p24-38
6.薫の気位源氏をしのぐ 身に芳香あること
〈p342 昔、光源氏の君とこぞってもてはやされたお方は、〉
①光源氏の総括
桐壷帝のおぼえ・右大臣派の圧迫・謀反の濡れ衣・須磨蟄居・復活栄華・出家勤行
②薫、生まれつき体から芳香を発した
香のかうばしさぞ、この世の匂ひならず、あやしきまで、うちふるまひたまへるあたり、遠く隔たるほどの追風も、まことに百歩の外も薫りぬべき心地しける
→脚注参照
宣長も玉の小櫛で不審がっている。古代の作り話でなく現実をリアルに描くのをモットーとした紫式部が何故こんなあり得ない人物設定をしたのだろう。
③秋の野に主なき藤袴も、もとの薫りは隠れて、なつかしき追風ことにをりしながらなむまさりける。
→藤袴より薫の芳香の方がまさっている。う~~ん、我が敬愛する紫式部がこんな風に書きますかねぇ。
7.匂宮、薫と競う 冷泉院の女一の宮を慕う
〈p343 こんなふうに、中将の君には、〉
①匂宮は薫に負けじと常時香を焚き染めている。
→薫vs匂宮、ライバルの設定である。
②庭の前栽にも香を求める匂宮
春は梅
秋は菊・藤袴・吾亦紅(香がある)(女郎花・萩は香がないから植えない)
③世人は、匂ふ兵部卿、薫る中将と聞きにくく言ひつづけて、、
→匂宮、薫の呼称はここから来ている。
④匂宮は冷泉院の一の宮に心を寄せている。
→唐突な話だが結局は進展はない。
8.薫、厭世の心深く、女性関係に消極的
〈p345 薫中将は、この俗世を心の底から味気ないものと、〉
①いきなりK19年に飛ぶ。
三位の宰相兼近衛中将に。薫中将と呼ばれる。
②心の中には、身を思ひ知る方ありて、ものあはれになどもありければ、心にまかせてはやりかなるすき事をさをさ好まず、よろづのこともてしづめつつ、おのづからおよすけたる心ざまを人にも知られたまへり。
→出生への疑問から若くして道心に目覚め浮ついた所がない(薫の人格を考える上での最重要点)
③おのづからなほざりの通ひ所もあまたになるを、
→性のことと道心のこととはいっしょにならない(この辺今の感覚では理解できない)。
9.夕霧、六の君を落葉の宮の養女とする
〈p348 「母尼宮がこの世にいらっしゃる限りは、〉
①夕霧、愛人藤典侍腹の六の君を女二の宮(@六条院)の養女にする。
→行く末は薫か匂宮に娶せたい。箔をつけるため養女に。
→脚注 六の君には玉鬘の面影がある。
→結局女二の宮には子どもが生まれない。
→女二の宮の心情などは一切語られないので幸せなのかどうかさっぱり分からない。
10.薫、六条院の賭弓の還饗に招かれる
〈p349 明くる年の正月の、〉
①明けてK20年正月 賭弓の行事(正月十八日@宮中)
勝ちは左方 夕霧・匂宮
負けは右方 薫も負け組
②六条院で夕霧主催の還饗
例によって飲めや歌えやの饗宴
②はつかにのぞく女房どもも、「闇はあやなく心もとなきほどなれど、香にこそげに似たるものなかりけれ」とめであへり。
→来たる物語(宇治十帖)の主役薫を読者に印象づける描写
生まれつき身体から芳香を発する薫、こう言った発想はどこからくるのでしょうね。
あり得ないことをあたかも真実らしく主人公の第一の特徴として挙げる、私は物語らしくていいな~と思っています。
物語だからこそ考えられる斬新な発想です。
それに対抗するライバルとしての匂宮の設定も読者を楽しませてくれます。
そしていきなり薫20歳まで飛びいよいよ宇治十帖への伏線が張られる・・・
この三帖は宇治十帖への期待感を持たせるための序章なのかも知れませんね。
昨日の血縁関係、冷泉帝も薫も少しずつ桐壺帝の血が入っていると言うことですね。
説明してくださって納得です。
単細胞の私、ややこしく面倒になってくると訳わからなく右往左往です。
では今日の和歌、にわか仕込みです。
春の夜の羽風に舞ひし梅の花
いづれ紅白匂ひ薫れや
ありがとうございます。
1.生まれつき身体から芳香を発する薫の設定、いいと感じられましたか。なるほど。ちょっと不自然かと思いますが物語ですからね。光源氏は「世の中光る君と聞こゆ」(桐壷p54)と容貌・立居振舞全てが光輝く男として設定されましたがそれに匹敵する男とするには「芳香を持った男」が一番いいと考えたのでしょうね。光と闇の世界の象徴とも言われていますし。
何れにせよ「匂ふ兵部卿、薫る中将」の設定は大したものだと思います。
2.2日間で飛ばしましたが見事な歌を詠んでいただきました。この帖はこの歌を憶えておけばOKでしょう。