p60-70
5.匂宮、大夫の君と語らう 大納言に返歌
〈p365 匂宮は、明石の中宮の清涼殿のお部屋から、〉
①匂宮、大夫の君をみつけて宮中の自室に誘う。
→匂宮も東宮も大夫の君と男色関係にある。即ち三角関係
→男色といっても可愛がる程度のものだと思うがどうか。
②匂宮、紅梅大臣に返歌
花の香にさそわれぬべき身なりせば風のたよりを過ぐさましやは 代表歌
→中の君に逢いに来て欲しいと望む紅梅大臣への断りの歌
→やはり宮の御方の方がいい(これも皇族=桐壷帝の孫だからであろうか)
③段の最後の部分に「見たてまつらばやと思ひ歩くに」が反復されている。
→「紫式部の筆とはとても思えない」と言われている。
6.大納言、匂宮に再び消息 匂宮なお応ぜず
〈p369 さて、匂宮からのお歌は、〉
①拒否の返歌をもらっても紅梅大臣はあきらめない。再度匂宮に歌で誘う。
匂宮の返事は変わらず冷たい
匂宮 花の香をにほはす宿にとめゆかば色にめづとや人のとがめん
7.大納言と真木柱、匂宮のことを語り合う
〈p371 真木柱の北の方が宮中から退出なさって、〉
①真木柱は継娘大君が東宮に参内しているので宮中にいる。宮中から帰って紅梅に話す。
「宮のいと思ほし寄りて、『兵部卿宮に近づききこえにけり、むべ我をばすさめたり』と、気色とり、怨じたまへりしこそをかしかりしか」
→自分たちの若君(大夫の君)が東宮、匂宮に可愛がられている。そんなの嬉しいのだろうか。
②生まれつき芳香を持つ薫と常時香を焚き染めている匂宮のことを繰り返し強調
8.匂宮、宮の御方に執心 真木柱応諾せず
〈p372 宮の姫君は、御自分で何事も分別がおつきになるほど〉
①宮の御方=父(蛍兵部卿宮)の父は桐壷帝。母(真木柱)の祖父は式部卿宮(紫の上の父)
→匂宮がご執心になるのも分かる気がする。
②真木柱は夫(紅梅大臣)が中の君を娶せたいと望んでいるので、実娘宮の御方については匂宮の申し出を承諾しない。匂宮もあきらめずにいる。
→脚注参照 宮の御方の位置づけは確かに面白い。でも結局はここだけの登場となる。
③匂宮 いといたう色めきたまうて、通ひたまふ忍び所多く、八の宮の姫君にも、御心ざし浅からで、いとしげう参で歩きたまふ
→いきなり宇治十帖の前触れ的なことが述べられる。いかにも唐突である。
色々と不審な部分が多いとされる帖である。紅梅大臣の姫君たちと匂宮のことが語られるが何もストーリーはないし、姫君の性格描写も全くない。感情移入のしようのないつまらない帖と言えようか。
そうでしたか、この按察大納言は「夕霧」で頭中からの使者「蔵人の少将」とは別人なのですね。
混同しておりました。
男色やら姫君の売り込みやら短い中に盛り込み過ぎているのにそれぞれの姿がよく見えてきません。
過去と今をつなぐ説明として理解しておきましょう。
やはり宇治十帖と同時進行しながら一部重なっているとしか思えません。
くれなゐの梅の一本(ひともと)手折るれば
風の便りのゆくへも知れず
ありがとうございます。
1.おっしゃる通り「光る源氏の物語」と宇治十帖をつなぐ説明部分として理解しておけば十分でしょう。宇治十帖では登場人物がすごく絞られて物語が進行するのですが、その時代京には実はこういう女君(藤原の頭領紅梅大臣の娘大宮&中の君および蛍宮と真木柱の娘宮の御方)もいたのだ、、、ということでいいでしょう。
2.紅梅の歌ありがとうございます。前帖で紅梅は匂宮の象徴ということで納得したのですが本帖では按察大納言が紅梅の名を冠せられててちょっと戸惑います。(余り日数もないのに読後感想和歌を見事に詠んでいただき敬服しています)