夕霧(5・6) 律師、御息所に夕霧朝帰りを報告

p114 – 122
5.夕霧、落葉の宮に文をおくる 宮、これを拒む
 〈p154 こうしたお忍び歩きは、〉

 ①小野から朝帰りした夕霧、雲居雁の三条邸には直接帰らない(バツが悪い)。
  六条院の花散里の所へ帰り着替えをする。
  →いい隠れ場所、言い逃れできる場所である。花散里も頼られて悪い気はしないだろう。

 ②親子の御仲と聞こゆる中にも、つゆ隔てずぞ思ひかはしたまへる。
  →女二の宮と御息所の親子関係は頗るいい。親離れ・子離れできてないのでは。

 ③夕霧からの後朝の文を見ようともしない女二の宮
  女房たちはどうなってるのかといぶかしむ。
  「いかなる御事にかはあらむ、何ごとにつけてもありがたうあはれなる御心ざまはほど経ぬれど、かかる方に頼みきこえては見劣りやしたまはむと思ふもあやふく」
  →女房の目はするどい。「昨晩あったみたいだわね。うまく通い続けてくれればいいけどまた前の柏木みたいにすぐお見限りになられてはお可哀そうだし、、、」

6.律師、昨夜夕霧滞在と御息所に語る
 〈p158 御息所は、物の怪に悩まされていらっしゃる人の常として、〉

 ①ここで阿闍梨(律師)が登場する。この律師、「薄雲」で藤壷の死後冷泉帝に源氏と藤壷の密通を密告した夜居の僧都と同じで、余計なことを言う。

  律師→御息所 「そよや。この大将は、いつよりここには参り通ひたまふぞ」
  そんなことはない筈と言いよどむ御息所に更に長口舌
   「いで、あなかたは。なにがしに隠さるべきにもあらず、、、、」
  →律師は御息所の健康を気遣って然るべき(その為に召し出された筈)。
  →御息所の病が重くなり遂に死に至るのはこの律師のせいではなかろうか!!
  →物語の展開としては誠に見事、作者は僧侶を使うのが上手である。
   脚注にもあるが律師の言葉は憶測と独断。これに物語が引きずられて行く。

 ②律師 、、、、」と、頭ふりて、ただ言ひに言ひ放てば、、、
  →熱弁を振るってる様、面白い言い方。

 ③律師の言葉を聞いた御息所の心内
  「さることもやありけむ、ただならぬ御気色はをりをり見ゆれど、人の御さまのいとかどかどしう、、、、、人少なにておはする気色を見て、這ひ入りもやしたまひけむ」
  →御息所は夕霧の女二の宮への恋心をある程度は感じていたのではないか。従って律師の言葉を聞いて「それもあるだろう」と思った。許す、許さないはこれから事の真相と女二の宮・夕霧それぞれの気持ちを確かめてから、、、そう思ったのではないか。

カテゴリー: 夕霧 パーマリンク

2 Responses to 夕霧(5・6) 律師、御息所に夕霧朝帰りを報告

  1. 青玉 のコメント:

    夕霧にとって花散里(六条院東)は格好の場所ですね。
    花散里は母親代わりのような存在で一旦気持ちを切り替え落ち着ける居場所かしら。

    御息所と女二の宮の母娘関係は院からも余り目を掛けられなく柏木からうとまれていたその反動から普通より親密なのでしょうか?
    そう言えば私自身もすごい親密ですね。
    以前に「母が死んだら生きていけない」と言って友人から笑われたことがありました。
    人様からは一卵性双生母娘と言われるぐらい顔、形から声まで似ているらしいです。
    しかし性格はまるで正反対ですが。

    この阿闍梨は例の律師のことすか。
    冷泉帝の件といい今回のことといい言わずもがなことを・・・
    修行が足りないですね、これじゃ世間一般の得意げに噂をまき散らす輩と変わらないじゃないですか。
    まあ、あの朝帰りを見れば誤解するのも仕方ないけれどそれでも胸に秘めておくのが僧侶たるものの姿でしょうに・・・
    これじゃ御息所も疑心暗鬼になるでしょうし病も悪化せざるを得ないでしょう。

    ここのところも紫式部の手腕でしょうね。
    このような不埒な僧侶を使って物語を進めていく手はいつもながら感心してしまいます。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.一条御息所と女二の宮の母娘関係、リアルに描かれていると思います。御息所は自らが幸せになれなかったので娘には幸せになって欲しいとの思いが強く柏木との結婚の時も消極的であった。案の定柏木との関係はあまりうまくいかず挙句柏木は病死してしまう。もう結婚など懲り懲りで二人で静かに生きようと考えていた矢先夕霧が登場してきたって情況でしょうか。

       一方母娘二人で生きていければいいが、それに母親が生きている内はいいが、何れは厄介な事態になってしまう、、、それは不安、、、というジレンマがあったのしょう。リスクは冒したくないがこのままではじり貧である。現代にも十分通じる話だと思います。

      2.ここの律師(「小野の律師」と呼ばれる)は薄雲の僧都(「夜居の僧都」と呼ばれる)とは別人です。私の解説が舌足らずでした。すみません。

       それにしても気にくわない坊主ですね。読む度に不愉快になります。「そよや。この大将は、いつよりここには参り通ひたまふぞ」の一言はともかく後に続く「この結婚は止めた方がいい、、、」との長口舌は「おこがましい」「出過ぎている」「さしでがましい」「なまいきだ」、、、類語をいくら並べて足りないほどです。

      3.逆にも考えてみました。この律師の告げ口で御息所は夕霧が泊ったことを知ったわけですが律師が告げずとも女房どもは知っているしどこかから御息所の耳に入るものだと考えるのが自然かもしれません。そんな危険予知を怠った秀才夕霧、Love is blind なんでしょうね。

コメントを残す