常夏(1) 釣殿で近江の君の噂を質す

「常夏」露置きてくれなゐいとど深けれどおもひ悩めるなでしこの花(与謝野晶子)

「蛍」G36年5月に続く6月、夏真っ盛りの六条院です。
p134 – 140
1.源氏、釣殿の納涼に近江の君の噂を質す
 〈寂聴訳巻五 p44 たいそう暑い夏のある日、〉

 ①東の釣殿で涼をとる源氏と夕霧
  →春の町だろうか? それとも夕霧と玉鬘のいる夏の町の釣殿だろうか。

 ②西川=大堰川から鮎を、近き川=加茂川から石班魚をその場で調理して差し出す。
  →まさか刺身ではなかろうに。塩焼きだろうか。
  →料理のことが出てくる場面この他に思いつきません。珍しい場面です。

 ③氷水(氷室から出してくる)・水飯
  →食生活は今と比較しない方がいいのだろう。

 ④内大臣の息子たちに落し胤のことを話かける源氏
  「いかで聞きしことぞや、大臣の外腹のむすめ尋ね出でてかしづきたまふなるとまねぶ人ありしは、まことにや」
  →いつの世にもスキャンダルめいた話は面白い。

 ⑤言葉を濁す内大臣の息子たち、追い打ちをかける源氏
  底清くすまぬ水にやどる月は、曇りなきやうのいかでかあらむ
  朝臣や、さやうの落葉をだに拾へ
  →「落葉」とはひどい言い方。何ともいやな源氏である。
  →遠い将来夕霧は「落葉」を拾うことになります。その伏線だとすると恐ろしい布石です。

 ⑥からかいながら内大臣を意識してあれこれ考える源氏
  →親族でも友人でも同僚でも一度こじれた人間関係を元にもどすのは非常に難しい。

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2 Responses to 常夏(1) 釣殿で近江の君の噂を質す

  1. 青玉 のコメント:

    時は炎暑の頃ですね。
    巻名「常夏」と言えばハワイをイメージしてちょっと困ってしまいます。

    料理(鮎 石班魚 水飯)のことは珍しいですね。
    以前ちらりと桐壺の所で帝が更衣亡きあと食事も進まなくなった場面の記憶があります。
    ものなどもきこしめさず、朝餉のけしきばかりふれさせたまひて、大床子の御膳などは、いと はるかに・・・(料理というより食事ですね)
    他には果物か御菓子の場面があったような・・・
    この時代どんな物を召しあがっていたのかとても興味があるのですが食べ物の事なんぞは下々の事なのでしょうかね?

    この場面、週刊誌的かつテレビのワイドショーを想像してしまいます。
    内大臣の息子たちを相手に痛烈な皮肉とからかい・・・
    憎々しげですが内大臣との友情関係はこじれたままなのでしょうか?
    「さやうの落葉をだに拾へ」源氏、天に唾することになるのではないかしら?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.「常夏」はハワイですよね。常夏=撫子=夕顔の遺児=玉鬘→巻名ということなので源氏物語読者じゃないと分からないと思います。

      2.そうです、源氏物語には食事の場面は殆どないと思います。あれだけ衣裳・着物のことについて格調高く書き上げているのに不思議です。今でこそ食文化は大切にされてますが当時はそれほどでもなかったのでしょうか。紫式部は調理などしたことなかったのでよく知らなかったのかあるいは食に興味がなかったのか。紫式部の個人的な問題なのか、よく分かりません。

      桐壷帝の食が進まない場面のご指摘ありがとうござます。他に重病人がみかんさえ食べられなくなって死ぬなんて記述がありましたね(藤壷の亡くなるところなど)。

      逆に今のTVでは食べ番組や料理番組のオンラッシュで聊か辟易としていますが。

      3.人を笑ってはいけませんよね。必ず報いは来るのでしょう。源氏よ、気をつけなされ!

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