横笛 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

横笛のまとめです。

和歌

74.うきふしも忘れずながらくれ竹のこは棄てがたきものにぞありける
     (源氏) あのときの桐壺帝の心いかばかりや

75.横笛の調べはことにかはらぬをむなしくなりし音こそつきせね
     (夕霧) 柏木、ゆかりの笛

名場面

76.みづからもさらにこれが音の限りはえ吹き通さず。思はん人にいかで伝へてしがな
     (p30   夕霧、柏木遺愛の笛を受ける)

[横笛を終えてのブログ作成者の感想]

横笛を終えました。若菜上下・柏木と長く重っ苦しい帖の後、短くて物語的にも大分身近に感じられたと思います。いかがでしたでしょうか。

身近に感じたのは夕霧のせいだと思います。夕霧の家庭には七人もの子どもがいてごった返している。妻の雲居雁も子育てに大わらわで身なりも所作も構っておられない。秋の名月にうつつを抜かしている暇などない。そんな家庭に不満を感じ一条邸の未亡人に想いを寄せる。現代におきかえても通じる中年男(夕霧は28才だが)の浮気物語ではないでしょうか。

夕霧と源氏が交す親子の会話も面白いと思いました。いつもながらの父親の訓戒をさらりと受け流す息子。核心に迫る息子の追及をとぼけてはぐらかす父親。源氏は「息子もよくぞ成長したものだ」と感慨深かったのではないでしょうか。

[横笛(よこぶえ・おうてき) 竹製で全長約40センチ、指孔は七つ。樺皮の紐を巻き漆を塗る。頭部には安定をよくするため鉛のおもし。中国から伝来、吹きながら声高を調節する]

柏木の横笛の由来が語られてますが、横笛というと若い華奢な美男子が物悲しく吹きたてるというイメージが浮かびます。牛若丸が五條の橋で弁慶に襲われる場面、横笛がなければ絵になりません。若くして須磨の地に散った平家の若公達敦盛。♪ヒャラーリヒャラリコ~~ 笛吹童子の中村錦之介・東千代之介。柏木には横笛がピッタリだと思います。

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6 Responses to 横笛 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

  1. 青玉 のコメント:

    第二部に入ってからは息もつかさず読めるストーリーの面白さです。

    おっしゃるように夕霧家族は現代にもありがちな家庭の日常で身近に感じられます。
    日常に埋没してなりふり構わない主婦と雲居雁を重ね合わせたりして身につまされました。

    巻名の横笛
    何と言っても笛で第一に思い浮かべるのは平家の公達 敦盛の「青葉の笛」ですね。

    この当時の笛は現代の管楽器とは比べものにはならないでしょうが名フィル奏者の話によれば楽器の中で一番難しいのは笛との事です。
    管楽器の中でも特にオーボエは一番難しいそうです。
    私は単純にピアノかな?と思ったのですけどね。
    ピアノと言えばつい最近テレビの名画劇場で「愛情物語」を見て久しぶりにカーメンキャバレロが吹きこんだ演奏(ショパンのノクターン)を聴き懐かしかったです。
    タイロン・パワーの見事な演技(ピアノを弾く場面)にも感動、そうしたら一昨日のフィギュアスケートで真央ちゃんがノクターンを・・・

    横笛から脱線してしまいごめんなさい。
    とにかく次の鈴虫から夕霧物語へと楽しみにしています。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.第一部とは明らかにトーンもテンポも変わってきていると思います。第一部ではストーリーが次から次へと進んでそれを作者ともども読者が追っかけている感じでした。第二部に入ると登場人物の心理・心内が詳しく書かれ心の葛藤や駆け引きが示され「さあ皆さんこんなのどう思う?」と感想を読者に投げかけられている感じがします。柏木の恋、女三の宮の身の振り方、源氏の受けとめ方、夕霧の恋、、、全て人によって考え方感じ方は違うように思います。読み進めまた戻って読み返しを繰り返すことによって読み解きの中味も濃くなっていくのだと思います。源氏物語、、、大したものであります。

      2.楽器の話、面白く読ませていただきました。どうぞ直接源氏に関係ない話題でも気がついたことなどコメントしていただけばと思います。
        →そうですか、真央ちゃんはノクターンだったのですか。。

  2. ハッチー のコメント:

    清々爺と青玉さんの横笛談議、なかなか格調高いものがあり、面白く読ませていただきました。

    夕霧もすっかり成長し、いまや若いおじさんの域に達し、物語を面白く展開させていると思っています。
    夕霧の心内 ”さかし、人の上の御教えばかりは心強げにて、かかるすきはいでや と見たてまつりたまふ”は、正に夕霧の大人の男としての言葉に聞こえました。話は全く変わりますが、小生も仕事(色ごとではないですが)で人に説教をすることが、年と共に増えてきていますが、夕霧の心内に従えば、そろそろ潮時と言うことでしょう。

