p86 – 92
4.玉鬘の出仕決定に、懸想人たち焦慮する
〈p176 こうして喪服もお脱ぎになり、〉
①今8月、玉鬘の尚侍としての出仕は9月(忌月)を避けて10月と決まる。
→尚侍は別に天皇の妃ではないから結婚は構わない。でも宮中に行ってしまうと求婚活動ができなくなる。従って求婚者たちは焦って玉鬘に近づこうとする。
→頼れるのは取り次ぎの女房たち。勿論玉鬘(源氏側)のデフェンスは固い。
②夕霧は一旦打ち明けたが後は自然体、大人しくしている。
5.柏木、玉鬘を訪問、恨み言を述べる
〈p178 それでも取り次ぎなしのお話はやはりきまり悪いので、〉
①柏木が父内大臣の伝言を伝えにくる。
→兄弟と分かってからも玉鬘は柏木に冷たい。柏木はイラついて恨み言を述べる。
柏木 妹背山ふかき道をばたづねずてをだえの橋にふみまどひける
玉鬘 まどひける道をば知らで妹背山たどたどしくぞたれもふみみし
→をだえの橋 宮城県古川市にあった橋、歌枕 奥の細道で芭蕉が通っている。
陸奥の緒絶えの橋やこれならむ踏みみ踏まずみ心惑わす(藤原道雅)
道雅は定子の甥。百人一首No.63(今はただ、、、)。紫式部はこの歌を知っていたのだろう。
②内大臣はその後玉鬘の入内の段取りなど源氏から聞かされていない。源氏に遠慮して何も口出しせずじっとしている。
→源氏が玉鬘のことを打ち明けてくれたのをきっかけに実の父として攻勢をかけたらいいのに。。。やはり源氏には敵わない。何もできないのであろう。
玉蔓に求婚していた人々も何とか出仕前にと焦ることでしょう。
女房を使ってあの手この手でというところでしょうか・・・
玉蔓の出自が解ってからの夕霧と柏木の立場は逆転ですね。
こういう事って普通なら何とも体裁が悪いのではないでしょうか?
懸想していた相手が姉、又姉だと思っていた人がそうではなかった・・・
柏木と玉蔓の和歌にはお互いばつの悪さと自嘲的な響きを感じました。
追記
百人一首と言えばつい最近の事です。
従弟の子(今年新卒の社会人)の卒論が「百人一首」だと言うので興味を覚え早速それを見せてもらいました。
今時の若い男の子にしては珍しいなと思い読んでみました。
百人一首とは何か、藤原定家とは誰かに始まりその問題点と疑問点。
統計的、人物から見る百人一首。定家の選歌、(恋歌、述懐歌)
百人一首のなかの逸話性の高い人物等々、若者らしい考察がなされていて面白く感じました。
又若者がこういった古典を題材にした卒論に挑戦するのを頼もしく感じ、ちょっと見直しました。
清々爺さんから紹介された織田正吉の「絢爛たる暗号」には触れられていませんでした。
卒論、百人一首ですか、頼もしいですね。古文好きな若い人が増えるといいですよね。
住んでいる地域で私は古典文学同好会をつくっていますが、教科書となるようなテキストがなくて、先日も先生が困っておられました。
現代語訳したのや英訳もあるのに、原文テキストがそろわないなんて!
原因は大学で国文専攻者が減っていて教科書の需要も減っているからだそうです。 その上、教科書は少ししか進まないので、買うのがもったいない、コピーですませようとなるようで、嘆かわしい現実です。
教科書専門出版社多数社に先生は電話をかけまくり、在庫も調べさせ、ようやく調達できたのは笠間書院「栄花物語新註」でした。
古典の原文テキストがありませんか。困ったものですね。国文専攻者が減ってることと言い先日キーンさんが指摘されていたように日本の国文学のやりかたに問題があるのでしょうか。国文学って魅力あるなと思わせないと誰もやろうとしないでしょうからね。
そういう中で地域で古典を読もうなんて素晴らしいです。頑張ってください。また「栄花物語」のこと教えてください。
ありがとうございます。
1.源氏と内大臣がある種のライバルとして常に対比されて書かれているように息子たち、夕霧と柏木も同じようにライバル・友人として登場します。玉鬘を廻り姉弟だった(柏木)、姉弟ではなかった(夕霧)二人の対比が面白いですね。おっしゃる通り柏木はばつが悪かったことでしょう。柏木を姉弟なのにと分かっていた玉鬘もとぼけて切り返すしかなかったでしょうね。
源氏・内大臣(頭中) & 夕霧・柏木の役職比較です。
源氏: 中将=17才(帚木) 宰相中将=19才(紅葉賀)
頭中: 頭中将=22才(帚木) 宰相=32才(須磨)
夕霧: 中将=14才(玉鬘) 宰相中将=16才(藤袴)
柏木: 頭中将=20才(篝火)
夕霧の順調な(源氏より早い)昇進が目立ちます。六位スタートさせたと言っても源氏の御曹司、さすがです。読者も納得でしょう。
2.百人一首を卒論に! いいですね。これ古典称揚のキャッチフレーズにしたいですね。ご承知のとおり百人一首は600年の歴史と文化を圧縮した宝物です。色んな観点から掘り下げることができるし、延いては更なる研究への入り口になると思います(私の源氏物語のように)。さすが青玉さんの従弟のお子さん、敬意を表したいと思います。
(「絢爛たる暗号」は素人のマニア本ということで論文には相応しくないのでしょう。私は「オモロイやんけ」と思っていますが)