夕霧(7・8) 夕霧より文、御息所返書

p122 – 134
7.御息所、小少将に事情を聞き、宮に対面
 〈p161 律師が立ち去った後で、〉

 ①前段の続き。律師から思わぬことを聞いた御息所は真相を確かめようと先ず女二の宮の侍女小少将の君に問い質す。小少将の君は自分の見聞きしたことを正直に述べる。
  →この辺ミステリー小説みたいな進め方である。

 ②女二の宮 「心地のいみじうなやましきかな、、、、脚の気の上りたる心地す」と圧し下させたまふ。ものをいと苦しうさまざまに思すには、気ぞあがりける。
  →病気のリアルな表現。やはり病は気からである。

 ③御息所の催促でいやいやながら御息所の所へ行く女二の宮

  宮も、もののみ悲しうとり集め思さるれば、聞こえたまふこともなくて見たてまつりたまふ。ものづつみをいたうしたまふ本性に、際々しうのたまひさはやぐべきにもあらねば、恥づかしとのみ思すに、いといとほしうて、いかなりしなども問ひきこえたまはず。

  →事が事だけに母も娘も遠回しの言い方に終始して会話は空回りするだけ。
  →「やってしまったの?」「やってません!」 現代の親子でもできないでしょう。

8.夕霧より文来たり、御息所返事を書く
 〈p167 夕霧の大将からまたお手紙が届きました。〉

 ①小野の山荘で大変なことになっているとも知らず夕霧より文が届く。
  夕霧 せくからにあささぞ見えん山川のながれての名をつつみはてずは
  
  →夕霧にしてはまだ恋の駆け引きを楽しんでいる感じ。
  →あいまいで熱烈さが足りない。これでは御息所が不審に思うのも無理はない。

 ②御息所はいたたまれず病気をおして「あやしき鳥の跡のやうに」代筆で返事を書く。
  御息所 女郎花しをるる野辺をいづことてひと夜ばかりの宿をかりけむ 代表歌
  
  →これはいい歌ではないでしょうか。「あなたは一晩だけ泊った訳ではないでしょう、ずっと来続けてくれるんですね」という意味か。
  →夕霧は何をおいても飛んで来なければならない。

  脚注にある通り「劇的な行き違いが、そのまま無残な結果を招来する仕組み」、、恐ろしいものです。

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4 Responses to 夕霧(7・8) 夕霧より文、御息所返書

  1. 青玉 のコメント:

    前段律師と僧都の件、私の早とちりでした。
    いずれにしても俗人ですね。

    いくら母娘であっても事の内容から正面切って問い詰めにくいでしょう。
    降嫁した娘とは言え元皇女の立場ですもの。

    結局真実があいまいのまま進行しているので夕霧と御息所の和歌にもずれが感じられ三者三様の思いはすれ違ったままですね。
    さて無残な結果とは?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      母と娘、父と息子間でもなかなかストレートに話ができないことは現代でも全く同じだと思います。結婚前は異性の交遊関係とか結婚問題とか。結婚してからは家庭内の問題とか、、、大事な問題なのに率直に語り合うことができない。恥ずかしさもあるがやはり遠慮があるからでしょう。それはむしろ当然だと思います。何もかもツーツーでは親も子どもも困る場面が必ずあるでしょうから。時と場合、でもそれが難しいってことでしょう。

       →ここは御息所はチャンと問い質すべき所でしょう。小少将を通じて情況は伝わっており折角病床まで来させてのだからあいまいに終らせてはいけないと思います。

       →もし宮が昨夜の経緯をキチンと述べていたら夕霧の歌への御息所の返歌は違ったものになっていたでしょう。

  2. 式部 のコメント:

    現代の母と娘(子)でも同様のことがあるような気がします。
     帝(男)の愛情の少なさや世間の目(常識)に苦しむ母がいて、大切な娘にそんな淋しい苦しい思いを味わわせたくないと考える。でもこれって、母親の所有欲の一つの表れではありませんかね?
     幼い時はしっかり躾け、教育し、ものの判断ができるようになったら、恐れず手を離すべきだと思います。 そうすれば娘は自分の世界に飛び立てるでしょう。
     結果は娘本人の力しだいです。
     高貴な身分に縛られ、他人の目ばかり気にして生きていくのはつらいでしょうね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      さすが切れ味鋭いですねぇ。躾け・教育は必要だけど親がいつまでも面倒をみれるわけでもなく自立させることが一番の大事。親離れ・子離れのできない親子は宜しくないと思います。

       →身分社会での高貴な人といえども結局は同じことでしょう。源氏物語が教育書として読まれたのはその辺もあるかと思います。
        (この段を読んだお姫さまは「私はこんな風にはなりたくない」と思ったでしょう)
       

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