幻 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

幻のまとめです。

和歌
82.大空をかよふまぼろし夢にだに見えこぬ魂の行く方たづねよ
    (源氏)    紫の上を痛惜

83.もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に年もわが世も今日や尽きぬる
    (源氏)    52才、源氏退場(桐壷巻の第2首に呼応)

名場面
83.落ちとまりてかたはなるべき人の御文ども、「破れば惜し」と思されけるにや
    (p318   源氏思い出の文殻を焼く)

84.もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に年もわが世も今日や尽きぬる
    (p324   光源氏、、退場、、、)

[幻を終えてのブログ作成者の感想]

幻を終えました。良きも悪しきも読者を魅了した大ヒーロー光源氏の退場です。源氏物語を「光源氏の物語」と考えればこの幻でThe Endとなってもおかしくはありません。いやむしろその方が自然かもしれません。諸本も幻・雲隠まで、即ち光源氏の一生を扱ったものが多いのです。
(匂兵部卿三帖+宇治十帖は源氏物語の第三部或いは続編とされますが「別のお話」として仕切り直した方がいいかと思います。その方が宇治十帖に深く入れるのではないでしょか)

本帖に登場する人(源氏が対面した人、女房・導師を除く)をピックアップしてみました。
 ・蛍兵部卿宮
 ・明石の中宮&匂宮
 ・女三の宮&薫
 ・明石の君
 ・花散里
 ・夕霧
 ・夕霧の子どもたち
 ・頭中の息子たち
 ・(そして最後は)匂宮

となっています。朱雀院・冷泉院・秋好中宮は居場所が違うせいか出て来ません。フルキャストの回想シーンという意味ではどこかに出して欲しかったと思います。冷泉院が源氏を見舞うなんて場面があればよかったのじゃないでしょうか。

源氏の最晩年(紫の上亡き後)、源氏が一番心が安まったのは明石の君でも花散里でもましてや女三の宮でもなく女房(召人)の中将の君だったというところに源氏の孤独、悲哀を感じます。

(明日は本文のない帖「雲隠」について考えたいと思います)

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6 Responses to 幻 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

  1. ハッチー のコメント:

    皆さんのお陰で、光源氏の物語を、苦労しながら、しかしワクワク楽しく、読み切れました。我ながら、良くやったと清々しい気分です(ソチオリンピックで全力を出し切った4位の誰かさんが笑顔で言った言葉です)。
    そして、この光源氏を描けたのは、王朝文化華やかしい時代に生きた女性、天才女性だからこそ、と思っています。

    また、この源氏を読み始めたせいで、古代・中世の歴史にも改め興味が出てきたのも、副産物ですが、源氏に触れた成果です。

    雲隠、先週まで、その存在すら知りませんでした(すっかり忘れているのかも)。物語の取り進め方としてはすごく粋な計らいと思いますが、今日の清々爺のコメントを先ずは待ちたいと思います。

    そして、今週からの、爺によると、ほぼ新しい物語の展開、これも楽しみです。

    幻の歌では、

    うき世にはゆき消えなんと思ひつつ思ひの外になおぞほどふる (源氏)

    なき人をしのぶる宵のむら雨に濡れてや来つる山ほととぎす  (源氏)

    春までの命もしらず雪のうちに色づく梅を今日かざしてん   (源氏)
      (退職を真近に迎え、読んだその日に、自宅の庭に梅がほころび、雪が降った)

    と、爺も挙げておられる

    もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に年もわが世も今日や尽きぬる
        (源氏)    52才、源氏退場(桐壷巻の第2首に呼応)

    が良かったです。

    先般話題に登った全国共通一次試験の国語ですが、今回初めて平均点が満点の半分以下で、源氏の文章が難解だったためと、先週の読売新聞に書いてありました。ですよね。
    ところが、どこかの学者先生が、あのくらいの文は、一般教養があれば読めるのが普通で、今は教養不足とコメントしていました。
    小生は、原文だけでは読み解くことはできず、一般教養が無いのは、小生か、この学者先生かと、思わず考え込みました。

    今日から3日家を空けますので、雲隠のコメント、木曜日に見させていただきます。
    では、

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.「苦労しながら、しかしワクワク楽しく、読み切れました」か。最高の読み方ですよ。紫式部も退場した光源氏もその言葉を聞けば感涙にむせぶことでしょう。

       源氏をきっかけに周辺への興味を拡大されてるとのこと。これもいいですね。源氏物語は平安文化の集大成ですから、それまでの全てが源氏物語に集約されて来て、そして源氏物語から次代の文化が生みだされていくと考えることができると思います。ドンドン色んな分野に挑戦してください。

      2.私もその先生のコメントを読んで一般常識(事態認識)のなさに唖然としました。きっと源氏物語を通して読んだことない人だろうなと思いました。源氏をなめてはいけません。こういう人の手で国語教育政策がなされていることこそ「非常に深刻」ではないでしょうか。

