p164 – 174
17.雲居雁の不安 夕霧と和歌を詠み交す
〈p194 雲居の雁の君は、やはりこのおふたりの間柄を気にして、〉
①雲居雁 あはれをもいかに知りてかなぐさめむあるや恋しき亡きや悲しき
雲居雁は夕霧が恋しがってるのは亡くなった御息所か女二の宮か訝しがっている。
→確かに紫式部はぼかした書き方をしているが夕霧にそんな気持ちある訳なかろう。
→御息所の年令は分からないが相当な年だろうし何せ朱雀院の更衣ですぞ。
②夕霧 いづれとか分きてながめん消えかへる露も草葉の上と見ぬ世を
→はぐらかしている。うっかり娘の方ですなどと答えてはならないところ。
→夫婦の間で歌の贈答とは王朝的。今どきはメールなんてことかも。
18.夕霧、小野に宮を訪れ、むなしく帰る
〈p196 夕霧の大将は、こんなふうに女二の宮の〉
①夕霧 「今はこの御なき名の、何かはあながちにもつつまむ、ただ世づきて、つひの思ひかなふべきにこそは」と思したちにけり。
→よし、もうやるしかない!と夕霧は決心する。
「一夜ばかりの」歌で迫れば女二の宮も拒み切れまい
→それは独断、女心が分かっていない。
②九月十余日、野山のけしきは、深く見知らぬ人だにただにやはおぼゆる。、、、
→鹿の声、滝の音、草むらの虫、竜胆、、、、小野山荘の秋の情景
③今は、さらに、忍ぶべき方なし、、、 もう辛抱できない。。
百人一首No.40 平兼盛
忍ぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで
④夕霧と小少将の対話&歌の贈答 (将を射んとすれば先ず馬から)
夕霧 里遠み小野の篠原わけて来てわれもしかこそ声も惜しまね
→こんなに遠いところまではるばる通っているのに、、何とかしてくれよ!
百人一首No.39 源等
浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき
⑤女二の宮は心を開こうとしない。
→夕霧の誠意が伝わらずむしろ鬱陶しく思うのだろうか。。女心は難しい。
19.夕霧、一条宮を過ぎて帰邸 雲居雁の嘆き
〈p202 道すがらも心にしみる夜空の景色を眺めますと、〉
①夕霧は空しく小野から引き上げる。寂れた一条邸を通って三条の雲居雁邸へ。
②上の空でぼおっとして月を眺める夕霧
雲居雁の述懐
もとよりさる方にならひたまへる六条院の人々を、ともすればめでたき例にひき出でつつ、心よからずあいだちなきものに思ひたまへる、わりなしや、我も、、、
→この雲居雁の述懐はあたっている。
あなたは六条院で妻妾同居の源氏さまと違うでしょう。私はずっとまめ男の貴方の妻でやって来たのに今さら浮気を認めろって言われても無理でしょうよ、、、。
面と向って言いにくい事をそれとなく和歌で交わすのはいいですね。
幼い子供に託す所は夫婦に生じた溝を感じさせ、それも「はかなき紙の端に」で夫婦の慣れ合いが見えてきます。
夕霧の一大決心もむなしく女二の宮からは袖にされる・・・
わざわざこんな遠くまで訪ねてきたのにと小野から一条邸、そして三条へ~
夕霧は秋の寂れた一条邸と相まって落胆の思い著しいですね。
そして雲居雁の嘆きは尤もです。
心ここにあらずの夕霧に私は六条院の源氏や女君とは違うんですよと主張するところはさもありなん。
脚注の一夫多妻の同居生活は苦労がおおそうに見えてかえってじつは気楽にやっていけるだろうにというのはおもしろいですね。
逆転の発想みたいです。
ここで百人一首が二首引かれていると言うことはやはり清々爺さんおっしゃるように定家は源氏物語を相当意識して選歌したと思わざるをえないですね。
源氏物語を読むまではそんなことを意識せず百人一首を読んでいたのですが・・・
ありがとうございます。
1.言いにくい手紙を子どもに持たせる。細かい描写ですがいいですねぇ。最初読んだ時のメモに「この段なかなか良し」と書いてありました。
2.三条邸と小野、宇治ほどでないにしても結構遠いですよね。「里遠み小野の篠原わけて来て、、、」夕霧の徒労感、落胆が表れていると思います。
3.脚注の指摘ありがとうございます。そうは言っても雲居雁が六条院で妻妾の一人として過ごす身になればそんな気楽なものでもないと気付くのでしょうが。人間誰しも自分より他所の方がよく見えるということでしょうか。
4.来年のこと考えて今後ますます百人一首との関わりには留意していきたいと思います。過去の分も含め気付いたところあればなんでもピックアップしてください。