p195 – 206
38.御賀の試楽 柏木ようやく源氏のもとに参上
〈p298 十二月になってしまいました。〉
①二月に行う予定の朱雀院五十の賀宴が延び延びになってやっと12月10余日に行われることになる。その試楽が行われる。
→二月の女楽の試楽は女三の宮の寝殿で行われた。今回も場所は同じであろうか。
②試楽に二条院から紫の上も駆けつけ明石の女御も里下がりして参列する。他に式部卿宮・髭黒・玉鬘。勿論夕霧は師範格で加わる。
③衛門督(柏木)は舞の先生として欠かせないとして源氏は参加を促す。
行きたくない柏木。でも父頭中の諌めもあり行くことを決心。
④柏木、源氏と対面
さりげなくよく来てくれたとねぎらう源氏、脚気で参ってましてと言い訳する柏木
→何ごともなかったかのようなごく普通の会話の裏で両者の想いがぶつかり合う。
⑤試楽の有様は2月の女楽の試楽のリピート。
夕霧・髭黒の息子たち式部卿宮の孫たちが舞を舞う。
→女楽は行われない。女三の宮も紫の上もそれどころではなかろう。
⑥座もたけて杯の交し合いになる。迫力ある名場面(有名な所)
源氏 「過ぐる齢にそへては、酔泣きこそとどめがたきわざなりけれ。衛門督心とどめてほほ笑まるる、いと心恥づかしや。さりとも、いましばしならむ。さかさまに行かぬ年月よ。老は、えのがれぬわざなり」
盃のめぐり来るも頭いたくおぼゆれば、けしきばかりにて紛らはすを御覧じ咎めて、持たせながらたびたび強ひたまへば、はしたなくてもてわづらふ
→強烈なイジメ。これこそパワーハラスメントではなかろうか。
→柏木の顔を見ている内に源氏は怒りを隠しきれなくなったのであろう。
(むしろここまでで思い止まってエライのかもしれない)
ようやく試楽の運びとなり御賀は年内に間にあうようですね。
源氏との対面ではお互い目に見えない火花が飛び交う所でしょうか。
葛藤を抱かえた対決の場面は当然源氏が有利・・・
源氏の射るような目の前で萎縮する柏木。
酔いに任せて痛烈な皮肉を吐く源氏。
柏木に対する怒りは自らへの怒りとも重なり二重に増殖するのでしょう。
緊張で息詰まる場面です。
ありがとうございます。
おっしゃる通り息詰まる場面です。深刻過ぎて源氏物語絵巻にはなりませんかね。
事情を分かっているのは女三の宮はともかく源氏と柏木だけ。他の参加者には二人の心の葛藤が分からない。この人間劇を楽しめるのは読者(映画でもそうでしょうが)。近代文学の醍醐味でしょうか。
如何に源氏でも柏木の顔を見、声を聞いたこの場面では自制は出来なかったのでしょう。(柏木への怒りと自分への怒りが重なり増幅した、、、その通りだと思います)本当に酔っぱらったのかもしれませんね。でも火花は散っても乱暴狼藉には及んでいない。それだけでも王朝物語といえるのかもしれません。
源氏物語の最たる修羅場の一つだと思います。記憶しておきましょう。
この場面、陰湿なパワハラで大嫌いです。 源氏の君もこの程度の男だったのかと興ざめしてしまいます。 立派なお説教なんて馬鹿馬鹿しくて・・・
今までやりたい放題やってきたのだから、自分の身にそれが起きた時、ああこれもありだと、黙って知らぬふりをすればよいのです。
ただ、物語としてはこの源氏の姿、苦悩、いやらしさは必要でしょうね。人間の弱さ、複雑さが多いほど話に深みがでてきますものね。
痛快なるコメントありがとうございます。
源氏も式部さんにはバッサリ切り捨てられてますね。スカッとしました。
源氏もスーパーヒーローでなく生身の人間であった。これぞ紫式部が第二部以降で言いたいことでしょう。一部の英雄譚だけでは源氏物語を読んだとは言えません。若菜上下、つくづくいい物語を読んでるなと嬉しくなります。
(先日の柏木暴走の場面では「いい加減にしろ、柏木!」と柏木に怒りを感じましたが、本段では「いい加減にしろ、源氏!」と源氏に怒りを感じます)