藤袴(6・7) 髭黒か蛍宮か! 蛍宮か髭黒か!

p93 – 98
6.髭黒大将、玉鬘に対して熱心に言い寄る
 〈p182 髭黒の大将は、この柏木の中将と同じ右近衛府の長官なので、〉

 ①玉鬘への求婚者の一人 髭黒大将
  妹が承香殿女御(朱雀帝の女御、現東宮の母)
  北の方は式部卿宮の長女=紫の上の異母姉(この北の方とうまく行っていない)
  現在32~3才 右近衛府の大将 柏木中将の上司

  大臣たちを措きたてまつりて、さし次ぎの御ぼえいとやむごとなき君なり。
  →政治的にも源氏、内大臣に次ぐ第三番目の実力者 

 ②髭黒は部下である柏木を通じて玉鬘の実父内大臣に玉鬘との結婚を願い出ている。
  内大臣はそれでよいと思っているが源氏に働きかけるようなことはしない。
  源氏は髭黒との結婚には反対である。
  →玉鬘本人が好きではないこと。蛍宮の方が望ましいこと。そして北の方の母が紫の上の継母だからであろうか。

 ③髭黒 「ただ大殿の御おもむけのことなるにこそはあなれ。実の親の御心だに違はずは」
  →実に明快な整理のつけ方ではなかろうか。ウジウジしていないところがいい。

 ④この弁のおもとにも責めたまふ
  →次巻の展開への見事な伏線である。手引き者弁のおもとが突如登場する。 

7.九月、玉鬘に文集まる 兵部卿宮に返歌
 〈p184 やがて九月になりました。〉

 ①G37年9月に入った。9月は初霜の月。

 ②髭黒 数ならばいとひもせまし長月に命をかくるほどぞはかなき 代表歌
  →命をかくる、、、如何にも思いつめた決意がうかがえる歌ではなかろうか。

 ③蛍宮 朝日さす光を見ても玉笹の葉分の霜を消たずもあらなむ
  →結婚をあきらめた歌だろうか。髭黒に比べ軟弱極まりない。

 ④式部卿宮の左兵衛督=初登場(ここだけ)、紫の上の異母兄弟

 ⑤玉鬘は初めて蛍宮に返歌を贈る
  玉鬘 心もて光にむかふあふひだに朝おく霜をおのれやは消つ
  →蛍宮ならいいかと心を決めた玉鬘だったが、、、、。

 ⑥巻末の草子地 女の御心ばへは、この君をなん本にすべきと、大臣たち定めきこえたまひけりとや
  →脚注8の通り。玉鬘への語り手の讃辞
  →物語中No.1女性は紫の上、No.2が玉鬘(私の勝手な好みです)

そして玉鬘十帖の最後「真木柱」へと続きます。

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2 Responses to 藤袴(6・7) 髭黒か蛍宮か! 蛍宮か髭黒か!

  1. 青玉 のコメント:

    ここへ持って髭黒大将がクローズアップされてきましたね。
    今まではごくわずかに地位と容貌、そして玉蔓が嫌っていることにしか触れられていなかったような・・・
    容貌はともかく男らしくはっきりしていて好もしく感じます。
    ただどういう事情があるのか北の方を大切にしていないのは気がかりですね。
    妻を大事にしない男は嫌いです。
    大将の歌もやや大げさに思いますがそれほど一途な思いの表れでしょう。
    その他の方々のお歌には真剣さと積極性が感じられません。
    そんな中で蛍宮へだけに返歌をする玉蔓。
    玉蔓の本心は一体どこにあるのでしょう。
    本当に好きな人は誰なの?と聞いてもこの時代には無理なことかしら?
    どうも玉鬘自身の主体性?(これも無理?)が見えてこないのです。
    見かけだけの美しい男に魅かれているような、イケメン好み?

    女の御心ばへは、この君をなん本にすべき・・・
    語り手の賛辞が現代人の私にはよく理解できません。
    源氏と内大臣への円満裡に出仕を・・・脚注にありますが義理で決めることでしょうか?
    玉蔓よ、自分の意志はないのですか?と私は問いたい!!
    清々爺さんの好きな玉蔓にはちょっと辛口です。

    気持ちが激してくると忘れっぽくなる私、またもや和歌を忘れそうになりました。
    来月、真木柱への展開に期待しましょう!!

         むらさきのゆかり懐かし藤袴
            手折らば露のしずくと落つる

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.そうですね、髭黒が詳しく紹介されクローズアップされてきました。「髭黒」という呼称が何ともいいですね。色白で化粧もしているのが普通の上流貴族からすれば「ワイルド」な感じで異色だったのでしょう。現代からみるとこの方がずっとセクシーでいいと思いますけどねぇ。

       (追記)妻を大事にしない男、私も嫌いです。夫を大事にしない女も嫌いですが。

      2.玉鬘の主体性のなさ意志のなさにご立腹の様子、誠にご尤もに存じます。そしてその態度生き様に讃辞を送る語り手(作者)。現代人には理解できませんね。

      この時代、世間一般には女の生き方はかくあるべし(自我を捨て親・夫・世間に合わせて生きる)と思われていたのでしょう。源氏物語の女君も総じてそんな感じでその代表が紫の上、その次が玉鬘ではないでしょうか。玉鬘のおかれた場面で紫の上ならどうするだろうと考えると殆どの場合紫の上でもそうしただろうと思います。

      紫式部はそういう女の生き方を描いていく内にムラムラと疑問が湧いてきたのかもしれません。宇治十帖の浮舟で女の自我のあり方を徹底的に考えたかったのではと思っています。

      私は何も女性の自我を否定するわけではありませんが楯突く女性より従順な女性の方が好ましいです(何せ弱い男なので女性にも優しくして欲しいのです)。
       
      3.藤袴の歌、意味深長ですね。従姉弟同士の夕霧と玉鬘。大宮ゆかりのこの二人が結びつくのも面白かったかもしれません(さすがに物語は目茶苦茶になってしまうでしょうが)。 

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