        ※先生のコメント
        「出題内容は一般教養レベルで、古典に対する素養があれば解ける。古典の読解力が落ちており、非常に深刻だ」

  2. 青玉 のコメント:

    物語の圧倒的存在であった光源氏が幻と共に読者に一抹の感傷を残し退場していく場面、光源氏という人間の根幹を見る思いでした。
    あれほど輝いていたスーパーヒーローも悩み苦しみ迷う普通の人間だったということに気づかされます。
    愛する人との別れ、老いと共に色あせ魅力を失っていく源氏の姿を目の当たりにして我が人生をも考えさせられる重いテーマでした。
    個人的には「光源氏」という男性は好みではありませんがこれでお別れかと思えば名残は尽きません。
    ヒーロー、ヒロインが舞台から消えて行く以上、源氏物語はここで完結かと思えば雲隠を経て第三部へ。
    紫式部は第三部で読者にどのようなテーマを提供してくれるのか興味津々です。

    さて先日図書館で手に取った「The Tale of Genji」
    これは切り絵作家の宮田雅之と瀬戸内寂聴、ドナルドキーンの共著をマック・ホートンが英訳したものです。
    切り絵の素晴らしさもさることながら短く要約された各帖が英語で楽しめるものです。
    英語音痴の私ですが興味を魅かれたのが各巻のタイトルを英訳したものです。
    これは面白かった!!たとえば
    若紫はYoung Lavender
    紅葉賀The Fall Foliage Celebration
    絵合 The Picture Contest
    夕顔のEvening Facesに対して朝顔はThe Morning Glory
    夕霧は Evening Mist
    そして幻はThe Wizard という具合です。
    いかがですか、ちょっと面白いと思われません?
    玉蔓がThe Jeweled Garlandならば私,青玉はBlue JeweledそれともSapphire?
    こんな調子で遊んでしまいました。
    清々爺さんは「The Tale of Genji 」本文を楽しんでくださいね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.光源氏の退場、本当に感無量です。紫の上の悲しさ、明石の君の聡明さ、六条御息所の恨み、、、、女君の生き方について読者は色々考えさせられましたがこれもスーパーヒーロー源氏の生き方に呼応して照らし出されている訳ですから。溌剌とした青年期、波乱万丈の末栄華を極めた壮年期、苦悩に満ちた晩年、、、光源氏の喜怒哀楽に応じ読者も様々な興奮を味わうことができました。「源氏の君よ、ご苦労さま、お疲れさま!」ってお礼をいいたくなります。

      2.「The Tale of Genji」のご紹介ありがとうございます。面白いですね。
       夕顔がEvening Faces で夕霧が Evening Mist ですか。なるほど。
       幻が幻術士でThe Wizard というのもいいですね。

       源氏物語が切り絵で表現され要約が英語に訳される。これこそクールジャパンの最たるものではないでしょうか。

  3. 進乃君 のコメント:

    この帖、本文より(?)コメント部が清々爺始め各位の薀蓄が
    とても面白く、清々爺の歳時記風叙述のまとめも粋でした。
    加えてNo53道綱の母、No62清少納言、No54儀同三司の母を
    チラ出しするなど、端々に次回講座の百人一首のサワリを披露、
    清々爺も上手いね!
    いずれにしても、源氏は、この帖で物語の舞台から去ると言うのに、
    (青玉さんも言っていますが)もうウンザリするような惚けよう。
    思うこと為すこと、紫の上に対する未練未練、ええ加減にせい、と
    言いたくなります。
     但、源氏の出家準備の際、導師相手に詠んだ、
    春までの命も知らず雪のうちに
        色づく梅を今日かざしてむ

    この歌は絶品でした。
    (ハッチーさんのコメントに添えられてあったので 
     余計に胸に滲みたかも知れません)

    長い源氏の一生、通読ではなく 好きなところを
    Flashbackするよう 読み返してみようかな と
    思っています。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      「御法」を読んでの紫の上への想いと同じように「幻」を終えての光源氏への想いも人それぞれだと思います。それだけ物語に奥行があり源氏の評価(感じ方)も異なるということでしょう。

      1.百人一首に触れてのコメントはサワリを披露したわけではありません。源氏物語に関連づけての私の投稿はあれが精一杯です。後は皆さん相互の応酬に期待してますのでよろしく頼みます。「みもこがれつつ」入手しましたのでチョコチョコ読んでいきます。

      2.好きなところを選んでのフラッシュバック、お勧めします。一般的な名場面は「名場面集」を参考にしていただけばいいとして、自分が気に入った(好きな)場面が一番だと思います。

       私なら桜の季節に合わせさしずめ、

        「朧月夜に似るものぞなき」とうち誦じて、こなたざまには来るものか。いとうれしくて、ふと袖をとらへえたまふ。(花宴p248)

       源氏20才の春。純粋で一番光り輝いていた時。読んでてニンマリしてしまいます。 

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