p134 – 142
静寂の小野の山荘から舞台は移り喧騒の三条邸へ(雲居雁と7人の子ども)。通俗小説風として絶賛されている場面です。
9.夕霧、御息所の文を雲居雁に奪われる
〈p171 夕霧の大将は、その日の昼頃、〉
①御息所からの文が届く。雲居雁が背後から奪い取る。名場面
国宝源氏物語絵巻 「夕霧」の場面
女君、もの隔てたるやうなれど、いととく見つけたまうて、這ひ寄りて、御背後より取りたまうつ。
→どこの家庭にもある通俗的な場面、雅な王朝物語とは思えない。
②ああ言えばこう言う。夕霧と雲居雁との馴れ親しんだ夫婦の会話が誠に面白い。
→そのままホームドラマの脚本になりそうである。
③ところで御息所からの文
かく例にもあらぬ鳥の跡のやうなれば、とみにも見解きたまはで、、、、
病をおしてたどたどしく書いたものですぐには判読できなかった!
→これが不幸を産む。もし歌意をすぐ読み解ければ夕霧は何をおいても小野に馳せ参じたのではないか。
→雲居雁にも読めたとなると掴み合いになっていたかも、、、、。
→何れにせよ「鳥の跡」が産んだ「絶妙の綾」と言うべきではなかろうか。
④君達のあわて遊びあひて、雛つくり給ひ据ゑて遊びたまふ、文読み手習など、さまざまにいとあわたたし、小さき児這ひかかり引きしろへば、取りし文のこともえ思ひ出でたまはず。
→子沢山の家庭が活き活きと描かれている。いつの時代でも同じである。
10.終日、御息所の文を捜すが見いだしえず
〈p176 どなたも皆お食事をすませて、〉
①まだ文は見つからない。焦る夕霧。
時間の経過を整理しておくと、
(例えば)1日 夕霧、小野山荘へ。女二の宮の部屋で夜を明かす
2日朝 出るところを律師に見られる。律師、御息所に告げ口
夕霧、花散里の所で着替えして宮に後朝の文を書く
御息所、小少将の君・女二の宮に真相を質す
夕霧の文を見て御息所返事を書く
昼 夕霧、三条邸へ帰る
夕 御息所からの文届く、雲居雁に取り上げられる
3日 夕霧必死に文を捜すが見つからない。焦る焦る、、、日が暮れかかる。
→ここで明日に続きます。
②雲居雁 「一夜の深山風に、あやまりたまへるなやましさななりと、をかしきやうにかこちきこえたまへかし」
→「お山に行って風邪を引いてしまいましてって言っときなさいよ」
このユーモア、いいですねぇ。私はこんなのが大好きです。
この場面、国宝源氏物語絵巻にはどのように描かれているのか興味深い所です。
ここでは夕霧の慌てふためきよう(内心)と無理にも格好づけする姿に笑いがこらえきれません。
本当に通俗小説そのものですね。
鳥の跡の文字が幸か不幸か・・・
所で夕霧の朝帰りは結婚後初めてだったようですね。
いっ時雲居雁も頭に血が上ったようですが子育ての喧騒にまぎれて鷹揚なところが又いいですね。
はてさて文の行方は?
ありがとうございます。
1.「国宝源氏物語絵巻 夕霧」は文を読む夕霧に雲居雁が手を出して奪い取ろうとするところがはっきりと描かれています。夕霧の必死に文意を読み取ろうとしている様、雲居雁のやや憎々しげな表情などもよく分かります。ネットででも見ておいてください。西田さんのCDもいいですよ。
2.私はこの夕霧・雲居雁の夫婦(家庭)が大好きです。仕事人間(今は浮気人間ですが)の夕霧、専業主婦の雲居雁。現代に通じる家庭であり夫婦関係だと思います。雲居雁のような家庭的な女性、、、いいですねぇ。