p174 – 183
34.源氏、女三の宮と玉鬘との人柄を比べる
〈p283 宮はいかにも痛々しく、〉
①その後の女三の宮、悪阻もあるのだろうか気分も悪く思い悩んでいる。
源氏は 渡りたまひて見たてまつりたまふにつけても、胸いたくいとほしく思さる。
→腹立たしいけど仕方がない。憎みきることもできず受け入れるしかない。
②け近くうち語らひきこえたまふさまは、いとこよなく御心隔たりて、、
→手紙を見つけてしまってからは女三の宮との実事はない。やる気になれない。
③女三の宮は表だって源氏が叱りつけないし、どうしたらいいか分からず悩むばかり。
→ただただ幼い皇女、自分で言いだせないのも無理はない。
④明石の女御が寝取られたりしたら大変。
→注意しなきゃいかんなぁと源氏は自戒する。
⑤ここで女三の宮と玉鬘の比較論
→内裏で大事に育てられた皇女と田舎で両親の庇護もなく育った玉鬘とは人間力で比較にならないのは当然であろう。
→玉鬘の聡明さが繰り返される。作者の言いたいところであろう。
⑥髭黒が弁のおもとを語らって玉鬘を襲ったことがここで明かされる(真木柱冒頭の謎解き)
この大臣の、さる無心の女房に心あはせて入り来たりけむにも、、、
35.尚侍の出家につけ源氏、紫の上に昔を語る
〈p285 今では二条にいらっしゃる尚侍の朧月夜の君のことは、〉
①二条の尚侍の君=朧月夜(勿論もはや現役の尚侍ではなかろう)出家する。
→再会後ズルズルと続いていた関係を朧月夜の方から断ち切る。
②かの御心弱さも、、、
心弱さ=朧月夜を象徴する表現。女三の宮にも通じる。
心が強いのは、空蝉・朝顔・藤壷・玉鬘、それぞれに強い。
③源氏 あまの世をよそに聞かめや須磨の浦に藻塩たれしも誰ならなくに
思し棄てつとも、避りがたき御回向の中にはまづこそはとあはれになむ
朧月夜 あま舟にいかがは思ひおくれけむ明石の浦にいさりせし君
回向には、あまねきかどにても、いかがは
→未練がましい源氏に対し朧月夜はピシャリと言い放つ。
→寂聴さんはこの朧月夜の出家と心の整理のつけ方を絶賛している。
(この時点で、朧月夜の君の「心弱さ」を「すこし軽く思ひ」なしていた源氏の思い上がった立場は、一挙に粉砕され、朧月夜の君が明らかに精神的に優位に立ってしまう。「わたしの源氏物語」)
④朧月夜からの手紙を紫の上に見せて昔を述懐する。
朝顔(出家している)、朧月夜が紫の上ともども書をはじめ教養も風流も優れていた、、、。
→まだ病後の紫の上にそんな話するのは酷ではないか。源氏のこの癖は治らない。
⑤出家した朧月夜のために紫の上、花散里に尼装束を仕立てさせる。
→勿論女房に命じてさせるのだろうがおかしな話。紫の上の病気よくなる筈がない。
源氏が柏木の手紙には一切触れず女三の宮と向かいあうのは宮にとって針のむしろですね。
いっそのこときっぱり非難するか叱責された方がよほどすっきりします。
源氏の底意地の悪さを感じて不快です。
まあ源氏の一体どうすべきだろうという心の懊悩も解らないではありませんが・・・
ここで玉蔓の結婚の経緯が明かされてああ、そうだったのかと納得です。
玉蔓と女三宮の比較は所詮、酷というものではないかしら?
何せ皇女と九州の田舎で暮らした苦労人ですものね。
朧月夜のあっと驚く突然の出家。
してやったり・・・という感じで潔く気持ちいいです。
朧月夜、決して心弱い女ではないと私には思えますが・・・
須磨流謫を朧月夜のせいにしているように感じますがこんなの変じゃないかしら。
不倫の恋はお互いの責任です。
源氏の責任逃れは見苦しい!!
そしてまた紫の上にくどくどと話すなんて許せない!!
ありがとうごございます。
1.源氏の女三の宮への愚痴・不満・叱責・教訓・皮肉、、、今後も果てしなく延々と続きます。あれほどスカッとしてて思いやりがあり頼りがいのあった源氏がこんなに変わるとは恐ろしいものです。老いを一番の理由にしていますがそれだけではないでしょう。人間の弱さだと思います。自戒したいものです。
2.玉鬘のことをちょこちょこと挿入してくれるのはいいですね。玉鬘と女三の宮を比較する序でに弁のおもとと小侍従、髭黒と柏木を比較想像してみました。どちらも舞台は六条院ですからねぇ。
3.朧月夜の最後の登場場面です。心弱いというのは源氏との関係を拒めなかったということで自らの意志に忠実に生きるという意味ではむしろ強い女性かもしれませんね。須磨流謫を朧月夜のせいだとするのは一種の甘えでしょうか。「いっしょに不倫の罪を犯した共犯者じゃないですか、あなただけカッコよく出家するなんてつれないじゃないですか、、、」なんてのはどうでしょう。
(追記)
朧月夜とは若菜上19で縒りを戻して以来源氏は心の安らぎを求めて何度となく逢瀬を重ねていた。どれほどの頻度で続いていたかは不明だが紫の上の病気、女三の宮の不倫でストレスの溜まっていた源氏には朧月夜が救い(少なくとも心の)だったのかもしれません。