横笛(3・4) 若君の成長 源氏と夕霧の心内

p18 – 22
3.無心の薫の姿に、源氏わが老いを嘆ずる
 〈p81 若君は乳母の側で寝ていらっしゃいましたが、〉

 ①若君(薫)の様子
  いとらうたげに、白くそびやかに柳を削りて作りたらむやうなり。頭は露草してことさらに色どりたらむ心地して、口つきうつくしうにほひ、まみのびらかに恥づかしうかをりたるなどは
  →整った容姿。「かをり」が必ず出てくる。

 ②今より気高くものものしうさまことに見えたまへる気色などは、わが御鏡の影にも似げなからず見なされたまふ
  →気のせいか希望的なものか源氏は自分にも似ているなと思う。
  →今ならDNA判定して実は源氏の胤であったなんて大どんでん返しも可能だろうが。

 ③御歯の生ひ出づるに食ひ当てむとて、筍をつと握り持ちて、雫もよよと食ひ濡らしたまへば
  →1才児の様子が活き活きと描かれている。紫式部の育児体験からであろう。
  →幼子の様子は可愛い。源氏も孫(明石の女御の)同様可愛く感じたことだろう。

 ④源氏 うきふしも忘れずながらくれ竹のこは棄てがたきものにぞありける 代表歌
  →「うきふし」で密通事件を示唆する。すごい技です。
  →過去のことは忘れ薫を我が子と思うことはできないのでしょうか。
   「そして父になる」新バージョンができるのに。

4.源氏・夕霧 各感懐を秘めつつ、季節移る
 〈p84 月日がたつにつれて、この若君が可愛らしく、〉

 ①月日が経つ。源氏はあれこれ考え続ける。
  →若君は可愛く過去は忘れたいが女三の宮を見かけると許しがたい感情が甦る。
  →朱雀院も望んでいるし女三の宮を三条邸に移したらいいのでは。

 ②大将の君は、かのいまはのとぢめにとどめし一言を心ひとつに思ひ出でつつ、
  ほの心得て思ひよらるることもあれば、
  → 夕霧はもう「薫は柏木の子どもに違いない」と思い至っているのでは(柏木9)

 柏木の遺言を基に夕霧が行動を起こす。夕霧物語へと続きます。

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2 Responses to 横笛(3・4) 若君の成長 源氏と夕霧の心内

  1. 青玉 のコメント:

    ここでは若君薫の様子が何とも愛らしく描写されています。
    その容姿は幼いながらもかなり美形のようです。
    源氏もふと自分に似ているのではと思わず頬ずりしたいほど可愛いく思えたことでしょう。
    またこれが真実、我が子であったならばと願ったことでしょう。

    うきふしも忘れずながらくれ竹のこは棄てがたきものにぞありける 
    この和歌が一番源氏の心境を現わしていると思います。

    柏木の臨終の言葉から推察して夕霧も確信に近いものが感じられてきたようです。
    源氏 若君 夕霧といよいよ物語の核心は新しい人物と主役交代に移りつつあるようですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      ちょうど1才になる幼児の可愛い様子が素晴らしいですね。よだれをたらしながら生え始めた歯で筍をしゃぶるところなんぞ思わずニンマリしてしまいます。人間が一番可愛い(無邪気・無垢)のはこの頃じゃないでしょうか。

      源氏と子どもたちの事を振り返ってみると、
       不義の子冷泉帝=勿論近づいて可愛がることなどできない  
       長男夕霧=大宮邸で育てられ時々顔を見た程度か(いっしょの描写なし)
       長女明石の姫君=大堰に出てきたのが3才(満2才半)姫君を抱いた描写はない
       [孫(明石の姫君の御子)=若君を抱いて喜ぶ描写あり(若菜上p154)]

      即ち源氏はこれまで幼児の可愛いときに身近に接してきたことは殆どなかったと言えましょう。そんな源氏にとって「訳ありの御子」と言えども実際に抱いたりまつわりつかれたりすれば「うきふしも忘れ棄てがたきもの」と思ったことでしょう。おっしゃる通り心境を表した素晴らしい歌だと思います。
        

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