横笛 亡き人の手なれの笛に寄りもこし夢のゆくへの寒き夜半かな(与謝野晶子)
柏木が亡くなりその遺愛の横笛を小道具に真面目男夕霧の恋物語が始まります。結構現実っぽくて私はこの物語が好きです。
p12 – 17
1.柏木の一周忌 源氏・夕霧の志厚し
〈寂聴訳 巻七 p76 柏木の故権大納言がはかなくお亡くなりになった悲しさを、〉
①G49年春、柏木が亡くなってから1年。一周忌です。
②薫も1才、すくすくと育っている(いはけなき御ありさま)。
黄金百両をなむ別にせさせたまひける
→お金が出てくる。これは砂金のようだが単位は両であったのか。
→源氏の心境や如何。柏木への憎しみは薄らいだのであろうが完全に払拭されてはいまい。
③夕霧もまめに一条宮&致仕の大臣(頭中)邸を訪れている。
→脚注にある通り今後の主人公夕霧のことが語られる。
2.朱雀院、女三の宮へ山菜に添えて歌を贈る
〈p77 女二の宮も、こうしてお若い身空で未亡人になられ、〉
①西山に居る朱雀院、病気も一段落かまだ永らえて俗世(娘たち)を心配している。
→女三の宮は出家、女二の宮は未亡人に。朱雀院もお気の毒。でも帝の父ですぞ!
②朱雀院から女三の宮に山菜 筍(たかうな)・野老(ところ)が送られてくる。
→竹の子と山芋。珍味であったのだろう。
③朱雀院 世をわかれ入りなむ道はおくるとも同じところを君もたづねよ
女三の宮 うき世にはあらぬところのゆかしくてそむく山路に思ひこそ入れ
→朱雀院の歌はやはり未練がましい(そこまで女三の宮が愛おしかったのであろう)。
→女三の宮の返歌。尼らしくていいのでは。源氏の面目など知ったことではないでしょう。
→三条の邸を修繕して女三の宮を移らせようとの話があったが源氏が反対して六条院においているのであろう。
④女三の宮の尼姿
いとうつくしくらうたげなる御額髪、つらつきのをかしさ、ただ児のやうに見えたまひて、いみじうらうたき
→相変わらず幼い様子。源氏も痛々しく感じたことだろう。
⑤御几帳ばかり隔てて、またいとこよなうけ遠くうとうとしうはあらぬほどに、もてなしきこえてぞおはしける
→女三の宮は出家しているので几帳ごしに対話する。勿論触れることはできない。
11冊目に入りました。
柏木の続きを早く知りたくてお休み中に先を読んでしまい即座に歌まで出来てしまいました。
今朝の横笛の晶子の歌を読んで驚きました。
よく似ているのです。
柏木一周忌 薫一歳、早いものです、可愛い盛りですね。
黄金百両と具体的に数字が出てくるのは初めてですね。
これは破格の価値なのでしょうね。
朱雀院って世の一般の父親とは異なりますね。
何だか母親の性格を帯びたような気遣いようです。
竹の子 山芋当時からあったのですね。
我々は平安からの物を今もいただいているのですね。
共に出家の父と娘の和歌に源氏はいい気持ちはしなかったでしょうね。
いかにも蚊帳の外ですもの。
尼削ぎの女三宮に対しては罪の意識と未練の入り混じった心境でしょうか?
ありがとうございます。
いいペースで読み進められているようでけっこうだと思います。もう歌まで詠み終えましたか。楽しみにしています。
朱雀院と女三の宮との文の贈答、それを見る源氏。色々考えさせられます。藤裏葉の六条院での大団円までは概ね良好で互いに頼りにしあってた朱雀院・源氏兄弟の関係が女三の宮が天より降り来たことによりガラリと崩れてしまいます。
ここでは朱雀院と女三の宮は現世を捨てざるを得なかった被害者同士として互いの不幸を託ちあう。一方源氏も朱雀院が女三の宮を押し付けなかったら、女三の宮が過ちさえ犯さなかったらこんなことにはならなかったのに、、、と被害者意識を抱いている。三者三様に自分の境遇を恨めしく思っているように感じます。人間関係って皆が不幸(敗者)になるケースもあるということだと思います。
→WinWinの関係は難しいことなのかもしれません。