少女(31・32・33・34) 六条院の完成

p150 – 160
31.夕霧、進士に及第し、侍従に任ぜられる
 〈p167 さて大学に学ばれる夕霧の若君は、〉

 ①夕霧、放島の試みで合格(10人中3人)、秋にやっと五位に叙せられる。

 ②その後も雲居雁への想いは変わらず。文だけ密かに交し合っている。

32.六条院造営 式部卿宮の五十の賀の準備
 〈p168 源氏の君は、閑静なお住まいを、〉

 ①六条院の造営にかかる
  六条御息所邸(中宮のお里)に隣接する町を加えて計四町の大邸宅を造営する
  源氏のとてつもない財力

 ②式部卿宮(先帝の皇子・紫の上の父・藤壷の兄・王女御も冷泉帝に入内している)
  五十の賀を新邸宅で行おうと紫の上が考え源氏も賛成する
  
  →式部卿宮と源氏はどうも相性がよくない。なんとなくぎこちない。源氏物語の中では珍しい間柄ではなかろうか。
  →血筋の点からするともう少し緊密でもいいのにと思うのだが。式部卿宮の方が源氏を見下しているように感じるのだがいかがでしょう。

33.六条院完成する 四季の町の風情
 〈p170 八月には、六条の院の御造営がすっかり完成して、〉

 ①G35年8月 六条院完成(約1年かかった)

 ②六条院の様子 →名場面です。

  東南 春の町 紫の上+明石の姫君 & 源氏
  西南 秋の町 秋好中宮
  東北 夏の町 花散里 & 夕霧
  西北 冬の町 明石の君

  南の東は山高く、春の花の木、数を尽して植ゑ、、、、以降段末までの六条院の各庭の叙述は素晴らしい。音読すべきところだと思います。式部さんの朗読も素晴らしいですよ、是非お聞きください。

 ③今後この六条院が主要なる舞台になります。
  平面図や模型やらネットにも色々載ってると思います。
  
  本ブログでも12.9.10に 「六条院 - 源氏物語のランドマーク」 を載せてます、ご参考に。

34.御方々六条院に移る 紫の上、梅壺と応酬
 〈p172 秋の彼岸の頃に六条の院にお移りになります。〉

 ①8月完成
  9月彼岸 源氏・紫の上・花散里 入邸
  5、6日過ぎて中宮
  10月になって明石の君
   →女君四人の移り方にもそれぞれ意味合いがある。

 ②紫の上と中宮の春秋論争
  中宮 心から春まつ苑はわがやどの紅葉を風のつてにだに見よ
  紫の上 風に散る紅葉はかろし春のいろを岩ねの松にかけてこそ見め

  この二人は1才違いだが中宮が入内する前は紫の上が後見役であった。ライバル関係ではないと思います。この春秋論争は四季の町が季節に重きをおいていることを強調するため作者が考え出した仕掛けなんでしょう。でも面白いです。

カテゴリー: 少女 パーマリンク

5 Responses to 少女(31・32・33・34) 六条院の完成

  1. 青玉 のコメント:

    夕霧、勉学の甲斐ありやっと浅緑から抜けることができ良かったです。

    式部卿宮の五十の賀、紫の上の実父に対する思いやりでしょうか?
    それとも勝者の恩着せでしょうか?
    ちょっと読みとりにくいです。式部卿宮は好きになれない人物です。

    構想だった一年がかりの六条院の完成。
    贅を尽くした四季の町、東西南北にそれぞれの姫君を配す。
    こういう発想はどこから来るのか並みの人間には想像もできません。
    源氏生涯でもっとも栄華を極めた場面でしょうか。

    改めて式部さんの朗読を聞き直し清々爺さんの過去の六条院ランドマークを読みなおしてみました。
    昨日、進乃君さんが舞台の設定をコメントしておられましたが、もしこの六条院ハーレムを舞台化するとしたら一体どんな舞台になるのかしらと想像をたくましくしましたが現実感がわきません。
    それぞれの御方の六条院へのお引越し、
    さてこの六条院ではどのようなお話が展開されるのか楽しみですね。

