p32 – 43
6.夕霧帰邸する。柏木夢に現れ、笛を求める
〈p93 夕霧の大将が三条のお邸にお帰りになりますと、〉
①秋のあはれ深い一条宮で心ときめくひと時を過ごした夕霧が自邸(三条邸)に戻る。
夕霧「こは、など。かく鎖し固めたる。あな埋れや。今宵の月を見ぬ里もありけり」
「かかる夜の月に、心やすく夢みる人はあるものか。すこし出でたまへ。あな心憂」
→浮ついた心持ちでバツ悪く帰って来た夕霧。照れ隠しに催馬楽など口遊んで。
②君たちの、いはけなく寝おびれたるけはひなどここかしこにうちして、女房もさしこみて臥したる、
→雲居雁と子ども7人(4男3女)&女房たちが雑魚寝状態
→そりゃあ一条宮と比較するのが無理というものでしょう。
③夢に現れる柏木
柏木 笛竹に吹きよる風のことならば末の世ながき音に伝へなむ
思ふ方異にはべりき
→「この笛を伝えたいのは貴方ではない」
→夢を使って重要なことが伝えられる。常套手段ながら便利ですね。
④夜中若君が泣き出し大騒ぎ。乳房を含ませる雲居雁、邪気祓いに米を撒く女房
→ 国宝源氏物語絵巻 横笛 となっている重要場面
⑤夕霧と雲居雁 結婚10年 馴れた同士の夫婦の会話が面白い
雲居雁 耳はさみしてそそくりつくろひて、抱きてゐたまへり。いとよく肥えて、つぶつぶとをかしげなる胸をあけて乳などくくめたまふ
→実にリアルな表現。貴人の家も子育てのさまはこんなだったのだろう。
→風俗小説らしいと絶賛されている一場面です。
⑥夢で告げられ夕霧は横笛のこと源氏に相談せねばと思う。
→笛が物語進展の重要な小道具となっている。
7.夕霧、六条院を訪れ、皇子たちや薫を見る
〈p98 源氏の院は、たまたま明石の女御のお部屋にいらっしゃる折でした。〉
①夕霧、六条院へ。明石の女御が若宮を連れて里帰りしてきている。
登場するのは、
二の宮 明石の女御と共に宮中から里下がりしているのであろうか。5~6才
三の宮=後の主役になる匂宮(紫の上が引き取り育てている)3才
若君=薫 2才
②夕霧を取り合いする二の宮と三の宮
「まろも大将に抱かれん」 「あが大将をや」
→いいですねぇ。どこの家庭でも見られる微笑ましい風景でしょう。
③夕霧、薫を初めて見る。
いみじう白う光りうつくしきこと、皇女たちよりもこまかにをかしげにて、つぶつぶときよらなり
→見るほどに柏木の面影を宿している幼子
→不義密通の子と確信している夕霧は複雑な気持ちで眺めたことだろう。
自邸に戻った夕霧 現実に引き戻された事でしょう。
浮ついた気分で御帰還の亭主が我が家に戻ってみれば髪振り乱した古女房と子たちの姿。
妻はご機嫌斜めで寝たふりをしてふてくされている。
現代でも見られる光景で皆さん一度や二度は経験ありでしょう?
そう言えば私もタヌキ寝入りでふてくされていましたね。
紫式部も経験したのかしら?
夕霧 雲居雁 筒井筒 の恋であっても月日の流れと共に夫婦の感情はすれ違っていく・・・
今も昔も変わらない現実ですね。
まことに「夢のあはれも紛れぬべし」です。
この辺りの描写、ありありと想像でき何だか笑えてしまい面白く読みました。
この場面が源氏物語絵巻にあるのですか。
どんなふうに描かれているのかそれは楽しみですね。
夢枕に立つ柏木の和歌、真意は何を託したかったのでしょうね?
六条院での夕霧
子煩悩で微笑ましい場面です。
子だくさんの夕霧は御子の扱いも手慣れたものなんでしょうね。
薫を身近にみた夕霧の思い・・・
皇子達よりむしろ優れた資質、薫に柏木の面影を見出し疑惑が益々確信に近くなったのではないでしょうか?
ありがとうございます。
1.浮気をしてきたのでなくても遅くまで飲んで騒いで深夜に帰宅するときはうしろめたいものです。つまんなかった顔をするのもわざとらしいし、さりとてにやけた顔は火に油を注ぐことになるし、、。なるべく顔を合わさず風呂場に直行して寝てしまうって感じでしょうか。
ここでの雲居雁は寝ていて知らん顔をしてますね。若菜上で源氏が女三の宮の所から深夜に帰り女房たちが意地悪してしばらく戸を開けてやらないところ、そこでは紫の上は源氏が夜着をはねのけても知らん顔で共寝に応じませんでした。その辺の機微を紫式部はうまく描いています。おっしゃる通り経験に基くものでしょうね。
2.源氏物語絵巻の雲居雁邸の様子は結婚10年の夫婦の有様がよく伝わってきます。幸せで不満はないが馴れ過ぎて新鮮味がない。そんな家庭・夫婦関係を描くことによって夕霧の女二の宮への執心を正当化する。よくできていると思います。
3.一人一人の幼子の描写はよく出て来ますが三人が遊んでいるところはこの場面くらいでしょね。オジサン(夕霧)の取り合い、面白いと思います。それと明石女御の男君(二の宮・三の宮)と薫がいっしょに遊んでいるのにはびっくりしました。皇子と臣下、身分は違うのにアレッと思いました。