さて、霧を口実に居残った夕霧、宮にどう迫るのか。
p102 -114
4.夕霧の訴えに、落葉の宮かたく心を閉ざす
〈p143 さて、夕霧の大将は、「深い霧で道もおぼつかないので、〉
①とかく聞こえ寄りて、御消息聞こえ伝へにゐざり入る人の影につきて入りたまひぬ。
→すっと御簾の内に入る。なかなかやるもんです。
②夕霧→女二の宮 いと心憂く若々しき御さまかな。人知れぬ心にあまりぬるすきずきしき罪ばかりこそはべらめ、これより馴れ過ぎたることは、さらに御心ゆるされでは御覧ぜられじ、、、、
→皇女のプライドで拒む宮、度胸を決めて行動にかかった夕霧
③女二の宮の様子
人の御ありさまのなつかしうあてになまめいたまへること、さはいへどことに見ゆ。世とともにものを思ひたまふけにや、痩せ痩せにあえかなる心地して、、、、、
→夕霧は宮の気配からよさげに想像する。何せ皇女であり未亡人である。
④風いと心細う更けゆく夜のけしき、虫の音も、鹿のなく音も、滝の音も、ひとつに乱れて艶なるほどなれば、、、
→小野の情景 物淋しくも情趣豊かで男が女を求めるにピッタリである。
⑤ここで夕霧、女性を口説く時言ってはならないNGを連発する。
かう世づかぬまでしれじれしきうしろやすさなども、たぐひあらじとおぼえはべるを、
世の中をむげに思し知らぬにしもあらじを
世を知りたる方の心やすきやうにをりをりほのめかす
→「生娘でもあるまいし、、、、」これはない。
→脚注15父源氏も空蝉に同じように迫っている(@帚木1p142)
むげに世を思ひ知らぬやうにおぼほれたまふなむいとつらき
⑥女二の宮 われのみやうき世を知れるためしにて濡れそふ袖の名をくたすべき
夕霧 おほかたはわれ濡れ衣をきせずともくちにし袖の名やはかくるる
→ともかくに女二の宮から夕霧に歌が詠みかけられる。夕霧は嬉しかったろう。
⑦夕霧 「あさましや。事あり顔に分けはべらん朝露の思はむところよ。なほさらば思し知れよ。、、、、、知らぬ事々けしからぬこころづかひもならひはじむべう思ひたまへらるれ」
→強引な言葉と振舞いに終始する夕霧。でも一線は踏み越えない(踏み越えられない)。
→このような脅迫じみた言い方は源氏はしてないと思うのだが、、、。
⑧夕霧 荻原や軒端の露にそぼちつつ八重たつ霧を分けぞゆくべき
女二の宮 分けゆかむ草葉の露をかごとにてなほ濡れ衣をかけんとや思ふ
→結局実事までは行けずに帰る夕霧。二人の濡れ衣論争はいいけど夜を明かしたとなると世間は「何もなかった」などとは思わない。
→有名男優が朝有名女優のマンションから出て来て「何もありません」と言ったって信じる人はいない。
霧にむせぶ夜ではなく霧に迷う夕霧・・・
ここは夕霧 堅物ではなくスマートに迫りましたね。
一世一代の覚悟でしょうか?舞台情景に不足はありません。
さあ、夕霧何と出るか・・・その後がいけない。なんと無粋な・・・
恋の道に手慣れていない夕霧の無神経さはかえって逆効果だと気付かないようですね。
濡れ衣論争の結果、朝霧と露に濡れてトボトボ帰る夕霧の姿は何やら可愛そうやら滑稽やら・・・
ありがとうございます。
夕霧の思いと行動、いかにも不器用ですねぇ。ぎこちなく中途半端、これでは相手の女二の宮にも誠意は伝わらない。ここまで来たら思いを遂げておくべきだったのではないか。その方が女二の宮に対しても実を尽したと言えるのではないか。
→なんて勝手に思いますが真面目男の当事者はそうは思わないのでしょう。あくまで相手の気持を尊重し誠意を尽す。世間の取沙汰にも相手が傷つくことにも思いが至らない。
→私もそんなタイプなので夕霧の気持ちはよく理解できます(そもそもこんな場面には縁がありませんが)。
[霧にむせぶ夜 黒木憲 S43]
涙じゃないよと 言いたいけれど
こらえても こらえても
まつ毛がぬれる
君よりせつない この俺なのさ
だから笑顔が ほしいのに
さよならが さよならが
霧にむせぶ夜
→名曲ですね。今でも年に数回は歌います。