    春秋論争、えっと思いました。
    後の「胡蝶」でもそのような場面があった気がして争いなのかと思ったりしましたが・・・

    巻名「少女」は五節の舞姫とのことらしいですがこの巻、私には雲居雁の残像が強烈で和歌はやはり雲居雁(少女)を詠みたいと思います。
    清々爺さんも巻名は「雲居雁」の方がいいとおっしゃいましたが私も賛成です。
    晶子さんも雲居雁を詠まれておりますものね・・・

         筒井筒思ひ思はれ少女子よ
            幼き恋のけなげなるかな

    迷いが多くあまり芳しくありません。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.私もここで式部卿宮の五十の賀のことが出てくるのは不思議に思いました。しかも紫の上の発想として。この父娘互いに思いやるようないい関係ではなかったと思います。式部卿宮の述懐もすっきりしてないし(娘の栄達を喜ぶより妬み、自分に栄華が及ばない恨みの方が強く感じられます)。まあここは源氏・紫の上で大人の対応をしたということでしょうね。
       →そして六条院完成後も結局はこの五十の賀のことは出てきませんからね。
       →式部卿宮 源氏+15才であることがここで分かります。

      2.六条院の舞台、いいですね。今後ずっとこの六条院、取分け紫の上の住む春の町が物語の最重要舞台になります。ここで数々の名場面が演じられます。楽しみに読み進めましょう。構造を頭にしっかり入れておきたいのですがボンヤリとしか入りません。机の前に貼っておけるような大きなカラフルな六条院(春の町だけでもいい)平面図でもあるといいのですが。そんなの作っても誰も買わないからないでしょうね。

      3.少女の歌、雲居雁を詠んでいただき大拍手です。ありがとうございます。素直でいい歌だと思います。伊勢物語も思い浮かびます。私は雲居雁も好きな方です(大宮が可愛がった素直な女の子というイメージです)。

    • 清々爺 のコメント:

      追伸です。

      1.春秋論争、まあ互いに挨拶がわりの歌の応酬というところでしょうか。でも中宮の歌は明らかに論争を挑んでおり、対する紫の上の歌も受けてたってますよね。その続きが春の胡蝶の巻ということになります。どの季節が一番いいのか私たちもよく議論してますもんね。いい国に生まれたものです。

      2.進乃君さんのコメントも読んでいただいておりありがとうございます。どうぞ進乃君さん・ハッチーさんのコメントにも気軽に直接回答してあげてください。爺のレスポンスより喜ぶと思いますよ。

  2. 式部 のコメント:

    源氏の不遇時代(須磨・明石)に式部卿宮が冷たかったことがずっとお互いの心の中にあって、そのこだわりでしっくりいかないのでしょうか。
     なまじ兄弟・血縁であることがよけい関係を難しくしているのだと思います。
     源氏は根に持つタイプですからねえ。

     春秋論争であらわされる中宮と紫の上の関係は好ましいものです。
     これぞ王朝貴族女性の優美、優雅なくらしの一面だなと、うっとりします。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.ホント源氏は根に持つタイプですよね。紫式部もそうなんでしょう。その点同じ式部でもウチの式部さんはさっぱりしてますからね。

       式部卿宮にとって紫の上は妾腹の娘、宮は初めから紫の上に可愛さを感じてませんね。それに北の方がアレコレ感情丸出しでややこしい。この人これからも益々ややこしくなりますね。でもこの北の方もなくてはならない性格派の登場人物なんでしょう。

      2.おっしゃる通り二人の春秋論争は季節への感性とそれに対する表現能力を競い合う優雅なものだと思います。これは女性でなくてはダメでしょうね。源氏と頭中がやっても面白くもなんともないでしょう。

コメントを残す