常夏のまとめです。
和歌
51.なでしこのとこなつかしき色を見ばもとの垣根を人やたづねむ
(源氏) 夕顔の筋より出でる玉鬘
52.草わかみひたちの浦のいかが崎いかであひ見んたごの浦波
(近江の君) 物語中の最滑稽歌
名場面
50.何か、そは。、、、、大御大壺とりにも仕うまつりなむ
(p116 近江の君の爆笑譚)
[「常夏」を終えてのブログ作成者の感想]
奇しくも真夏の最中「常夏」の巻を終えました。
総じて言えばこの巻は玉鬘恋愛譚を少し離れて内大臣の歓迎せざる落胤「近江の君」登場の巻と言えるのではないでしょうか。
よくよく考えれば「少女」以降玉鬘十帖&「梅枝」・「藤裏葉」の第一部終了までは内大臣の4人の娘の織りなす物語と言えるかもしれません。
(年令はG36年時)
玉鬘 22才 母 夕顔
弘徽殿女御 19才 母 右大臣四の君
雲居雁 17才 母 按察使大納言の北の方
近江の君 ?才 母 不詳 近江にゆかりのそこそこの身分の女性か
→内大臣も源氏さながらお盛んなことです。でも源氏と比べるとお相手はワンランク下です。
これらの女性に源氏側が絡んで物語が進展するという仕組みでしょうか。玉鬘は源氏の養女・恋の相手として、弘徽殿女御は秋好中宮との後宮争いライバルとして、雲居雁は息子夕霧の恋愛相手として。(さすがに源氏と近江の君との関係は一切生じない。あくまで幕間狂言としての位置づけなのでしょう)
それにしても近江の君は面白い。近江の君の言葉とそれへの周りの人たちの反応はつぶさに読めば色々な議論ができるのではないでしょうか。この先も(幕間狂言としてですが)登場します。お楽しみに。
近江の君登場の常夏7・8は是非式部さんの朗読をお聞きください。特に早口の近江の君のセリフの部分は爆笑ものです。暑さも吹っ飛びますよ。。
[追記 8月の予定]
篝火 1回(8/1) & 総括(8/2)
野分 5回(8/5-9) & 総括(8/12)
行幸 8回(8/13-22) & 総括(8/23)
藤袴 4回(8/26-29) & 総括(8/30)
私も、この「常夏」⑦⑧の朗読は聞いていただきたいと思います。
源氏物語は王朝の雅な恋物語だという先入観はみごとに吹っ飛ぶおもしろさです。
紫式部の溢れる才能の中にユーモア感覚があるという点が楽しいです。
私自身は日常早口です。 朗読の際はゆっくり読もうと心がけていますが、つい地が出てテンポが速くなる時があります。 今後もそういう時はこの近江の君を思い出して笑ってください。
王朝の貴族たちも、日々の儀式やら人にどう思われるかに汲々として心が鬱屈する時、近江の君の話は本当に面白くて心が少し伸びやかになったのではと感じます。
物語のなかの主流の姫君たちだけでない隠れファンが近江の君にはいたかもしれませんよね。 そう考えると楽しい!
ありがとうございます。
1.近江の君の件はおっしゃる通り王朝の雅な恋物語・人生ドラマとされる源氏物語には突拍子もないエピソードですがこれだけリアルに書かれると惹き寄せられてしまいます。特にセリフの部分が面白い、楽しくなりますね。
2.近江の君の早口ですが、やんごとない貴族の人たちは普段どれぐらいのスピードでしゃべっていたのでしょうか。現代人からするとおそらくは超スローだったのでしょうね。即ち身分の上下で下賤の者は早く、上に行くほどゆっくりだったのでしょう。近江の君の登場は源氏物語に中の品よりもっと下(下の品)クラスの生活模様を取り込んだという点からも評価したいと思います。
3.式部さんが全文朗読を引き受けてくれた時から、私はこの常夏7・8の部分が一番の楽しみでした。見事に期待に応えていただきました。素晴らしいです。波乱万丈の物語が続きます。引き続きどうぞよろしくお願いします。
清々爺の格別のお薦めがあったので、今まで心の余裕がなく聞いていなかった(申し訳ありません)、式部さんの朗読を始めて聞かせていただきました。
1)近江の君の早口は、他の部分の速さと比べ、おかしく聞かせていただきました。
2)それにしても、式部さんの朗読は、すらすらと、かつ適度な情感が感じられ、素晴らしいと思いました。昔、小学校で国語の時間に、教科書を読まされ、間違えると次の人に変わる授業がありましたが、小生などオッチョコチョイで、1-2行で間違い交代しましたが、何だかどこまでも詰まらず、間違えず、読み通す素晴らしい女生徒がいて、誰だか名前は思い出せませんが、尊敬した(少し好きになった)記憶が蘇ってき、懐かしい思いになりました。
さて、本帖は、近江の君と言う、何となく身近に感じられる女性が出てきて、こっけいさもあり
素直でもあり、小生にはホットできる楽しい女性でした。卑しい育ちと言われてますが、貴族の中では下級だったという意味ですよね。一般庶民とは、生活ぶりも教養も全く違っていたと理解しました。正しいですか。
歌では、皆さんと同じく、
なでしこのとこなつかしき色を見ばもとの垣根を人やたづねむ
が興味深かったです。
丁度真夏に“常夏”が読め、爺が言うように、季節感を実感し味わえましたが、京都の夏は盆地で暑いです。それでも温暖化が進んで来、冷房の暑い廃ガスもなかった分、まして大邸宅で天井も随分高かったはずで、今のわが家よりは大分涼しかったのではと思っています。
ありがとうございます。
1.式部さんの朗読よかったでしょう。私はもうずっと尊敬しっぱなしです。折角全編載せてもらっているので名場面とか気になった場面とか復習もかねてピックアップして聴いていただけば源氏物語の味わいも深さを増すものと思います。どうぞ活用してください。
2.貴見の通り近江の君は貴族であることに間違いはありません。何せ父親が藤原の頭領内大臣なのですから。母の出自は書かれてませんが出産時偉いお坊さんを安産祈願に来させていることから母の父はそれなりの貴族であったろうと推測されています(p168)。一般女性とは全く違います。和歌も書も拙いながらやれているわけで無教養ではありません。そういう姫君がトンデモナイことを言いだすから面白いのだと思います。
3.夏の暑さですが私も源氏の六条院や内大臣の二条邸のような貴族の大邸宅では現代の家屋よりずっと涼しかったろうと思います。何せ日本の家屋は夏の高温多湿を如何に緩めるかに全ゆる工夫が凝らされたようですから。まあその分冬の寒さは堪えたと思いますが。。。
皆様、長い間留守をしてしまいました。
その間のコメント今日まとめて拝見して楽しかったです。
近江の君、私も大好きです。
天真爛漫、天衣無縫、純粋無垢
ありとあらゆる言葉で褒めてあげたいです。
氏より育ちとは言いますが彼女、氏は良いのですね。
どういう育ち方うをしたのかは解りませんがありのままの姿は憎めないですね。
物語の層を厚くしていて面白いです。
ずっと前から式部さんはこの場面どういう風に読まれるか私もとても楽しみにしておりました。
想像以上でした・・・
式部さん普段は早口なんですって?
