真木柱(11・12・13・14) 髭黒北の方実家へ帰る-真木柱の歌 

p136 – 150
11.式部卿宮、北の方を引き取ろうとする
 〈p215 父君の式部卿の宮は、〉

 ①式部卿宮は北の方を自邸に引き取ろうとする。
  →髭黒は三条の自邸に北の方を迎えて住んでいた(二条東院の東南)。
  →婿殿の不実を許せない父親。無理もなかろう。

 ②去るにあたっての北の方の子どもたちへの言葉
  →心的に正常時で非常にまとも。それだけに気の毒である。
  →出家するのでなく隠遁生活に入るとの位置づけ。

 ③12・3才の姉は連れていく。10才と8才の男の子は髭黒に残していく。
  →子どものある家庭の崩壊。なんとも哀れである。

12.真木柱、嘆きの歌を残す 女房らの悲別
 〈p218 その日も暮れ、雪の降りだしそうな〉

 ①別れにあたっての姫君の言葉
  「見たてまつらではいかでかあらむ、いまなども聞こえで、また逢ひ見ぬやうもこそあれ
  →実に切ない。12・3才と言えば成人して結婚してもいい年令なのに。

 ②姫君、慣れ親しんだ部屋の柱に別れの歌を挿し込む。 名場面
  真木柱 今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな 代表歌
  →われを忘るな → 春を忘るな → 道真の東風吹かば

 ③真木=杉・檜など常緑樹の美称 すぐれた美しい木
  真木柱は美しい柱という意味だろう。槙の木ではなかろう。
  百人一首No.87 村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮
  →これは槙の木と特定すべきだろうか。

 ④木工の君は髭黒邸に留まる。中将のおもとは北の方について式部卿宮邸へ。
  →どちらがよかったのだろう。

13.式部卿宮の北の方、源氏を憎みののしる
 〈p222 式部卿の宮のお邸では北の方を待ち迎えられて、〉

 ①母北の方、登場。源氏を憎みののしる。
  ましてかく末に、すずろなる継子かしづきをして、おのれ古したまへるいとほしみに、、、
  →婿の髭黒をそそのかし、自分が慰みつくしたお古を押し付け、、、
   何とも憎悪のこもった言い方である。

 ②式部卿宮の北の方にとって源氏は憎んでも余りある仇敵である。
  ・継子紫の上を一の人にして大事にしている(気にくわない)
  ・冷泉帝に入った娘王女御は秋好中宮の後塵を拝している。
  そして娘である髭黒の北の方から髭黒を奪い去った。

 ③この大北の方ぞさがな者なりける
  →弘徽殿大后に次ぐ性悪女No.2
  →弘徽殿大后同様存在感あるし、尤もな言い草でもある。
  →愛憎は世の常。さすが式部卿宮は抑えているが大北の方はストレート。
  
14.髭黒、式部卿宮家を訪れ、冷遇されて帰る
 〈p224 髭黒の大将は、北の方がお里へ〉

 ①髭黒、玉鬘に言い訳して式部卿宮に出向く。
  →玉鬘はIt’s none of my business とばかり知らんふり。
  →自分も不幸だが結果を受け入れもうちょっと機嫌よくできないものか(まあ無理なからんか)。

 ②北の方は勿論、式部卿宮も面会を拒否。姫君にも会えない。
  →この辺すごくリアルに描かれていて読者には読みごたえがあったのではないか。

カテゴリー: 真木柱 パーマリンク

8 Responses to 真木柱(11・12・13・14) 髭黒北の方実家へ帰る-真木柱の歌 

  1. 青玉 のコメント:

    ここの場面は何と言っても姫君のお歌が一番です。
    12,3歳の少女のいじらしさにせつなさが募ります。
    一つの柱に込められた我が家、又父への限りない愛着が感じられます。

    柱の乾割れたるはさまに、笄の先して押し入れたまふ。
    感性豊かな姫君です、父髭黒にとっても秘蔵っ娘だったでしょうね。

    何の罪もない子どもたちにも深い悲しみを強いるのは親の責任。
    夫婦の不和がもたらす家庭の悲劇は昔も今も変わっていないのですね。

    大北の方、坊主憎けりゃ・・・の心境でしょう。
    式部卿宮も大北の方ほど感情露わではないにしてもやはり許しがたいことでしょう。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.真木柱の姫君、おっしゃる通り感性豊かで素晴らしい姫君ですね。先帝の曾孫にあたるのですかね。母北の方のいい所を引き継いでいると思います。今後も思わぬ形で物語に登場します。作者も思い入れある人物だったのでしょう。

      2.親と子の生き別れはつらいですね。明石の君と姫君の大堰の別れ。雲居雁も両親の離婚で実母とは生き別れてます。夫婦円満で子どもとともに暮らすのが一番だと思います。

  2. 清々爺 のコメント:

    [ブログ作成者のお知らせです]

    (青黄の宮さんの連絡で)NHKEテレの100分de名著、今月は「古事記」で三浦佑之教授が指南役とのこと。昨晩の第一回を今録画で見ました。初心者向けに分かりやすく面白かったです。日本最古の歴史書・古代文学がどのように源氏物語に繋がっていくのか、、、という観点から続きも見てみたいと思っています。ご参考まで。

    • 式部 のコメント:

        昨日11時から見ました。誰にでもわかるような説明で、アニメをふんだんに使っていて楽しめました。
       これから神様の長ーいなまえが沢山でてくるのでしょうが、それをどのようにわかり易く整理されるのか、興味がありますね。
       源氏物語とはどこでどう繋がるのか、2回目以降も見なくちゃね!

  3. 青玉 のコメント:

    有難うございます。
    昨日は見逃してしまいましたので再放送を見ることにします。

    最近の佑之氏はテレビ、講演にと大活躍ですね。
    名古屋での講座の時はいち早く申し込まないと満員になるほどです。

    彼のH・Pをお気に入りに登録しているのですが以前の「古事記の世界」~CGアニメでひも解く日本誕生物語も面白かったです。
    街へ出たら先ずテキストを求めましょう。

  4. 青玉 のコメント:

    追記
    それと書き忘れましたがお嬢さんのしをんさんの「 神去なあなあ日常」がWOOD JOB!として映画化されますのは皆さんご存知と思います。
    そのロケが津市美杉村で数カ月にわたり行われました。
    先ごろ撮影が終わり来年夏ごろの公開ということで映画好きの私は楽しみです。
    地元住人もエキストラ等で活躍したそうですよ。
    ローカル新聞の三重版や広報にも掲載されておりました。
    しをんさん、佑之氏にそっくりですね~

    • 清々爺 のコメント:

      情報ありがとうございます。

      「 神去なあなあ日常」まさに佑之氏の故郷美杉村をモデルにした林業小説ですもんね。伊勢弁が面白かったのを覚えています。映画、私も見てみたいと思います。それにしても公開は来年夏ですか。まあ春~夏が舞台なんでしょうからね。

    • 式部 のコメント:

       しをんさんの小説、映画化の頻度高いですよね。
       来年見なくてはね!
       忘れるといけないので、始まったらまた教えてくださいね。

コメントを残す