藤袴 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

藤袴のまとめです。

和歌
59.おなじ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかごとばかりも
    (夕霧)  姉ではなく他人だったんだ!じゃあ

60.数ならばいとひもせまし長月に命をかくるほどぞはかなき
    (髭黒大将) 雅の中の野生派、髭黒

名場面
56.かかるついでにとや思ひよりけむ、蘭の花のいとおもしろきを、、
    (p77 多情なる15才 夕霧)

[「藤袴」を終えてのブログ作成者の感想]

藤袴を終えました。玉鬘十帖のラス前の帖でさしたるエピソードもないし、まあつなぎの帖ということでいいのでしょうか。

巻名が「藤袴」なのでやはりこの帖の焦点は「夕霧と玉鬘」ということでしょうか。

夕霧 おなじ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかごとばかりも
大宮 ふた方にいひもてゆけば玉くしげわが身はなれぬかけごなりけり(行幸)

夕霧と玉鬘、亡き大宮ゆかりの二人の想いについて考えました。夕霧は六条院に姉として突如現れた玉鬘に最初はどんな想いを抱いたのでしょうか。花散里を母親として夏の町で暮らす二人(勿論部屋は違い顔を合わすことはなかったろうが)、六条院のマスコットガールとして公達たちが言い寄る玉鬘を夕霧は姉として誇りに思い同時に眩しく感じたのではなかろうか(「こんな姉さんを妻にする人はシアワセだろうな」)。

ところが実は姉ではなく二人とも大宮を祖母とする従姉弟であった、、、「何だ雲居雁と同じ関係ではないか」。雲居雁との結婚に見通しが立たない夕霧は「いっそ玉鬘と結婚できたらいいのに」と一瞬は思い「おなじ野の露にやつるる藤袴、、、」と訴えた。でも真面目人間の夕霧が雲居雁を見捨てられる訳はなく、亡き大宮も玉鬘よりも雲居雁が大事だった筈でこの話はどう考えても成り立たない、、、ということでしょうか。

そして玉鬘物語の結着、真木柱へと続きます。お楽しみに。

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6 Responses to 藤袴 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

  1. 青玉 のコメント:

    15才、青春真っただ中にある夕霧にとって玉蔓はさぞや眩しい大人の存在だったことでしょう。
    幼馴染の雲居雁とはまた違った意味で新鮮だったでしょうね。
    その夕霧の思いを深読みして(夢想)詠んでみたのが結びの歌です。
    大宮にとっても突然現れた玉蔓よりも手塩にかけて育てた雲居雁への愛情は深かったはずです。
    男達に翻弄されるこの時代の女性、これはこれで幸福だったのでしょうか?
    今まで登場した女性の中では良くも悪くも女を自ら主張したのは朧月夜と近江君だけですね。
    特に近江君は思いの丈をぶつけている、他の女性は忍従を強いられている・・・
    そんな時代でも女君たちはそれなりに幸せを見出していたのでしょうね。
    三従の徳が常識だったとか、やはり女三界に家なしとは封建時代だけの事ではなかったのでしょうかね。
    玉蔓にも幸せが訪れることを願っています。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      野分で紫の上を垣間見、各女君への見舞いをし、源氏と女君たちとの様子を窺って以来夕霧は急速に女性に目覚めていったのではないでしょうか(それまでにも雲居雁はいるし五節の舞姫とも続いているし勿論情けをかけた召人もいたのでしょうがそれはいわば子どもじみた恋愛ごっごだったのかもしれません)。

      そんな中で姉と思っていた玉鬘がそうではなかった。ある意味ショックだったと思います。玉鬘とのことを夢見たことでしょうね。歌の趣旨よく分かりました。

  2. ハッチー のコメント:

    八月も終わりを迎え、玉鬘十帖も残すところあと一つまで来たとのこと、早いなと感じます。
    玉鬘がどうなるのか、夕霧がどうなるのか、これからの展開が楽しみですが、源氏がどうなるのかは、今は一服加減なのでしょう、あまり強い興味が湧いて来ません。いずれにせよ、読者を引き付け続ける紫式部の物語の組み立ては流石です。

