薄雲のまとめです。
和歌
37.末遠き二葉の松にひきわかれいつか木高きかげを見るべき
(明石の君) 明石の姫君、二条院へ
38.入日さす峰にたなびく薄雲はもの思ふ袖に色やまがへる
(源氏) 藤壷を痛惜しての絶唱
名場面
35.声はいとうつくしうて、袖をとらへて「乗りたまへ」と引くもいみじうおぼえて
(p178 大堰邸での子別れ)
36.灯火などの消え入るやうにてはてたまひぬれば、いうかひなく悲しきことを思し嘆く
(p198 藤壷の宮 崩御)
37.そのうけたまはりしさま」とてくわしく奏するをきこしめすに、あさましう
(p204 夜居の僧都、秘密を奏上)
38.見たてまつらぬこそ口惜しけれと、胸のうちつぶるるぞうたてあるや
(p216 斎宮の女御に恋情を)
[「薄雲」を終えてのブログ作成者の感想]
薄雲、いかがでしたか。随分色々と展開があり面白かったと思います。前半は大堰の子別れそして後半が藤壷の薨去でしょうか。それぞれに興味深いコメントをいただき読みが深まったと思います。ありがとうございました。
明石の姫君が紫の上の手に預けられる。紫の上・明石の君・明石の姫君の三者関係が今後どう展開するのか明石物語は頂上に向け進められます。
一方藤壷と左大臣の薨去は最初からの物語に大きな区切りをつける出来事だと思います。そして冷泉帝が秘密を知り、冷泉帝が秘密を知ったことを源氏が知る。でもこの秘密は二人だけのもの(僧都と王命婦を除き)。何ともすごい物語を書いてくれたものです。
さて、次は若干寄り道的ですが朝顔の姫君とのお話です。何れにせよこの高貴なお姫さまも決着をつけておかねばなりませんからね。
冒頭、明石の君の子別れに始まり明石の君で閉じる、この「薄雲」、物語の運びが上手く出来ていますね。
不安に始まり安堵で閉じる、読者の反応をよく心得ていると思います。
その間に重要な出来事を挟み込み、更に読者を飽きさせることなく展開させていく、大したものです。
紙面を大きく占めているのは明石の君の子別れの場面で歌に詠みたいと思いましたが巻名からやはり藤壺崩御にしました。
これでテキスト5冊終わりましたね。
6冊目までしかテキストがないのに気付き先日アマゾンで7~12迄を取り寄せた所です。
では明日から「朝顔」よろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
1.おっしゃる通り実にうまく筋を運んでいますよね。そのままTVの連続ドラマの手法だと思います。脚注にも首尾照応とありますが紫式部はこういう理詰め計算詰めの書き方が大好きであり得意なんでしょう。
2.「松風」はそっくり明石の君の物語でしたからこの薄雲は藤壷崩御でいいと思います。いい歌を詠んでいただきました。
そうですね、これで16冊中5冊終了です。早いものです。中盤戦にさしかかったところでしょうか。中だるみしないよう張り切って読み進めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
物語が、いろいろ展開し、面白く読めた薄雲でした。
冷泉帝が年の割には落ち着き、冷静すぎて、これからどんな成長をするのか不安に感じます。
さて、爺が書いてくれていますが、明石の姫君との別れ
声はいとうつくしうて、袖をとらへて「乗りたまへ」と引くもいみじうおぼえて
(p178 大堰邸での子別れ)
末遠き二葉の松にひきわかれいつか木高きかげを見るべき
娘との悲しい別れと娘の今後への希望、親心をうまく読んだ歌と思いました。
舟とむるをちかた人のなくはこそ明日かえりこむ夫と待ちみめ
この歌も紫の上の複雑な心持、恨みと恋心が歌えていると思います。正しいですか?この歌に対する源氏の返歌も読んで、恋の勝負はさておいて、権力・金力、すなわち力に勝る源氏が圧倒的に好き放題していると思いました。
それに、これも当然爺が挙げてくれていますが、
灯火などの消え入るやうにてはてたまひぬれば、いうかひなく悲しきことを思し嘆く
入日さす峰にたなびく薄雲はもの思ふ袖に色やまがへる
もお気に入りです。コメントし、爺から返信ももらいましたが、考えてみると
人聞かぬ所なればかひなしの結びが効いていますね。
次の帳が楽しみです。
ありがとうございます。
頑張って読んでおられる様子がコメントでよく分かります。その調子です。行きつ戻りつ何度も考えながら読んでると色々と見えてくると思います。完璧を期す必要はありません(源氏読みに完璧などないでしょう)。できる限りで十分だと思います。
1.沈着冷静な冷泉帝、(恋の道で)ハチャメチャだった源氏とエライ違いですね。まあ聖代を担う帝ですから仕方ないですかね。
2.舟とむるをちかた人のなくはこそ明日かへりこむ夫と待ちみめ
紫の上の恨みと恋心ですか、なるほど。そもそも源氏と女君との恋は勝負になりません。特に紫の上は境遇的に源氏の言うままでしかあり得ません。でもその源氏もいつまでも若くない、さてどうなるかはお楽しみに。
そういう中で紫の上の上記の歌は「帰って来ないでしょうね」と皮肉っぽく言いながら裏は「帰って来て欲しい」と切実に訴えているのでしょう。それが分かるので源氏の返歌は「向うがダメと言っても帰ってきますよ」と嘘になるかもと思いつつ返しているのだと思います。両者の気持ちが錯綜している歌の贈答だと思います。
(初めての全帖通読にて)帖の名称がどこから来たかを“気付く”のも
楽しみの一つですが、「薄雲」は藤壺の宮の崩御の語りからだったのですね。
『夕日はなやかにさして、山際の梢あらはなるに、雲の薄くわたれるが、
鈍色なるを、何ごとも御目とどまらぬころなれど、いとものあはれに思さる。』
この歌の“鈍色”が上手いですねぇ。
鈍色=喪服の色、(式部の)凄い色彩感覚に 感服です。
冷泉帝が秘密を知るくだりは とても舞台的です。そのうろたえぶりに
「主上のくせに!」と思ったのですが、清々爺のコメントで冷泉帝は
この時、14歳と言うのをremindされ、納得。うろたえる若き帝が
これまた とても 舞台的で素敵でした。
ありがとうございます。
初めての全帖通読でしたか、お疲れさまです。中々読みごたえがあったのじゃないでしょうか。どうぞその調子で読み進めてください。少し日にちをおいて新しい帖に入る時はざっと前帖までを振り返って立ち位置を確かめてから入るのがいいと思います。
1.藤壷崩御、不意打ちをくらったようで源氏もショックだったと思います。色に注目、鋭いですね。源氏物語は場面場面が色でイメージされる物語と言ってもいいかと思います。紫式部の鋭いそして論理的な色彩感覚です。
喪服は薄墨色→今年ばかりは墨染めに咲け
たなびく雲が夕陽で紫がかっている。
→紫は藤壷の色、紫雲は仏が迎えに来るときの雲
源氏が薄雲を見て藤壷を偲ぶ、本帖を象徴する歌と言えるでしょう。
2.冷泉帝が出生の秘密を知る場面、舞台的ですか。なるほど、面白い捉え方ですね。勿論冷泉帝はショックでうろたえたと思いますが、私はむしろよく堪えて立派だと思いました。私なら取り乱して泣きわめいていたのじゃないでしょうか。確かにこの場面舞台にしたら面白いかもしれませんね。