ゆっくりと品よく会話されるのかしらと思っていました。
私は何かとせっかち、早口、おまけに声が大きい、近江の君以上かもしれません。
遅ればせながら「常夏」の歌をこの場で詠ませていただきます。
常の夏うすくれなゐの野辺に咲く
いにしへ偲ぶやまとなでしこ
色々と大変だったと思います。道しるべはいつものペースで進んでいますのでどうぞゆっくり追いついてください。気がついた所あれば遡ってでも書き込んでいただければと思います。
1.本ブログをフォローしていただいている皆さん、近江の君のフアン(理解者)が多いようで嬉しいです。平安時代の読者は笑い者にした(こんなのになってはいけないという悪い見本)のでしょうが、現代は価値が多様化してますもんね。少なくとも父内大臣のように笑い者扱いにすることは許せませんよね。
2.常夏の歌、ありがとうございます。夕顔の忘れ形見玉鬘のことをうまく詠んでいただけたと思います。「やまとなでしこ」がいいですね。
源氏が近江の君はじめ内大臣の娘らを評する言葉の中で
「底清く澄まぬ水にやどる月は、曇りなきやうのいかでかあらむ」
と言うのがありますが、これはキツイですね。源氏の素性を
思い知らされる一言です。 その後の近江の君の描写は
清々爺始め各位が“面白い、生き生きしている”と言われて
いますが、この一言の後では 道化そのものではありませんか。
それはさておき、この「常夏」もそうですが、玉蔓十帖は、
本筋を少し外れている、いわば、外伝みたいで
読む途中で色々想起したり調べたりする事が多く、
本編の内容を どんどん濃く・厚くしてくれます。そのおかげで
読むのに時間がかかって だいぶ 遅れて ふぅふぅ言っています。
(例えば、 式部さんのコメント「源氏と玉鬘の関係は
一歩間違うと、白河院とたま子(待賢門院璋子)の関係を
彷彿させますね」も気になって、NHK大河ドラマの俳優まで
チェックしたり、時間のかかること・・・・)
涼しくなったら catch-up しなくては!!
ありがとうございます。暑い中テニスもやっておられるのでしょうね。元気で何よりです。
1.さすが頭中将フアンの進乃君さん、源氏の言葉にカチンと来たようですね。分かりますよ。まあ当時雲居雁のことで源氏も内大臣にこのヤローと思っていたでしょうしねぇ。それと結局は玉鬘は内大臣の実の娘なんですね。玉鬘を自分のものにできない源氏としては夕顔との間に玉鬘という「お宝」を成した内大臣に嫉妬していたのではないでしょうか。近江の君への言辞は八つ当たりというか自嘲というか、そんな所だと思います。言い方が強烈なのは紫式部そのものなんでしょうね。
2.玉鬘十帖は外伝ですか、成るほど言い得て妙ですね。気になったところなど是非時間かけて調べまくってください。周辺知識が増せば増すほど源氏物語の読みは深くなると思います。
白河院と待賢門院璋子、「清盛」のキャストで言えば伊東四朗と檀れいですか。この二人はもう異常と言うか特殊と言うかまさかと言うかよくやると言うか、言いようがありません。虚実が取り混ぜられており何が本当かよく分かりませんが皇統もからむし保元の乱、源平の盛衰までみんなこの二人の関係に起因してるんですから。
官能作家渡辺淳一に二人を扱った「天上紅蓮」という小説があります。図書館にあるでしょうからパラパラと読まれたら面白いですよ。失楽園ばりの官能シーンを期待したのですがそれほどでもありませんでした。でも歴史を真面目に扱っていて好感が持てました。
じゃあ、涼しくなります。ペース上げて頑張ってください。
「天上紅蓮」ですか、すぐ読んでみます。
しかし、清々爺って、こういう本の名前がパッと出てくるのは
相当なものですね。
コメントに こういう “広がり”の紹介も 時々 して下さい。
PS テニスは 毎週、水、土 やっています。
「広がり」の紹介のこと承知しました。気がついたら書き込みます。
「天上紅蓮」読まれたら感想聞かせてください。