幻(17・18・19) 源氏、退場

[お知らせ]
 ①右欄の源氏百首・名場面集・青玉和歌集、「御法」まで更新しました。
  万葉さん、ありがとうございました。

 ②4月~9月、最後の半年の予定を上欄「進捗予定表」に書き込みました。宇治十帖の月割りです。予習の参考にしてください。

p318-324
17.一年を終え涙ながらに紫の上の文殻を焼く
 〈p321 今年一年をこうしてこらえ通して来たのだから、〉

 ①12月 いよいよ出家への最後の準備
  須磨流謫の折り紫の上から来た大事な手紙(絵手紙の交換などしていたのだろうか)、全て焼き捨てさせる。
  →須磨・明石時代はG26-28年、今から24-26年前である。

 ②源氏 死出の山越えにし人をしたふとて跡を見つつもなほまどふかな
  源氏 書きつめて見るもかひなし藻塩草おなじ雲居の煙とをなれ
  →紫の上の書も歌も全て源氏が精魂込めて教えたもの。立ちのぼる煙を見て源氏は再度最愛の人を失ったことを実感したのではなかろうか。

18.仏名の日、はじめて人前に姿を現す
 〈p324 十二月十九日から三日間の御仏名会も、〉

 ①12月 - 雪
  19日から三日間 仏名会 一年間人前に姿を見せなかった源氏が現れる。
  →スーパースター光源氏の最後のお披露目である。

19.歳暮、年もわが世も果てることを思う
 〈p326 もう今年も暮れたとお思いになるにつけても〉

 ①歳暮 - 儺やらい(追儺)
  若宮(匂宮)が登場
  →源氏の後継者たることを宣言しているのだろうか。

 ②源氏 もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に年もわが世も今日や尽きぬる 代表歌
  →第二部最後の歌、源氏最後の歌、絶唱である(源氏の歌は795首中221首)

  脚注7  藤原敦忠の歌の上の句がそのまま取られている。
   もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に今年は今日にはてぬとかきく
  →最後の重要な歌、オリジナルの方がよさそうな気がするのだが。
  →当時敦忠のこの歌はさほど有名ではなかったのか。有名だからあえて引用したのか。

  →藤原敦忠 百人一首No.43
   逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

これで第二部そして光源氏の物語が終了します。幻の巻は走馬灯のような回想場面、これはこれで感慨深いものがありました。本文のない「雲隠」を経て第三部に移ります。

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4 Responses to 幻(17・18・19) 源氏、退場

  1. 青玉 のコメント:

    大切な形見の紫の上の思い出の文をすべて処分したと言うことはいよいよ源氏出家への踏ん切りがついたということでしょうか。
    どんなにかせつない思いだったことでしょう。

    そして久方ぶりに人前へ最後の姿を現わす。
    さぞかしスーパーヒーロー光源氏らしい美しいお姿だったことでしょう。

    もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に年もわが世も今日や尽きぬる 
    源氏わが世の終わりを自覚して消えてゆく

    静かな幕切れの場面に私も喪失感でいっぱいです。
    そして「幻」の巻名ぴったりの物語をかみしめております。

         ぬばたまの闇夜つらぬくまぼろしの
            光ひとすじいづこぞゆかむ

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.紫の上の思い出の結晶たるラブレターを燃やす、、、、名場面ですねぇ。
      須磨・明石時代に紫の上と交した恋文は二人を結びつけるこの上ない大切なものだったのでしょう。その恋文を煙にしてしまう。一枚一枚繰りながら丁寧に燃やしていく、最初は燃えるのを躊躇してた古い上質な紙がやがて一気に燃え上がり煙は真っ直ぐ高く空に消えていく。悟りきったかのように無表情な源氏、、、涙を袖で隠す中将の君と中納言の君。映画の最後を飾る場面にピッタリではないでしょうか。

      2.幻の歌、いいですよ。私たち読者を1年半に亘り楽しませてくれた光源氏さまが世を捨てて退場する。大事な人を失った感じです。式部さんの朗読を聞いてちょっと感傷的になっています。

  2. ハッチー のコメント:

    光源氏最後の登場。新年が最後、その前に、
    年の瀬、梅の花がほころび始め、そこに雪が降る、

    春までの命も知らず雪のうちに色づく梅を今日かざしてん

    退職に伴うお礼(お祝い)の会食などが重なり、遅れて今日この節と歌を読みました。

    小生の机の前に梅の老木が一本あり、先週あたりからこの梅が花をつけ始めて、さむいものの春近しと感じていたのですが、偶然今日は雪が降り(東京は大雪警報がでています)梅に雪が積もり、前庭も真っ白です。
    小生も今月末で完全に会社生活を引退するのですが、物語に自分の人生も重ね合わせ、幻、特に最後の話しを感慨深く読みました。

    春になると、この梅に、うぐいすのつがいが来て、ホーホッケキョと鳴いたりするので、小生の場合、出家する予定もないので、楽しく今後を過ごして行きたいと思っています。

    青玉さんの幻の歌も、すばらしいと思いました。

    ということで、今日は梅と雪でも眺めて、過ごします。

    • 清々爺 のコメント:

      長い間のお勤めご苦労さまでした。源氏の52才に比べると年とったものですが、そう、出家などしなくていいし、身体が動き家族も安泰でそれなりにやることがある。一番いい時だと思います。源氏読みもメニューの一つにして(時間に余裕ができた分深読みできますよ)リタイア生活を楽しんでください。

      梅に鶯のつがいですか、いいですねぇ。花鳥を愛でてゆったりした気持ちで日々過ごして行きたいですよね。

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