    もう一つ、良く理解できないことが、”出家”です。朱雀院の出家は自己逃避が先行して周りには意味のない出家に見えますが、女三宮にしろ、これまでの登場人物の出家は、なんなのか、こんなことで成仏し極楽にいけると考えているのかと、思いたくなります。
    現在でも、狭い範囲ですが、小生の付き合いがあるお坊さんで尊敬できる方は、ほとんどいません。寂聴さんにしろ、稲盛さんにしろ、出家した方が、こんな風に活躍して良いのか、どこかスッキリしません。仏教のことが解ってもいない小生の愚痴ですが、書いてしまいました。

    歌では、文学的にはそんなに上手い歌ではないかもしれませんが、

    言に出でていはぬもいふにまさるとは人に恥ぢたるけしきとぞ見る (夕霧)

    が印象に残りました。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.年寄りの訓戒と若者の反応、、これもいつの時代も変わらぬもののようですね。おっしゃる通り私も口幅ったくならないよう気をつけねばと思っています。

       源氏と夕霧の色恋談義は色々考えさせられます。公の世界では男性的に理詰めにテキパキと物事を進める秀才(源氏然り、柏木然り、夕霧然り)も女性に恋する(どうしようもなく好きになる・恋しく思う)とメロメロになって自分の気持ちを理性で制御できなくなってしまう。こういうのを「もののあはれ」というのじゃないでしょうか。
        →そこまでの気持ちを経験したことないのであくまで想像ですが。。

      2.出家のこと私もよく理解(納得)できません。イメージとしては俗世界との関係を一切捨てて深山やお寺に籠りひたすら仏道修行に没頭する、、、ということかと思ってましたがどうもそうじゃないみたいですね。朱雀院も女三の宮も。これからも出家のことは色々出てきます。ごいっしょに考えていきたいと思います。
        →何せ「源氏物語は出家の物語である」とも言われてますからね。

  3. 進乃君 のコメント:

    ソチオリンピックが始まりました。小生のFOLLOWは
    トラック2周分ぐらい 遅れましたが、花粉が 飛び出すと ウチに居る
    時間が増えるので もう少し ”詰められる”のではと思っています。

    この帖、清々爺のコメントで言い尽くしています。
    i.e. 「幸せで不満はないが馴れ過ぎて新鮮味がない。
    そんな家庭・夫婦関係を描くことによって
    夕霧の女二の宮への執心を正当化する。
    よくできていると思います。」

    夕霧が柏木の未亡人に横恋慕するのは 子だくさんになり
    すっかりオバサンぽくなった雲居の雁にウンザリしたからでしょうね。
    この時代、家族とか家庭との概念は恐らくなかった筈で、
    子供に執心するだけの雲居の雁に魅力を
    感じなくなったのは当然です。
    式部の、こういう男の気持ちをうまく描くところに驚きます。
    この模様に、清々爺は 「風俗小説らしいと絶賛されている」と
    引用していますが、本当ですか? こんなこと言うの、
    説教尼の寂聴さんぐらいじゃないですか? 

    次ぐらいから 主人公が ガラッと変わりそうだなぁ!

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。アウトドアでお忙しそうですね。このところ雪模様だし、この週末はソチ観戦と源氏読みに集中して挽回してください。

      1.そうですね、この時代上流貴族の奥さんは家事・育児は全て他人(女房・乳母)に任せてにシャナリシャナリとしてたんでしょうね。源氏物語の中で女君が家事をしている場面なんてほとんどありません。(花散里が縫い物しているところがどこかにあったくらいか)
       そんな中、夕霧は雲居雁にウンザリしたのでしょう。でも夕霧はそれまではそんな雲居雁をいいヨメさんと思ってたのでしょうにねぇ。こういう男の感情って突然湧き上がってきて止められなくなるんですかね。世に「中年男の浮気はブレーキがきかない」なんて言いますもんね。

      2.この場面寂聴さんも好きだと思いますが、私が引いたのは例によって「光る源氏の物語」(大野晋・丸谷才一)です。大国語学者と大文学者が本音で源氏を語っている名著です。

       丸谷 このところぼくはとても小説的で好きなんです。、、、帰ってくると、子供がいっぱい眠っていたり、女房たちも同じ部屋に眠っている。奥方は寝たふりをして機嫌悪くしていてちっとも出てこない。そういうところで「今夜は月がいいなぁ」なんて言っているのは実に小説的なんだなぁ。

       大野 ここの雲居雁に関する話は「源氏物語」全体のなかで特殊な部分ですね。こんなに俗世間的な夫婦の衝突みたいなものはいままで扱われてなかった。、、、今日でも家庭がガチャガチャしていると、男はどこかの静かな女の人のところへいっちゃうなんていうのは、普通にあると思うんです。その原型がここに書いてある。だから「源氏物語」のなかでは、ここは異様です。全く世俗的で非常に例外的だと思う。

       国宝源氏物語絵巻の場面ですし、雲居雁が胸を広げてお乳を飲ませる構図には当時の読者は驚いたことでしょうね。

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