胡蝶のまとめです。
和歌
47.花ぞののこてふをさへや下草に秋なつむしはうととく見るらむ
(紫の上) 秋好中宮への応答
48.橘のかをりし袖によそふればかはれる身ともおもほえぬかな
(源氏) 夕顔の面影、困った父親
名場面
46.春の日のうららにさして行く舟は棹のしづくも花ぞ散りける
(p46 物語中 最豪華絢爛たる遊宴@六条院春の町)
47.御衣どものけはひは、いとよう紛らはしすべしたまひて、近やかに臥したまへば
(p78 玉鬘へのけしからぬ恋情)
[「胡蝶」を終えてのブログ作成者の総括]
胡蝶を終えました。前半が六条院での春の大遊宴の様子、その後4月に移り玉鬘を巡る若公達たちの獲得競争の様子、そして源氏その人の玉鬘への煩悩の様子が描かれていました。
物語的にはどうということなくむしろ中休み的な感じです。平安王朝の雅な様子を「へえ~っ、すごいな、平和でけっこうなこと、でもさぞ遊び疲れるだろうな、、、」と同情半分、羨ましさ半分で思っておけばいいのでしょうか。
源氏の玉鬘への慕情告白については何ともよく分かりません。源氏の恋の遍歴について言えば4年前に斎宮の女御(秋好中宮)に恋情を訴え(@薄雲19)、続いて朝顔の君に迫ったがきっぱり拒否されています。その後しばらく治まってた源氏の恋愛偏執症もあの夕顔の忘れ形見がきれいに成長して登場したとなればまた発症せざるを得なかったということでしょうか。
さてその玉鬘を巡る話、五月雨と蛍の五月に続いていきます。
豪華絢爛、雅な平安貴族の日常をこれでもかというほど見せつけられてこの時代の世相が見えてきます。
やがては戦乱の世へ移り行く前の束の間の華やぎでしょうか?
これで玉鬘10帖の内3帖を終え後はどのような展開になることやら・・・
源氏の恋はまだまだエスカレートしていくのでしょうか?
おっしゃる通り平安貴族の雅な日常をこれほどまでに分からせてくれるのはこの物語あってのことだと思います。長い説明書きを読むよりストーリーの中で語られる方が現実味が感じられます。春の町での大遊宴、目に浮かびます。
平安時代とそして源氏自身の絶頂期、豪華絢爛たる貴族の優雅な遊び、こんな背景があってこの物語も書けたし成立したのだろうと、妙に納得した暢(当たり前ですが)。
一方、源氏の玉鬘への恋情と言い寄りには、猛暑の中読んでいるせいか、些か癖々とした暢でした。
歌では、
花ぞののこてふをさへや下草に秋まつむしはうとく見るらむ
と
思うとも君は知らじなわきかえり岩漏る水に色しみえねば
おじさんの恋が多い中、若者の恋心が出ているように思えて
が良かったです。
ところで、清々爺は、昨日徳川美術館に行ってますよね、そのうち機会を見つけ行きたいと思っています。また感想を教えてください。
ありがとうございます。
1.確かに源氏の玉鬘への言い寄りはチト暑苦しい感じですね。おっしゃる通り若者こそ大いに恋の炎を燃やして欲しいと思います。
→そんな読者の期待に応えるアッと驚く展開を紫式部は用意してくれています。どうぞお楽しみに。
2.昨日戻りました。徳川美術館のこと身辺雑記に書くつもりです。
源氏も36歳。
「(玉蔓を)他人と見なさむは、 いと口惜しかべう思さる。」なんて、
ひところの輝くようなハンサムボーイも すっかりオッサンに成り果て、
春の町の遊宴(清々爺によると 源氏物語の中で数ある
遊宴のシーンでこれがNo.1とのこと)の 煌びやかさも
今一つ空々しく感じます。
空々しいと言えば玉蔓のキャラも何か空々しいですね。
自分を持っていないマネキンみたいな感じがします。
でも、この感情移入しにくい完璧マネキン美女の玉蔓を
誰がどのように射止めるか? 出来れば 意外な人に
まさか? と言った結果になれば面白いですね。
しかし、こういう組立は (式部は)天才的に
巧いですね。
ありがとうございます。暑い中よく頑張って読み解かれていますね。
1.そうです。源氏も36才立派なオッサンです。いつまでも若くない。これから年をとるにつれ益々オジン臭くなっていきます。それが大河ドラマ源氏物語です。須磨返りで若い時の源氏しか知らない人には源氏物語の奥の深さは分からないと思います。紫式部は辛口の貴君も必ず満足させてくれると思います。期待して読み進めてください。
2.玉鬘は「感情移入しにくい完璧マネキン美女」ですか。誠に言い得て妙だと思います。「自分を持ってないマネキン」その通りですね。でも当時それは女性の美徳でもあったわけです。何せ16年九州の田舎で育った中の品の娘が今をときめく源氏に引き取られ六条院でお姫さまとして過ごす。言い寄る男性たち、妖しい振る舞いの源氏。万事に賢く振舞わねばやっていけません。その辺の賢さは天性のものでしょう。紫式部の作り出した傑作だと思います。
玉鬘物語は多少空々しい・白々しいところはありますが、それはそれ源氏最盛期を描く王朝絵巻として読んでいってください。