真木柱(8・9・10) 髭黒、灰まみれ

p124 – 135
8.髭黒外出の用意 北の方火取の灰をかける
 〈p206 日が暮れてきますと、〉

 ①早く玉鬘の所へ出かけたい髭黒。北の方に遠慮してウジウジしている。
  →こういう時はサッサと行くべきではないか。周りも気を遣っている。

 ②北の方 立ちとまりたまひても、御心の外ならんは、なかなか苦しうこそあるべけれ。よそにても、思ひだにおこせたまはば、袖の氷もとけなんかし
  →何と言う名言だろう。とても心を病んでいる人とは思えない。
  →妻のこんな言葉を聞けば外泊などできまいに、、、。

 ③愛人のところへ出かける夫を甲斐甲斐しく手助けする北の方。
  →紫の上はしょっちゅうこんなことやってきている。

 ④さて名場面
   にはかに起き上がりて、大きなる籠の下なりつる火取をとり寄せて、殿の背後に寄りて、さと沃かけたまふほど、人のやや見あふるほどもなう、あさましきに、あきれてものしたまふ。
  →北の方の振舞 どこまで正気でどこまで狂気か
  →思わぬ一大事発生。驚く髭黒。でも取り乱してはならない。
  →中将・木工など女房も気の毒

 ⑤北の方逆上の小道具に火取りの灰を使ったのも素晴らしいアイデア。
  →夫の衣服に甲斐甲斐しく香をたきしめてる内に急に「What am I doing now?」と疑問が湧いてきて己を見失ってしまったのだろうか。

 ⑥北の方についた物の怪を調伏すべく僧侶が急遽呼ばれる。
  →さしづめ夜中に救急車で医者が駆け参じたというところだろうか。

 ⑦北の方の心の病はいつからか。原因は何なのだろう。従来は(玉鬘に懸想する前は)夫もまあまともだし子どもにも恵まれておりストレスある結婚生活とは思えないが、、、。
  →夫婦の仲、人の心の中は計りがたい。現代にも通じる話であろう。

9.髭黒、玉鬘に消息 北の方の平癒を念ずる
 〈p210 その夜一晩中、北の方は〉

 ①夜一夜、打たれ引かれ泣きまどひ明かしたまひて
  →何ともお気の毒な北の方である。

 ②髭黒から玉鬘への言い訳の消息。玉鬘からは返事も来ない。
   尚侍の君、夜離れを何とも思されぬに、 
  →何ともつれない玉鬘。せめて返事だけでもしてあげなくっちゃ。

10.髭黒、玉鬘方にこもる 北の方を厭う
 〈p212 日が暮れてきますと、〉
 
 ①髭黒の装束が整えられてないとあるが、この辺面倒をみる女房はいないのだろうか。木工の君はどうなのか。北の方に同情するのはいいが髭黒の面倒はみないのか。

 ②いかなる心にてかやうの人にものを言ひけん
  →召人という人との関係がよく分からない。妻とか愛人でないことは分かるが単なる性的な関係なのか、情けを通わす関係なのか。
  →それにしても髭黒のこの言い方はないでしょう。

 ③髭黒は玉鬘に夢中。他に何も目に入らない。
  →髭黒の一途な所。不器用でアレコレ両方うまくやることができない。

 ④髭黒と北の方には子どもが3人
  12・3才の姫(真木柱の君) & 下に男の子が二人
  →いい家庭ではないですか!
  

カテゴリー: 真木柱 パーマリンク

2 Responses to 真木柱(8・9・10) 髭黒、灰まみれ

  1. 青玉 のコメント:

    留守を重ねているうちに意外や意外、玉蔓の運命は激動・・・
    と言っても「藤袴」でそれとなく、はは~んと思わせる伏線は感じられました。
    とにもかくにもホッとする気持ちと何やら口惜しい気持が入り乱れています。
    正式な結婚の儀式を踏まれたと言うことですね。
    髭黒、幾人かのライバルを出し抜いて運の良い男ですね。
    そりゃ清々爺さんでなくっても羨ましいことでしょう。

    さて今日の場面、かいがいしく夫を見送る妻からいきなり逆上した北の方・・・
    生来正気の時はとても良き妻なのに病気がそうさせるのでしょうね。
    にわかに起き上がりて大きなる籠の下なりつる火取りをとり寄せて・・・・
    本当にお気の毒で痛々しい場面です。
    精神の病というのは正気と狂気の境を彷徨ったりするといいますからね。
    北の方には同情しますが一体何がそうさせたのでしょうね?
    大将にも原因があるのではないでしょうか?
    例えば(五)のところ
    ひたおもむきにすくみたまへる御心にて動きぬべきこと多かり。とあります。
    一姫二太郎、良き家庭に思われますのにね。

    一方の玉蔓、大将の訪れないのをこれ幸いって感じですね。
    今後の成り行きが心配されます。

    • 清々爺 のコメント:

      お忙しい所コメントありがとうございます。

      1.髭黒はいきなり登場してきたので性格や考え方が分からずどう評価していいのか迷うところです。北の方は式部卿宮の長女。と言えば先帝の孫。どういう経緯から北の方を迎えたのかなど全く書かれていませんもんね。

       髭黒は公家でしょうから天皇の孫を妻にするのには気おくれがあったのかもしれません。その反動として人の気持ちを逆なでするような行動も多く自ずと北の方との関係も冷えていったのかもしれません(全て想像です)。

      2.夫が他の女の所へ出かけて行くのを妻が甲斐甲斐しく世話を焼く。この場面がそうですし紫の上も源氏が明石の君のところへ行く場面でやってましたよね。ぐっと堪えるのが女の美徳という考え方からか芝居やら小説やら落語にもこの手の話が多いと思います。私には信じられません。心を隠してそんな風に振る舞う女性も如何かと思いますがそもそもそんなことをさせる夫は地獄に落ちるべきだと思っています(少なくとも現代では)。

コメントを残す