真木柱 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

真木柱のまとめです。

和歌
61.今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな
    (真木柱の姫君)   髭黒、、家庭崩壊の悲別

62.ながめする軒のしづくに袖ぬれてうたかた人をしのばざらめや
    (玉鬘)       玉鬘十帖の締めくくり

名場面
57.にはかに起き上がりて、大きなる籠の下なりつる火取をとり寄せて
    (p129  髭黒北の方、逆上)

58.今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな
    (p140  真木柱、嘆きの歌を残す)

[「真木柱」を終えてのブログ作成者の感想]
玉鬘十帖の締め括りの帖で結構ストーリーがあって面白かったと思います。

玉鬘は誰と結婚するのか、、、前帖の藤袴まで延々と語られてきた結着がいきなり冒頭で突きつけられます。何と髭黒! 大穴ですね。伏線はあったとは言え驚きの展開だったと思います。その方法は何とレイプ!髭黒が勝利者となるにはこれしかなかったのかも知れませんが何と言うこと。平和で雅で秩序が最重要の六条院でこともあろうに乱暴狼藉。その場面は一行も書かれていない。すごいと思います。

そして玉鬘を手に入れたはいいが家庭崩壊に見舞われる髭黒一家。北の方の心の病が何ともお気の毒です。灰をふりかける場面は記憶に残ります。夫婦のあり方について考えさせられる場面だと思います。真木柱の姫君の歌も涙を誘います。

玉鬘の女性としての生き方・身の処し方が手本となるのかとんでもないのか、意見が分かれるところでしょうか。確かにぶりっ子的だし偽善的なところがある感じです。でも容貌は抜群だったのでしょう。何せ本来理性のあるべき家庭持ち中年である髭黒を狂わせてしまったのですから。

さて長かった玉鬘物語もこれで終わり、メインストーリー梅枝へと進みます。第一部フィナーレまでもう少しです。

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10 Responses to 真木柱 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

  1. 青玉 のコメント:

    何と言ってもここは真木柱の巻名のとおり姫君の心情に打たれました。
    「真木の柱よ私のことを忘れずにいておくれ、私も決して忘れはしないよ」

    玉蔓10帖終わりましたね。
    玉蔓、さしずめ男を狂わせる魔性の女性でしょうか?
    でも本人はさらさらそんな気持ちはないのでしょうね。
    美貌のなせる悲劇?
    若い女性の乱れ揺れ動く心が痛々しくもありました。

    梅枝、巻名がいいですね。どんな物語が展開されるのかとても楽しみです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      玉鬘は男を狂わせる魔性の女、、、なるほどそうですね。何せ母があの夕顔ですから。夕顔のDNAを色濃く持っていたのでしょう。夕顔が生きていたら源氏とどうなってたのか想像すると面白いですね。きっと頭中との間で面白おかしい一悶着があったのではないでしょうか。

  2. 式部 のコメント:

     真木柱の巻はいろいろ考えさせられることの多い巻でしたが、女君に仕える女房の人選がいかに重要かがよく理解できました。
     弁のおもとの手引きで玉鬘の結婚相手があっけなく決定してしまったわけですからねえ。
     源氏も実の娘にはこんな女房を採用することはなかったでしょうね。念入りに調査して人柄、能力、身分、交友関係などから間違いのないように人選したと思います。
     やはり玉鬘を軽く少し低くみていたのでしょうか。
     

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      なるほど女房の程度の高さ、、、重要でしょうね。ここでの「弁のおもと」と後で出てくる「小侍従」ですね。六条院での危機管理に問題ありですねぇ。源氏ともあろうものが。

      確かに玉鬘は急に登場してきたので質の揃った女房をきちんと集めるのは難しかったのかもしれませんね。玉鬘付きの女房の筆頭格は誰だったのでしょう。右近は古参だけど身分は低いのでリーダーではないでしょうし、蛍p93に出てくる「宰相の君」だったのでしょうか。これも源氏が急ごしらえで探し出してきた女房で「お局さま」として睨みが効く人ではなかったのかもしれません。

      面白い論点での指摘ありがとうございました。

  3. ハッチー のコメント:

    真木柱は爺のおっしゃる通り、話が色々あり面白く、飽かず読めました。

    皆さんからは特にコメントは出ていなかったと思いますが、〈十三〉節P144にある式部卿の宮の言葉

    賢き人は、思ひおき、かかる報いもがなと思ふことこそはものせられけめ”
    ”つれなうて、みなかの沈みたまひし世の報いは、浮かべ沈め、いと賢くこそは思ひわたいたまふめれ”

    が気になりました。明石の後都に戻り、源氏は最高位につき、非常に優雅にしなやかに立ちふるまってき、周りからも認められ誉められて来ましたが、小生には源氏はしたたかで上記のようなことは,あえて実行してきたようにも思っていました。ここで初めてこのような間接的表現が作者、紫式部よりあり、流石、やはりと思いました。

    でも、源氏の君は心の大きな貴人で、腹黒くはないのかもとも思えます。

    式部の卿も

    おのれ一人をば、さるべきゆかりと思ひてこそ、一年も、さる世の響きに、家よりあまることどももありしか

    と続けていますから。

    さて、歌では、爺が選んでくれている

    今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな

    ながめする軒のしづくに袖ぬれてうたかた人をしのばざらめや

    が良かったです。

    これで、玉鬘十帖が終わったとのこと、

    夕霧、雲居の雁、紫の上、そして冷泉帝、秋好中宮、髭黒大将、柏木
    どう話が進んでいくのか、さっぱり解りませんが、その分興味津々です。
    皆さんと共に秋の読書を楽しみたいものです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。しっかり読み込まれているようで嬉しいです。

