薄雲(10・11・12) 藤壷重態に

p188 – 196
10.源氏、明石の君の心用意を重んじいたわる
 〈p28 大堰では、たいそうのどやかに、〉

①明石の君、ますます好ましい女性に成長していく。源氏も立ち去り難い。
 「夢のわたりの浮橋か」
  →奥入(定家の注釈書)世の中は夢のわたりの浮橋かうち渡りつつ物をこそおもへ
  →定家 春の夜の夢の浮橋とだえして峰にわかるる横雲の空

 ③近きほどにまじらひては、なかなかいとと目馴れて人侮られなることどももぞあらまし、たまさかにて、かやうにふりはへたまへるこそ、たけき心地すれ

  →明石の君の達観(賢さ)、花散里のバランス感覚に似ている

 ここまでが明石物語

11.太政大臣薨去 源氏ねんごろに弔問する
 〈p30 その頃太政大臣がお亡くなりになりました。〉

 ①突然、簡単に太政大臣(昔の左大臣=源氏の岳父)死んでしまう(享年66才)

 ②源氏が政治の前面に追い出される。太政大臣の法要・法事も源氏が取り仕切る。

12.天変地異しきり 藤壷の宮、重態に陥る
 〈p31 その年は一体に世の中に変事が多くて、〉

 ①G32年天変地異しきりに起こる(日食・月食・彗星)
  変事が続くと源氏の心には藤壷との秘事が蘇る。不安に感じる。

 ②藤壷(37才厄年)重病に陥る 冷泉帝が三条宮に藤壷を見舞う
  →藤壷が出家してるので宮中におれず里(三条宮)に下がっている。母と子なのに普段は冷泉帝には会えない。
  →藤壷は源氏の無体の所為で出家した。必死に仏事に勤しみ罪業を悔いる藤壷だが死後成仏できるか不安に想っている。

 ③高き宿世、世の栄えも並ぶ人なく、心の中に飽かず思ふことも人にまさりける身
  →藤壷の我が身の述懐、可哀そう

 ④厄年なのに厄払いなど行われていない。
  →源氏は何をしていたのか。出家してて手出しできないとて放っておいたのか。そりゃあないでしょうに。  

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2 Responses to 薄雲(10・11・12) 藤壷重態に

  1. 青玉 のコメント:

    月に二度ほどの逢瀬というのはお互い良い関係を保てるのかも知れません。
    毎日会えばどうしても我がままや自我が出るものですが適当な距離はかえって新鮮でお互いを気遣えるのだと思います。

    太政大臣、しばらくご無沙汰でしたが亡くなられたのですね。
    亨年66歳、この時代では長寿と言っていいのでしょう。
    この大臣も「葵」存命中は色々婿殿のことでは悩み多い日でしたね。
    憂き目にも逢われましたし・・・

    そして今度は藤壺の重態、こうも立て続けにどうしたことでしょう。
    天変地異有り、藤壺の苦脳、何だか不安な様相を予感させる場面ですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      太政大臣(左大臣)、藤原の頭領格の大物の薨去です。源氏が主人公のお話でないなら当然自然の成り行きとして娘葵の上を東宮(朱雀帝)に入れ、皇子が生まれ天皇となれば外戚として政治の実権を握る、、、絵に画いたように頂点に登りつめることができるポジションにあった。なのに、源氏に葵の上を娶せその葵の上も女盛りに亡くなってしまう。人生思うに任せられないってことを如実に語るための象徴みたいな役割でしょうか。

      私は子ども(頭中・葵の上・婿の源氏)思いのそして孫(夕霧)思いの左大臣・大宮夫婦が大好きです。

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