夕霧(20・21・22・23) 源氏と夕霧 女二の宮につき探り合い

p175 – 184
20.夕霧の文への返事に小少将、宮の歌を入れる
 〈p204 夜も明け方近くまで、〉

 ①夜明け方近く、かたみにうち出でたまふことなくて、背き背きに嘆き明かして、朝霧の晴れ間も待たず、例の、文をぞ急ぎ書きたまふ。
  →その夜は同室で寝ながら実事もなく背中合わせで、、、これはまあ仕方ないか。
  →夕霧は起きてすぐ雲居雁の前で女二の宮に手紙を書く、これはないでしょう!

 ②小野から返書が来る。小少将が宮の直筆のすさび書きを盗みだしてきた。
  女二の宮 朝夕になく音をたつる小野山は絶えぬ涙や音なしの滝  
  →とにもかくにも自分の歌を見ての宮からの歌、夕霧は喜ぶ

21.源氏、夕霧と宮との噂を聞き、心痛する
 〈p207 六条の源氏の院も噂をお耳になさって、〉

 ①源氏がやっと登場する。
  いとおとなしうよろづを思ひしづめ、人の謗りどころなく、めやすくて過ぐしたまふを、面だたしう、わがいにしへ、すこしあざればみ、あだなる名をとりたまうし面起こしに、うれしう思しわたる、、
  →源氏の述懐。自分は浮き名を流したが息子は真面目で面目を施した、嬉しいことだ。
  →本心からそう思ったのだろうか。そうだとすると源氏も年を取ったものである。

 ②次いで紫の上が久々に登場 
  女の身の処し方についての思いが述べられる。
  女ばかり、身をもてなすさまもところせう、あはれなるべきものはなし。もののあはれ、をりをかしきことをも見知らぬさまにひき入り沈みなどすれば、何につけてか、世に経るはえばえしさも、常なき世のつれづれをも慰むべきぞは、
  →源氏の言うがままに生きてきた自分の生き方に疑問をはさんでいる。
  →これは紫式部の女性論であろう。  

22.源氏、夕霧と対面の際、宮のことを探る
 〈p209 夕霧の大将が六条の院に参上されたついでに、〉

 ①源氏と夕霧の親子の対話 源氏は夕霧と宮の噂を知っていて探りを入れる。
  かの皇女こそは、ここにものしたまふ入道の宮よりさしつぎには、らうたうしたまひけれ。人ざまもよくおぼすべし。
  →巧みな誘導尋問である。

 ②夕霧はその手に乗らない。さしさわりなく答えて宮のことには触れない。
  →さすが秀才夕霧。まだ宮とは何もなく答えようがないのが実情だろうが。

 ③源氏 かばかりのすくよけ心に思ひそめてむこと、諌めむにかなはじ、用ゐざらむものから、我さかしに言出でむもあいなし 
  →恋の病は治せない、忠告しても無駄。さすが源氏、よく分かっている。

23.夕霧、法事を主宰する 大臣不快に思う
 〈p211 こうして御息所の四十九日の御法事は、〉

 ①御息所の四十九日を夕霧が行う。大臣(頭中)は不快に思う。
  →大臣も勿論夕霧と女二の宮の噂は耳に入っていたのだろう。
  →御息所は嫁である女二の宮の母親。自分こそ主宰すべき立場。
  →娘の雲居雁を放ったらかして息子の未亡人に言い寄るべくその母の法事をやるなんて許せない!と思って当然でしょう。

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2 Responses to 夕霧(20・21・22・23) 源氏と夕霧 女二の宮につき探り合い

  1. 青玉 のコメント:

    お互い気まずい思いで背中合わせの一夜、この辺は現代の家庭にもありがちです。
    夕霧の態度に雲居雁、疑心暗鬼どころではなくこれはもう確信したことでしょうね。

    源氏が秀才夕霧を誇りに思うのは真実だと思いますが自身の汚名を挽回してくれたとは思っていないのではないでしょうか?
    これは逆説的に夕霧を心配しているのでしょう。

    紫式部が女の立場の弱さ運命を紫の上に託した思いはこの時代の女性として画期的ですね。
    何の疑問も抱かず運命に委ねる生き方しかできなかったこの時代の女性観に疑問を投げかけているのは先駆者的考えだと思います。

    そして源氏、夕霧父子の対面。
    やはり面と向かい真実は語りにくいでしょうね。
    恋の病に効く薬なんてないことぐらい源氏は百も承知・・・

    夕霧が御息所の法要を執り行う、これは差し出がましい。
    義父の顔をつぶす、頭中の立場がないでしょう・・・

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.息子夕霧に対する源氏の述懐、「私の汚名を挽回してくれた」などと思ってる訳ではないと思います。「私は絶対者だからいいけどお前は度を越したことはやってくれるなよ」という思いでしょう。

        石原軍団が挙って裕次郎の歌い方を真似しようとするのを制して裕次郎が「お前らにはオレの真似は絶対にできないからあきらめろ」と言ったのを思い出しました。
        →関係ないか。。

      2.紫の上の女の身の処し方に関する意見、自らが通って来た道だけに説得力があると思います。、、、と思しめぐらすも、今はただ女一の宮の御ためなり。
        →可愛い可愛い孫(のような皇女)、手元の女一の宮の顔を見つつ私のようにはなって欲しくないとの思いだったのでしょう。 

      3.源氏物語で父と息子の会話が出てくるのは源氏と夕霧だけ。この二人はけっこう会話も多くお互い分かり合ったバランスのとれたいい親子関係だと思います。雲居雁との結婚問題、そして今回の女二の宮とのこと。お互いの女性問題を父子間で話すのはやはり気拙いしできれば避けて通りたいところ、、、、今でも同じでしょう。

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