藤裏葉(10・11・12・13) 明石の姫君 入内

p258 – 265
10.姫君入内、明石の君参内し姫君に侍する
 〈p316 入内の儀式は、〉

 ①いよいよ姫君の入内。前段で物分りよく明石の君に託し姫君を手放そうと決心した紫の上だが8年も手塩にかけて慈しんできた姫君が手元にいなくなる。
  →紫の上の悲哀如何ばかりか。

 ②たちかはりて参りたまふ夜、御対面あり  名場面
  ジャジャーーン! 紫の上と明石の君の初対面。
  →言葉を交わし即座に双方ともに認め合う。さすができた二人である。

 ③そして明石の君と明石の姫君の対面!意外にあっさりと書かれている。
  →大堰での別れ以来8年、「年月をまつにひかれて経る人」にやっと訪れた感激の一瞬。

 ④明石の姫君の素晴らしさ。東宮もすぐさま心を寄せる。
  先に入内してた麗景殿女御(左大臣の三の君)サイドから実母明石の方の出自をついて悪口が言い立てられるが明石の姫君の評価はびくともしない。
  →何ごとにも優れた明石の君がついている。負ける筈がなかろう。

11.諸事が終り、源氏、出家の志を立てる
 〈p319 源氏の君も、もう余生も長くないと〉

 ①源氏の懸案も全て解決した。一つは明石の姫君の入内、そして夕霧と雲居雁の結婚。
  これで思い残すことはない。出家しようとの心が強くなる。

 ②自分が出家しても
  紫の上には秋好中宮と明石の姫君が母親として仕えてくれるだろう。
  花散里は夕霧が面倒みてくれるだろう。
  →明石の方は勿論明石の姫君がいる。その他の方々(末摘花・空蝉)は経済的援助があればいいのだろう。

12.源氏、准太上天皇となり、年官年爵加わる
 〈p319 来年は源氏の君が四十歳におなりなので、〉

 ①明けむ年四十になりたまふ 「来年はG40年です」
  →この一文は非常に重要。ここから年を遡ることで源氏の年令が逆算されていく。

 ②G39年秋
  源氏は准太上天皇に (太上天皇になずらふ御位)
  →桐壷の巻での高麗人の観相が実現される。
   「国の親となりて、帝王の上なき位にのぼるべき相おはします人」

  →読者もみなよかったと納得したことだろう。
   
13.内大臣、太政大臣に、夕霧 中納言に昇進
 〈p320 内大臣が、太政大臣に御昇格なさって、〉

 ①内大臣は太政大臣に昇進。(父左大臣も太政大臣となっている)
  →頭中の太政大臣就任も読者の期待通りであったろう。

 ②夕霧は宰相から中納言へ昇進。
  夕霧 あさみどりわか葉の菊をつゆにてもこき紫の色とかけきや
  大輔の乳母 二葉より名だたる園の菊なればあさき色わく露もなかりき
  →大輔の歌は図太い。こうでなくては貴族の女房は勤まらなかったのであろう。

  「もののはじめの六位宿世よ」とけなされた時に夕霧の詠んだ歌。
   くれなゐの涙にふかき袖の色をあさみどりとや言ひしおるべき(少女p120)

  →あれから6年、夕霧くん、よくぞ辛抱精進しましたね!

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2 Responses to 藤裏葉(10・11・12・13) 明石の姫君 入内

  1. 青玉 のコメント:

    姫君を手放す苦渋の決断をされた紫の上、さぞかしお辛い思いだったことでしょう。
    それだけに8年の年月を別れて暮らした明石の君の哀しみも理解できたというものでしょう。

    (昨日、是枝裕和監督の「そして父になる」を観てきました。6年間育てた子どもが他人の子だったという二組の 家族を通して、愛や絆、血縁か時間か、を問う作品でした。いつの時代も永遠のテーマです。)

    そして明石の君との対面、この場面いいですね。
    今は全ての確執を水に流し女どうしがお互いの良さを認め合う。
    双方素晴らしい女性だと思います。

    源氏、内大臣、夕霧共に昇進。特に源氏は准太上天皇に登りつめる。
    高麗人の言葉がよみがえりますね。
    明ければ四十の賀ですか。
    めでたし、めでたしはまだ続くのでしょうか。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.ついに源氏の子を産めなかった紫の上。明石の姫君を養女として引き取り(G31年)、六条院で「源氏の一の人」と崇められていたこの頃が一番幸せだったと思います。朝顔のことが沙汰やみになって(G32年)以来女性関係の苦労もなかったし(玉鬘のことは知っていたし自分をおびやかす存在でないことは分かっていた)。

       愛してきた姫君が手を離れ入内する。源氏は有頂天だったでしょうが紫の上は改めて寂寥感におそわれたことでしょう。

      2.紫の上と明石の君の対面シーン、映画ならロングカットで二人の表情を追う名場面なんでしょうね。
        →「そして父になる」話題の映画ですね。産みの親と育ての親のパターンは沢山あって明石の姫君の場合はまあ普通のパターンですが、この映画のケースは特殊でしょうね。私にはちょっと重すぎて引いてますが、、。

      3.段落12.はごく短いですが高麗人の観相とおり源氏が昇りつめたことを高らかに宣言し物語にケジメをつける重要な段落だと思います。

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