真木柱(5・6・7) 髭黒と北の方 重っ苦しい会話

p114 – 124
5.髭黒、北の方を無視して玉鬘に熱中する
 〈p199 髭黒の大将は、玉鬘の君が宮中に〉

 ①人物関係を整理しておきましょう。
  髭黒:父右大臣(弘徽殿大后の父と違う)妹は朱雀帝妃承香殿女御、即ち東宮(後の今上帝)の伯父。政治的に源氏・内大臣に次ぐ三番手の重要人物

  髭黒の北の方:父は式部卿宮 母は大北の方(正妻=紫の上をよく思わない継母)、従って紫の上とは異母姉妹(母の身分では紫の上の方が低い)

 ②髭黒はとにかく玉鬘を連れ添いたい。六条院では窮屈、一旦尚侍として出仕させ里下がりを願い出て六条院に戻さず自邸に引き取ろうと考える。

 ③問題は北の方。
   あやしう執念き御物の怪にわづらいたまひて、この年ごろ人にも似たまはず、うつし心なきをりをり多くものしたまひて、
  →唯一の欠点として心の病。何とも気の毒である。

 ④かの疑ひおきて皆人の推しはかりしことさへ、心清くて過ぐいたひけるなど
  →玉鬘は処女だった!髭黒の喜びは分かるが、How do you know?

6.式部卿宮の態度 北の方思いわずらう
 〈p200 北の方の父式部卿の宮がこのことの次第を〉

 ①式部卿宮、父として娘の不幸を放っておけない。
  →至極尤もな態度であろう。

 ②北の方 今は限りの身にて、たち返り見えたてまつらむこと
  →本性はいと静かに心よく、児めきたまへる人の、時々心あやまりして
  →病気さえなければ。あわれ、かわいそう。
   
7.髭黒、病む北の方の心を慰め、説得する
 〈p201 お部屋などもひどく乱雑で、〉

 ①髭黒邸は荒れている。
  →北の方が病気がち故に更に気を配って綺麗にしておくべきではなかろうか。髭黒の杜撰なところか。

 ②髭黒と北の方の会話。今どきのドラマにもありそう。
  →精神的に少しおかしい妻を持った夫、どう対応すべきなんでしょう。
  →髭黒のエクスキューズも分からぬではなし、北の方の言い分も尤も。

 ③御召人だちて、仕うまつり馴れたる木工の君、中将のおもとなど
  →夫婦関係が正常であってこそ女房たちも平和でいられる。

 ④式部卿宮&髭黒の北の方にとっては玉鬘が源氏の世話になっていた養女であるということが引っ掛かるのであろう。
  →式部卿宮にとって源氏は娘婿にあたる。なのにうまくいってない所が悩み。今もよくある話であろう。
  

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2 Responses to 真木柱(5・6・7) 髭黒と北の方 重っ苦しい会話

  1. 式部 のコメント:

    心の病というのは昔からあったのですねえ。紫式部は髭黒の北の方を使ってその症状を明らかにしていますね。おそらくそのまま現代にも通じる病状ではないかと思います。
     他の病のことはさらりとした描写なのに、これは詳しく書かれているように思います。きっとどこかで実際に見聞きして、興味を持っていたのではないでしょうか?
     現代でもそうでしょうが、病人だけでなくその家族やまわりの人も大変な思いをしたのでしょうね。
     髭黒がその状況から逃れようと玉鬘に走る気持ちもわからないではありませんが、病んでいる北の方が哀れでなりません。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      髭黒北の方の心の病状は詳しく書かれていますね。おっしゃる通り現代にも通じるものだと思います。

      北の方は式部卿の宮(先代の皇子・藤壷中宮の兄)の長女で父の後見も厚く、夫髭黒も順調に出世、子どもも一姫(真木柱)二太郎と恵まれており、どこから見ても順風満帆で心の病のつけ込む隙などないように思えるのですがねぇ。何らかの形で父母(特に母)からのプレッシャーがあったのでしょうか。まあ、原因も処方箋もみつからないのがこの種の病なのかも知れません。お気の毒です。

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