紅梅 うぐひすも問はば問へかし紅梅の花のあるじはのどやかに待つ(与謝野晶子)
光源氏亡き後の人々の様子を紹介した「匂兵部卿」に続き「紅梅」に入ります。藤原の頭領たる按察大納言(頭中の次男、柏木の弟)とその姫君たちのお話で源氏物語本筋とはやや離れる。時系列的にもK24年の話で「匂兵部卿」とも繋がっていないしK20年から始まる宇治十帖との整合性もついていない。宇治十帖の「椎本」と「総角」の間に入れれば座りがいいのにとも言われてます。まあ、スンナリと行きましょう。
p44-60
1.按察大納言と真木柱、その子たちのこと
〈寂聴訳巻七 p354 その頃、按察の大納言と言われていたお方は、〉
①登場人物の整理
紅梅=按察大納言=頭中の次男、、、現在53-4才
故北の方(素性不明)との間に二人の姫君
大君(南面)
中の君(西面)
現北の方=真木柱の君(兵部卿宮と不幸な結婚後死に別れ紅梅と再婚)46才
宮の御方(東面)=兵部卿宮と真木柱の娘
大夫の君=紅梅と真木柱の息子
②髭黒の娘、あの真木柱の登場。
今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな(真木柱p140)
2.大君東宮に参上 匂宮を中の君の夫に望む
〈p355 姫宮たちは、似たようなお年頃で、〉
①大君は東宮に入内(東宮には夕霧の長女が既に入内している。後宮はにぎやか)
中の君、紅梅右大臣は匂宮に娶せたい。匂宮は宮の御方が狙い。すれ違いである。
②兵部卿宮、この若君を内裏にてなど見つけたまふ時は、召しまとはし、戯れがたきにしたまふ。
→匂宮と大夫の君は男色関係。帚木での源氏と小君と同じ。
③「せうとを見てのみはえやまじと大納言に申せよ」
→紅梅右大臣も二人の男色関係は分かっていたのか。これが普通なのだろうか。
④春日の神の御ことわりも、わが世にやもし出で来て、故大臣の、院の女御の御事を胸いたく思してやみにし慰めのこともあらなむ
→皇后は藤原氏から出すべし、頭中の時は源氏に敗れて成しえなかった。
→この辺り道長はどう読んだのだろう。
3.大納言、継娘の宮の御方に関心を寄せる
〈p358 大納言はこうして北の方や一の姫君がお留守のため、〉
①紅梅右大臣は真木柱の連れ子宮の御方に興味がある。
→源氏と玉鬘になぞらえられているがどうだろうか。まあ顔くらいは見たいということか。
②紅梅右大臣は宮の御方に敬語を使う。
→父が蛍兵部卿宮。即ち桐壷帝の孫、藤原とは出自が違うということか。
③紅梅右大臣、宮の御方に琵琶(父蛍兵部卿宮が名手だった)を弾いてくれと迫る。
→紅梅右大臣は幼少の頃から美声の持ち主で楽宴ではボーカル担当だった。
4.大納言、紅梅に託して匂宮に意中を伝える
〈p362 たまたまそこへ、若君が宮中へ参内しようとして、〉
①若宮=大夫の君、10才ばかりか。匂宮と男色関係。
紅梅大臣、宮中の匂宮の所へ紅梅を一枝折って大夫の君に持っていかせる。
②紅梅大臣 心ありて風のにほはす園の梅にまづ鶯のとはずやあるべき 代表歌
→匂宮さまどうぞうちの中の君に逢いに来てください。
そうなんですか、薫20から始まるのが宇治十帖ならばちょっと違和感がありますね。
按察大納言、前にちらりと登場した時のイメージ余りよくなかったような気がします。
紅梅大臣なんて呼ばれているのですか。
それが今や真木柱と再婚しているとは、どこでどんな縁があったのやら?
真木柱も運命に翻弄されているようですね。
複雑な家庭環境の中で継娘に懸想気味なのはやはり源氏と玉蔓に重なりますね。
なるほど紅梅に託した所から紅梅大臣と呼ばれているわけですね。
さて想いは届いたのでしょうか?
ありがとうございます。
1.この按察大納言=紅梅大臣=頭中の次男=柏木の弟、ですが人物事典によると過去に美声の持ち主として色んな楽宴の際幼くして美声を披露した人とのことです。頭中の息子として一条邸に女二の宮を慰めに行ってセクハラまがいに皮肉を言った「蔵人少将」とは違うようです。頭中の息子、多数いるので区別がつきませんね。長男柏木、次男紅梅大臣この二人をマークしておけばいいでしょう。
2.Why 真木柱? Why 玉鬘?(次帖竹河)と思いますが、第一部で登場した女性でこの二人の行く末を知りたがる読者が多数いたのでしょうね。「真木の柱に歌をはさみこんだあの娘はどうしたのかしら?」「髭黒のものにされちゃった玉鬘はその後幸せになったのかしら?」という声に促されて「紅梅」「竹河」の2帖が作られたのかもしれません。