若菜下(39・40) 朱雀院の五十の賀宴 若菜上下の閉め

p207 – 214
39.柏木悩乱し、病の身を親もとで養う
 〈p306 心が掻き乱され、苦痛にたえきれなくなり、〉

 ①源氏に苛められ這う這うの体で自邸(妻女二の宮の所)に逃げ帰った柏木。そのまま重病に陥る。
  →心因性であろう。それだけに周りの者には分からない。

 ②柏木、女二の宮と結婚して一条の女二の宮邸に住む。女二の宮の母=一条御息所(身分が低く朱雀帝には寵愛されていない)、この母親が今後大きな役割を果たす。

 ③病人柏木を引き取りたい父(頭中)&母(四の君)    
  結婚しているのだから女二の宮邸で養生すべきだと主張する女二の宮と母御息所
  柏木は将来摂関家の長となるべき人物、親族にとってはかけがえのないエースである。
   →実の母の気持ち、妻の母の気持ち。どちらもよく分かる。

  母御息所 「世の事として、親をばなほさるものにおきたてまつりて、かかる御仲らひは、とあるをりもかかるをりも、離れたまはぬこそ例のことなれ、かくひき別れて、たひらかにものしたまふまでも過ぐしたまはむが心づくしなるべきことを。しばしここにてかくて試みたまへ」
  →誠に道理である。結婚したら夫婦が第一であろう。

 ④別れに際しての柏木から女二の宮への言葉
  「今はと頼みなく聞かせたまはば、いと忍びて渡りたまひて御覧ぜよ。かならずまた対面たまはらむ。あやしくたゆく愚かなる本性にて、、、」
  →切ない別れの言葉である。
  →この場に及んでは女二の宮を疎かにしてきたのを悔やむ気持ちもあったのだろうか。

  柏木と女二の宮の夫婦関係、柏木は女三の宮のことで頭がいっぱいでお義理的な関係に終始していたのだろう。女二の宮については容貌も性格も記されてないのでよく分からないがまあ普通の皇女だったのではないか。

 ⑤柏木の重病は天下の一大事。帝・朱雀院・源氏・夕霧も心配する。
  →源氏はどう思ったのだろうか。「ザマーみろ」と思ったか「やり過ぎだった」と思ったか。
  →夕霧はとにもかくにも「治ってくれ」と念じたのであろう。

40.朱雀院の五十の賀、年末に催される
 〈p310 朱雀院の御賀は、十二月二十五日と決まりました。〉

 ①G47年12月25日 延びに延びた朱雀院の五十の賀宴、やっと開かれる。

 ②場所は六条院春の町、女三の宮の寝殿であろう。

 ③さて、やむまじきことなれば、いかでかは思しとどむらむ。女宮の御心の中をぞ、いとほしく思ひきこえさせたまふ。例の五十寺の御誦経、また、かのおはします御寺にも摩訶毘廬遮那の。

 →この賀宴の省筆はすごい!
 →長寿を祝われる朱雀院も祝う方の女三の宮(主催者)も源氏も夕霧も正直なところ賀宴どころではなかったであろう。
 
 ④若菜上 冒頭
  朱雀院の帝、ありし御幸の後、そのころほひより、例ならずなやみわたらせたまふ。
  
 朱雀院の病気のことから語り起された若菜(上・下)の巻が朱雀院の五十の賀宴で幕が閉じられる。その間「天よりこし」女三の宮、この一人のせいで六条院のバランスは無残にも崩れ暗雲が立ち込めてくる、、、恐ろしいものです。

 若菜上下、いかがでしたでしょうか。

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2 Responses to 若菜下(39・40) 朱雀院の五十の賀宴 若菜上下の閉め

  1. 青玉 のコメント:

    長かった若菜上・下がようやく朱雀院の御賀で閉じられるまで実に様々な出来事がありましたね。
    その最たるものが柏木事件・・・
    終わってみれば柏木への同情を禁じ得ません。
    あれほどさんざんこき下ろし悪口を言っていましたが源氏に追い詰められた今の柏木が可哀想になって来ました。
    思えば父帝の女御を寝取って子どもまで成した源氏と源氏の妻、女三の宮を寝取って懐妊させた柏木。
    一体どちらの罪がより重く深いのでしょう?
    皇女ゆえに許されないのでしょうか、でも降嫁するということは皇女ではなくなるのでは?
    この辺がよく解らないのです。
    どちらもどちらという感じではありますけど源氏は当然の報いを受けたに過ぎないのではないでしょうか。
    こうした様々に内容豊富なニ巻ではありましたが底流に見え隠れするのはやはり紫の上の苦悩と悲哀でこれは如何ともしようがありません。

    今回も紫の上を詠ませてください。

         わが胸の祈りよ届けとこしへに
            花はうつろい季(とき)はめぐりて

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。重厚長大の若菜上下、お疲れさまでした。

      1.自業自得とはいえ柏木は哀れですねぇ。物語中このような死を迎えるのは柏木だけじゃないでしょうか。藤原摂関家の長として将来を嘱望されていた柏木、その突然の死は多くの人を不幸にしてしまいます。

       ①何といっても最大のダメージは父母(頭中・四の君)でしょう。不孝者です。
       ②妻女二の宮&母一条御息所&女二の宮を嫁がせた朱雀院
       ③女三の宮(柏木の生死に関係なく既に不幸になっている)
       ④友人夕霧・妹弘徽殿女御・東宮など親しかった人々

      この不幸の構図が連鎖して次の夕霧物語へと繋がって行きます。

      2.源氏と柏木ですか、そりゃあ天皇の妃と密通した源氏の方が罪ははるかに重いと思います。源氏の妻と間違いを起こしたなんて一般の密通事件ですもんね(なんて気軽に評論家的に言ってますが源氏も准太上天皇、罪を犯した柏木には耐えられなかったのでしょう)。
        →結局はばれる、ばれないの差。運不運の差かもしれません。
        →源氏も桐壷帝に睨みつけられたらどうなってましたかね。

      3.「やはり紫の上」で来ましたか、なるほど。この巻はストーリーとしては女三の宮を巡る柏木と源氏との三角関係が中心で紫の上はやや脇役的でありますが忘れてはいけませんよね。これまで耐えて源氏に尽し妻として時には母親のように源氏の面倒をみてきた紫の上も精根尽きて重病に陥る。華々しい六条院の中で慰めは明石の女御の皇子を養育するだけであった。読者が一番同情すべきは「やはり紫の上」なんでしょうね。今紫の上の胸にあるのはどんな祈りでしょうか。

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