      1.式部卿宮と源氏がお互いどのような気持ちを持っていたのか、源氏物語の謎の一つだと思っています。式部卿宮は紫の上の父、藤壷の兄。正に紫のゆかりの大元ですからね。そもそも源氏が紫の上を連れて来て二条院にかくまう辺りから何とも腑に落ちないのです。お互い何となく気の合わない関係ってありますよね。「好かんヤツや」 そういう関係かも知れません。

      2.須磨・明石の不遇時代にどう接してくれたかでその後の対応を区別する、、、まあ人間だから仕方がないですね。式部卿宮は須磨に行く源氏に明らかに冷たいですもんね(須磨p28)。その時の仕打ちが忘れられなかったとしても責められないでしょう。宮よりも北の方を悪者として描いていますがね。

       不遇時代に尽してくれた人にカムバックした人が恩返しする(冷淡だった人に報復する)、古今東西変わらぬ「人の気持ち」ではないでしょうか。サラリーマン社会なんてそのものじゃないですか。

      3.そうです、これからぐっと中味も濃くなり面白くなりますよ。乞ご期待。

  4. 進乃君 のコメント:

    『この「真木柱」はこれだけで一遍の小説になると思うほど内容豊富』
    だそうですが、確かに長かった。
    でも 最後まで、玉蔓には感情移入が出来ませんでした。一方、心の病に
    罹っているとは言え、髭黒の正妻、北の方の 哀れな事!
    所で 正妻との離別の語りがありましたが、こういう場面は (源氏物語では)
    初めてでしたね? 抑々、髭黒は この時代 NO.3高官位の人。
    それが こんな侘しい正妻との離別(別居)をするのですかね?

    北の方の嘆き様は凄いですね。
    愚痴に次ぐ愚痴、子供たちにも 『 昔物語などを見るにも、
    世の常の心ざし深き親だに、時に移ろひ、
    人に従へば、おろかにのみこそなりけれ。
    まして、形のやうにて、見る前にだに名残なき心は、
    かかりどころありてももてないたまはじ』

    なんて言って髭黒に黙って出ていく。
    確かに、僻みもここまで来れば (男としては) 嫌になっちゃう。 
    そのあと、すぐに玉蔓は髭黒の子(三男)をシャーシャー生みますが
    この流れも 凄いですね。
    いずれにせよ、玉蔓十帖は 後味悪く 終わりました。

    PS 三浦しをん/三浦佑之 談義が ありましたが、
       佑之氏が津高校出身と知り、納得。
       → 式部、青玉、清々爺さんらも確か津出身でしたね・・・・。
       NHKの100分de名著は 取り上げる作品興味深く、解説(者)も
       面白いのですが、進行役の伊集院光が大嫌いで困っています。
         (「方丈記」、「こころ」は 非常に良かったです)

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.玉鬘十帖、後味悪かったですか。そうかもしれません。「紫のゆかり」「明石物語」といったメインストーリーではなく中の品の女性(夕顔→玉鬘)を強引に取り上げた謂わば「外伝」みたいなものですからね。そして長い。まあこの部分はサラリと通過していくのでいいと思います。六条院の歳時記を綴ったものとして正月行事やら(初音)春の船楽やら(胡蝶)物語論やら(蛍)近江の君の爆笑譚やら(常夏)野分の様子やらを単発的に味わうことでいいでしょう。

      2.「真木柱」は髭黒一家家庭崩壊の悲劇ですね。病気のことが大きいのでしょうが実家に帰る北の方、それを髭黒が必死になって引き止めようとはしない。夫婦のあり方が問われるところだと思います。(一夫一婦制の社会ではないのですから離婚しなくてもやりようはあったのではと思うのですが)

       源氏物語の中で正妻との離別が描かれているのはこの場面だけだと思います。他には頭中の妻で雲居雁を産んだ母が頭中と離別して(理由は述べられていない)按察大納言と再婚したというのはありますが、この女性は頭中の正妻ではありません(正妻は右大臣の四の君)。

      3.佑之氏は津高校の同期生です。それでしをんちゃんも応援しているのです。
      カルチャー番組もよく見てますね。「大嫌い」などといわず「しゃーないなあ」ぐらいで流すしかないじゃないですか。

  5. 進乃君 のコメント:

    「カルチャー番組もよく見てますね」
    実は、清々爺の「道しるべ」に“参加”しようと思ったのは
    この100分de名著で 三田村雅子さんと言う方が「源氏物語」を
    取り上げたのがBASEになっています。この三田村さんの
    源氏評は とても新鮮でした。「光と影」と言う主題を念頭に
    影の解説が面白く、それに魅かれ是非全体像を知りたい、と
    思ったのがきっかけでした。 

    • 清々爺 のコメント:

      そうでしたか。そう言えば伊集院光が「私も光なんで、、、」とか言ってましたね。

      光源氏の「光と影」、正に物語の本質をついた見事な絞り込みだと思います。
      当代名うての女性源氏学者三羽烏は三田村雅子教授・清水婦久子教授・山本淳子教授だと思ってます。目についたら読んでみてください(TVなどへの出演も多い)。

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