬服しています。小生は時々、質の低いコメントをする程度でしょうが、今後ともよろしくお願いします。
あれは青黄の宮さんがケニアから帰国されて間もない時でした。
機会があれば又あの時のような楽しい時間が持てればいいですね。
坂本先生にはあれ以来ご無沙汰しておりますがきっとお喜びになると思います。
先生は文学にも造詣が深い方でしたから私たちが源氏物語を学んでいることを報告すれば仲間に入れて欲しいとおっしゃるかもね・・・
青黄の宮が匂宮役で清々爺が薫役、これはいいですねえ。
お二人ともしっかり役になりきってのコメントをお願いしますね。
ますます面白くなりそうです。私はどこかで突っ込みを入れようと思います。
ワイワイガヤガヤの宇治十帖もありですよね。