若菜下(19・20) 女楽 続き & 音楽論

p76 – 86
19.源氏、夕霧とともに音楽について論評する
 〈p208 夜が更けるにつれ、あたりは冷え冷えとしてきます。〉

 源氏と夕霧による音楽・楽器論評。女君たちも聞いている。
 ①夕霧 演奏には秋より春の方がいい。
  源氏 春秋論争は一概には言えない。
  →春と言えば紫の上、夕霧には紫の上のことが頭から離れない。

 ②楽器の一流演奏者についての一般論
  →素人の女君たちによる演奏もまんざらでもない、ということが言いたいのであろう。

 ③和琴 自由な発想で弾きこなさねばならず難しい。頭中-柏木が名手。
  →紫の上は上手だったと夕霧が誉める。源氏もしたり顔で満足する。

 ④琴の琴 型(跡)が決まっていてその通りやらねばならない。これも難しい。
  →女三の宮は源氏の猛特訓でそれなりに上手に弾けるようになっている。
  →女三の宮も若く幼いが劣等生ではない!

 ⑤源氏はこの難しい琴の琴を明石の女御の皇子たちに教え伝えられればと口に出す。
  →明石の君はしてやったりと喜ぶ。明石一族の栄耀ぶりをさりげなく指摘している(脚注)

20.源氏も加わり、打ち解けた演奏になる
 〈p213 明石の女御は、筝のお琴を、紫の上にお譲りして、〉

 ①女御が筝の琴を紫の上に渡し、紫の上は和琴を源氏に渡す。

 ②源氏=和琴 女三の宮=琴の琴 紫の上=筝の琴
  →筝曲のこと詳しくないが琴の琴が主旋律で和琴がからみ筝の琴が伴奏をつけるという具合だろうか。そうだとするとこの三人の関係をよく表しているのかもしれない。
  →女三の宮を源氏が盛り立て紫の上が支えるという構図なのだが。
  (筝曲に詳しい人の意見が欲しい所です)

 ③女三の宮の琴の琴
  いとおもしろくすまして弾きたまふ。さらにかたほならず。いとよく澄みて聞こゆ
  →女三の宮、よくできました!源氏もホッとしたことでしょう。
  →紫の上の心内が記されていない。複雑な心境だったのではなかろうか。
 

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2 Responses to 若菜下(19・20) 女楽 続き & 音楽論

  1. 青玉 のコメント:

    臥待ちの月はつかにさし出でたる。
    寝待月の事を臥待ちの月というのですね。

    源氏、夕霧父子の音楽談義なかなか面白いです。
    音楽の春秋論争ですね。
    源氏の芸事一般論にまで及び、これは現代でも通じるように思います。
    習得した技能を女御の二の宮に伝授したいとの源氏の言葉は明石の君にとって最高の栄誉でしょうね。
    自身の血を継ぐ孫に期待をかけられるのはわが身を褒められるよりもうれしいことに違いありません。
    つくづく明石の君の幸運を感じずにはおれません。

    月やうやうさし上がるままに、花の色香ももてはやされて、げにいと心にくきほどなり
    女君のそれぞれ個性的な奏楽の様子が春の夜の得も言われぬ風情です。

    筝曲には全くの門外漢で琴には触れた経験さえもありません。
    あの雅で優雅な音色はそれこそ天地をなびかし、鬼神の心をもやはらげるのでしょうね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.源氏と夕霧との音楽論議・春秋論議、いいですねぇ。夕霧も若い若いと思っていたけどもう26才、今上帝を支える立派な人物に成長しています。澪標4で語られた宿曜の予言(「御子三人、帝、后かならず並びて生まれたまふべし。中の劣りは太政大臣にて位を極むべし」)が実現しつつあることが実感されます。

        →源氏とほぼ対等に渡り合えるようになっている感じですね。
        →スーパーヒーロー源氏と異なり何ごとにも真面目で極めて人間的な夕霧。夕霧物語の今後の進展が楽しみです。

      2.琴の音は極めて日本的だと思います。歌謡曲で琴が入ってくるとそれだけで「いいなあ」と思ってしまいます。

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