    歌では、

    おなじ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかごとばかりも

    と、軟弱とあまり評判のよくない、でも切なさが伝わって来た

    朝日さす光を見ても玉笹の葉分けの露を消たずもあらなむ

    とその返歌

    心もて光にむかうあふひだに朝おく露をおのれやは消つ

    が小生には良かったです。

    この返歌にも関わらず、玉鬘の結婚は、”おのれ”でない力が働いて、黒髭大将と結ばれると書いてあった気がしましたが、果たして?
    ところで、この返歌は、あなたが好きですと解してよろしいですか。軽くいなした返歌とは思いたくないのですが。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。暑い中頑張って読んでいただいてますね。すばらしい!

      1.おっしゃる通りここん所源氏の出番は少ないですね。玉鬘とのことが発展のしようがなくなってしまったので仕方ないのでしょう。でももう枯れて行く源氏ではありません。ちゃんと紫式部はすごい展開を用意していますのでご安心を。

      2.玉鬘から蛍兵部卿宮への返歌ですか、難しいところですね。この時点で見えている立候補者は蛍宮・黒髭・左兵衛督・夕霧でしょうか。宮中への出仕への期待と不安もある。そんな中で消去法から「まあ蛍宮ならしようがないか」ということになったのではないでしょうか。軽くいなしているとは思いませんが積極的に好きですということでもないかと思います。正に青玉さんおっしゃる主体性のなさ意志のなさを写し出した歌だと思います。

      玉鬘はどうなるのでしょう。答えは月曜日のお楽しみです。

  3. 進乃君 のコメント:

    この帖は、 玉蔓を慕っていた男ども(求婚者)の最後(?)のアプローチの
    場面が面白いですね。
    柏木は; 「 妹背山深き道をば尋ねずて 緒絶の橋に踏み迷ひける
    (訳: 「実の姉弟という関係を知らずに 遂げられない
       恋の道に踏み迷って文を贈ったことです」)と 戸惑いが解けていません。

    蛍宮から玉鬘への贈歌は 実にせつないですね。
      「朝日さす光を見ても玉笹の 葉分けの霜を消たずもあらなむ
    (訳:「朝日さす帝の御寵愛を受けられたとしても
        霜のようにはかないわたしのことを忘れないでください。」)

    唯一、黒髭大将の歌は 男らしく、なかなかキリッとしています。
    私なら黒髭を選びますね。

    でも、そもそも玉蔓の争奪戦自体が 納得がいきません。
    玉蔓って、出自の劣等感以外 まったく感情を出さない、
    何と言ってよいか・・・、そう不感症的な女性。
    わたしゃ、全然魅力を感じませんね。
    青玉さんは「夕霧もなかなかやるものですね~」
    と、やや嘲笑的にコメント、さすがに、同じ女性、ズバリ玉蔓の
    本質を見抜いています。この手の女性、銀座のホステスに居ましたね。
     → 清々爺が 8月29日のコメントで このへんの 男心、女心、
        それに作者の意図を 分析されていますが、結構(失礼)
        機微のある 分析でした。おみそれしました。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。着実にフォローしてもらっててありがたいです。

      1.玉鬘の争奪戦、そうですね、何となく嘘っぱちな感じですよね。でもこれは六条院という絢爛豪華な舞台に未婚で飛びっきり美人の女性を配し最高クラスの男性に恋の鞘当てをさせるという紫式部原作・光源氏演出による謂わば劇中劇と考えればどうでしょう。そしてその美人があの夕顔の忘れ形見とすれば玉鬘に個性などなくっても読者は十分に感情移入できたのではと思いますが、、、。

      2.玉鬘には魅力感じませんか。なるほど。ここは意見が分かれるところでしょうね。好きな人、嫌いな人それぞれ言い分があるのでしょう。銀座のホステスさんに対しても好き嫌いありましたもんね。

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