p212 – 224
32.小少将、夕霧を塗籠の中に導き入れる
〈p234 夕霧の大将はそうは言っても、〉
①小少将、夕霧に責め立てられてついに塗籠に導き入れる
人通はしたまふ塗籠の北の口より入れたてまつりてけり。
→籠城と言えどもろいもの。小少将も新主人には抗えないということだろう。
②男は、よろづに思し知るべきことわりを聞こえ知らせ、言の葉多う、あはれにもをかしうも聞こえ尽くしたまへど、つらく心づきなしとのみ思いたり。
→真面目男夕霧、この期に及んでも無体には及べない。諄々と説得する。
③女二の宮 単衣の御衣を御髪籠めひきくくみて、たけきこととは音を泣きたまふ
→着物を頭から被って声を上げて泣く、これでは夕霧もあきらめるしかなかろう。
④そんな最中夕霧は雲居雁のことを想う。
→つくづくと自分がやっていることに愛想がつきたのではないか。
33.夜明け方、夕霧ついに宮と契りを交す
〈p236 いつもこんなふうに不首尾のまま、〉
①内は暗き心地すれど、朝日さし出でたるけはひ漏り来たるに、埋もれたる御衣ひきやり、いとうたて乱れたる御髪かきやりなどして、ほの見たてまつりたまふ。
→情交の場面。それにしても女性とは弱きものである。
②情交後の女二の宮の心内
故君のことなることなかりしだに、心の限り思ひ上がり、御容貌まほにおはせずと、、、
柏木と夕霧との比較。柏木にはそんなに愛されてなかった。夕霧の方が立派だがそんな人に私は愛してもらえるのだろうか。
→脚注14「実事を境にした女の心境の微妙な変化である」
→女もそうだろうが男の心境にも変化があるはず。さて夕霧は?
③新主人との結婚の儀がやっと整い、邸内は活気づく。
→女二の宮の去就は随身、女房たちにとっては死活問題。夕霧大将が通われることになったとあれば勢いづくのは当然である。
34.雲居雁、父の邸に帰る 夕霧迎えに訪れる
〈p239 こうして夕霧の大将が無理強いに住み馴れた顔をして、〉
(この段がそのまま2014年センター試験国語の第三問として出題されました(14.1.18))
①女二の宮との事を果たし亭主然と振る舞う夕霧にさすがの雲居雁も愛想をつかし方違えを口実に致仕大臣邸(二条)に帰ってしまう。
→雲居雁と致仕大臣(頭中)はそんなに仲のいい父娘ではなかった筈。二条邸も夕霧と引き裂かれ連れていかれた恨みの場所。居心地はよくなかったの筈だが、、。
②舅の手前それは拙いと夕霧は二条邸に雲居雁を迎えにいく。
→この辺、髭黒が北の方を迎えに式部卿邸に行く場面とよく似ている(真木柱14.)
③母親と二条邸に移った子ども&三条邸に残った子ども 無邪気な様子
→親が離れ離れになる。子どもたちには罪はない、可哀そう。
④夕霧 「はかなき一ふしに、かうはもてなしたまふべきや」
雲居雁 「何事も、今はと見飽きたまひにける身なれば、今、はた、なほるべきにもあらぬを、何かはとて」
→夕霧は「こんな些細なことで」と言うが雲居雁にとっては「とんでもないこと」であろう。
→10年仲良くしてきた夫婦でも我慢できないことはある。
→でも二人の会話は何となく痴話喧嘩みたいな感じ。やはりお互い愛し合ってるのであろう。
この場面においても長々の説得はいかにも夕霧らしい。
女心を解しない不器用男丸出しですね。
塗籠、結構広いようですが納戸のようなところを想像すればよろしいかしら?
かろうじて思いを遂げた夕霧に対しあれほど強情だった女二の宮の意外な脆さに驚きを禁じ得ません。
夕霧に何と思われただろうと危惧する女心も哀れですね。
一方妻の実家への家出と夕霧の驚き・・・
昨日の痴話喧嘩もそうですが今日の丁々発止の夫婦のやり取りも夕霧夫婦には申し訳ないのですが楽しませてもらいました。
内心はお互い困り果てているだろうにああ言えばこういう・・・
意地の張り合いは火に油を注ぐようなものです。
それにしても事情のわからない無邪気な幼児たちが可哀想ですね。
ありがとうございます。
1.塗籠 「母屋の東西どちらかや廂などに設けられる、壁で囲まれた閉鎖的空間をいい、二間四方になる場合が多い。出入り口は妻戸になるが、その位置はさまざまで、明かり取りがあるとの説がある。普段は物置のように使用したらしい」(源氏物語図典)
→ちょうど8畳のようです。この場合そんなに物も置いてなかったようでけっこう広いですね。
2.情交後の女二の宮の心情哀れです。悪いのは男の方、開きなおって「ちゃんと責任とってもらうわよ!」って高飛車に出ればいいのに、、、。今ならそうでしょうがこの時代そうはいきません。ひたすら気に入られるように念じるしかないということですかね。
→夕霧がどういう気持ちだったか書かれてませんが、きっとウキウキで上機嫌だったのでしょう。と同時に「こりゃあ責任取らねばなるまいぞ」と思ったのでしょうか。
3.私が試験官なら設問は、 「夕霧はどんな顔をして自邸に戻り雲居雁と応対したのかその心情を理由を付して述べよ」 としますけどね。