p142 – 148
29.紫の上死去と聞き、柏木らこれを見舞う
〈p256 紫の上がお亡くなりになったという噂が、〉
①源氏の一の人紫の上死亡の知らせに世間の人々は色々に想う。
→有名人・幸せ人の死亡を聞く。現代でも同じである。
待てといふに散らでしとまるものならば何を桜に思ひまさまし(古今集)
散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世になにか久しかるべき(伊勢物語82段)
(この前に業平の有名な歌が載せられている)
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
→桜は紫の上の象徴である。
②まことにいたく泣きたまへるけしきなり。目もすこし腫れたり。衛門督、わがあやしき心ならひにや、この君の、いとさしも親しからぬ継母の御事にいたく心しめたまへるかな、と目をとどむ。
→さすが柏木は鋭い。想いを実行に移した柏木、想いでとどまっている夕霧。
③源氏は六条御息所が未だに死霊として現れることに辟易としている。
→葵の上に生霊として憑りついたのが25年前。六条御息所が死去したのは18年前
④出家を望む紫の上に五戒の受戒だけはさせる(在家の信者)。
→出家まではいかないが信者として厳しい生活を送る。事実上出家であろうか。
⑤とにかく源氏は紫の上に何としてでも生きていてほしいと心底願ったことだろう。
世が世ならさしずめ週刊誌での大報道で噂かまびすしということになるでしょうか?
今の柏木は何ごとにも敏感でさては継母に?と夕霧にまで疑惑の目を向ける・・・
それどころじゃないでしょうにね~
紫式部 なかなか細かいところまで表現していることに気付かされます。
六条御息所 この期に及んでも存在感を示していますね。
物の怪と共に折に触れ登場する御息所 物語中一番長い登場人物ではないでしょうか?
源氏の意気消沈ぶりが何やら気の毒です。
世にかしこくおはする人も、いとかく御心まどふことに当たりてはえしずめたまはぬわざなりけり
人間 源氏を見る思いです。
ありがとうございます。
1.紫の上死去と聞いての世人の囁き
かかる人のいとど世にながらへて、世の楽しびを尽くさば、かたはらの人苦しからん
→一番の幸せ人は何かやと嫉妬・羨望の目で見られる。いつの時代にも変わらない人間の意地悪さ。こうしてずばり指摘されると「そこまで言わなくても、、、」と少し淋しい気持ちになります。
2.感覚鋭い柏木もまさか後々夕霧が自分の妻に懸想していくとは思わなかったでしょうね。まあこの辺少し伏線かなと思いますが。
3.「六条御息所は物語中一番長い登場人物」ですか、なるほど。源氏が紫の上と逢う前からですからね。死後もずっと出続けている。最長不倒ということですね(死んでも源氏の心の中に生き続けているということ。源氏が迷惑がるのも無理ありません)。