p44 – 48
8.源氏、柏木遺愛の笛を夕霧から預る
〈p102 夕霧の大将は源氏の院と東の対へいらっしゃいましたので、〉
①夕霧が源氏に一条宮に見舞に行ったことを報告する。
源氏の訓戒 同じうは心清くて、とかくかかづらひゆかしげなき乱れなからむや、誰がためも心にくくめやすかるべきことならむとなん思ふ
夕霧の心内 さかし、人の上の御教へばかりは心強げにて、かかるすきはいでや
→源氏の訓戒は正論で今までの真面目一途な夕霧なら従うところであろうが、今や夕霧も成長している。
②源氏に対する夕霧の反論はなかなかのもの。新しき主人公に相応しい。
何ごとも、人により、事に従ふわざにこそはべるべかめれ
→まるで昔の源氏のセリフではなかろうか。
③横笛の謂れ
源氏 その笛はここに見るべきゆゑある物なり。かれは陽成院の御笛なり。
→実在の陽成院が登場する。
陽成院 百人一首No.13
筑波嶺の峯より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる
陽成院 → 式部卿宮 → 柏木 → 女二の宮 → 夕霧 → 源氏 → (薫)と伝わる
→式部卿宮 朝顔の父 Or 紫の上の父 (脚注9)
④夕霧、柏木の遺言のことを源氏に問い質す。
しかじかなん深くかしこまり申すよしを、返す返すものしはべりしかば、、、
→柏木7 p259
六条院にいささかなる事の違ひ目ありて、月ごろ、心の中に、かしこまり申すことなむはべりしを、いと本意なう、世の中心細う思ひなりて、、、、、、、事のついではべらば、御耳とどめて、よろしう明らめ申させたまへ
→核心に迫った場面。迫る夕霧、はぐらかす源氏。
→源氏の口から明確な回答は得られなかったがクロなる心証を得たのであろう。
→源氏が絶対的ヒーローでなく守勢に立たされているのがよく分かります。
かくて「横笛」は終わりちょっとした幕間「鈴虫」へと移ります。
源氏の訓戒はなにやらおかしいですね。
自分の事は棚に上げてという感じ。
まあ自身の経験から得た子に対する訓戒と思えば大いに納得ですが・・・
親の意見と冷酒は後できくといいますからね・・・
ここで横笛の謂れが明らかにされましたね。
笛をきっかけに最後の核心部分、お互い腹の探り合い、夕霧に対し源氏のトボケ。
いよいよ疑惑は限りなくクロに近い・・・そんなところでしょうか?
この辺りで夕霧は多少親に対する気の咎めはあるものの優位な位置にあるように感じます。
源氏も内心タジタジの思いではないでしょうか?
亡き人の形見となりし笛の音の
まぼろの夢ぞ何をか伝えむ
ありがとうございます。
1.源氏の訓戒と夕霧の反応、おかしいですね。
でもそれは我々読者が昔若かりし頃の源氏のご発展ぶりを知っているからで、今の源氏にしてみれば当然かもしれません。自分のことは棚に上げて子どもに説教する。ありがちなことで私も自戒せねばなりません。きちんと語るとすれば「自分もそうだったけどお前も注意しろよ」ということでしょうか。その辺り源氏も夕霧も分かった上での会話なんでしょうけど。
2.ここもそうですが源氏物語にはお互い真実を分かっていながら知らないことにして阿吽の呼吸で会話が進んでいく場面がよくありますね。現代の現実社会ではごく普通のことですが千年前も同じだったのだと人間の心のあり方に感心してしまいます。
3.笛の謂れについて実在の陽成院が登場。ここといったキイポイントで誰しも知っている有名人物が引用されるとグッと現実味が増しますものね。百人一首の解説などで知る陽成院は評判よくない天皇ですが当時の人たちの受けとめ方はまた違ったものがあったのでしょうか。
4.横笛の歌、即座に詠めたとおっしゃってましたが見事だと思います。柏木の思いが笛の音になってどのように伝えられていくのか、楽しみですね。