p206 – 214
16.冷泉帝煩悶し、源氏に譲位をほのめかす
〈p42 帝は悪夢のようなただならぬ恐ろしい一大事を〉
①冷泉帝の煩悶 この年で出生の秘密を突然知れば当然であろう。
父桐壷のこと母藤壷のこと源氏のこと、今までのことが頭を駆け巡ったことだろう。
②冷泉帝は源氏のことをどう思ったのか。
→実父と知って直ぐに肯定できたのだろうか。不実な男として反発はなかったのだろうか。
③譲位をほのめかす冷泉帝。とんでもないと言い聞かせる源氏。
17.帝、皇統乱脈の先例を典籍に求める
〈p45 帝は、王命婦に詳しいことをお尋ねになりたくて、〉
①帝は密通の先例を調べる。源氏に聞きたいがそれはできない。自分で調べる。
唐土には多い。日本には正式にはない。
→この辺微妙である。脚注14の解説をよく読んでおきたい(業平が出てくる)。
②一人で漢籍を必死に読んで先例を調べる。
→冷泉帝はよくできた人だと思う
③事実と史実
秀吉 X 淀君 = 秀頼 のことが思い浮かぶ
18.源氏、帝意に恐懼 秘事漏洩を命婦に質す
〈p46 秋の司召しには、源氏の君を太政大臣に〉
①秋の司召で源氏、太政大臣に。この時冷泉帝は自分が秘密を知ったことを源氏に漏らす。
→どのように言ったのであろうか(書いて欲しかった)。
②暗黙の親子の名乗りの場面
→帝位はそのままで(源氏が実父であることを二人の暗黙の了解として)二人で国事を行っていくことで落ち着いた。妥当な着地点であろう。
③源氏、王命婦に間接的に問い質す。王命婦は藤壷は漏らしていない(まして私をや)と答える。
→源氏は僧都が密奏したとは考えなかったのだろうか。もし僧都の密奏を知ったらどうしたのだろう。
冷泉帝が事の真相を知ることになる場面、物語の構想としてはどうしても必要で僧都の密奏とはよく考えたものだと思います。
作者が王命婦(女房)ではなく、僧都に事実を語らせたところが面白いですね。一般的にはおしゃべり女房と尊い僧のイメージがありますものね。平安時代の認識では、 僧都といえども天変地異や帝への天罰を考えると黙ってはいられなかったのでしょうか。
帝と源氏との暗黙の了解のもと、源氏は後世の院政のような絶対権力を実際上は手に入れていったのでしょうね。
紫式部の第2部へと進む長大な構想の上に必要なことだったのでしょう。 落差が大きいほど物語はますます面白くなっていきますね。
ありがとうございます。
王命婦でなく僧都に事実を語らせた、、、う~ん、なるほど、面白い。
僧都の言葉&脚注を読み返してみました。おっしゃるように僧都はこの事実を帝に告げないわけにはいかなかったのかも知れません。僧都が秘密を墓場まで持って行けば帝はこれまで通り源氏を一臣下として扱う、それでは帝が実父に孝を尽すことにならずひいては国を過つことにもなりかねない。源氏や藤壷が地獄に落ちるのは自業自得で仕方ないが、帝に災難が降りかかることは絶対に避けなければならない、、、そういう理屈だったのですね。納得できます。
何れにせよ皇統の乱れというタッチーな話なので紫式部も気を使って書いてますね。話の進め方としても上手いなあと思います。
僧都の奏上にそこまで深い意図があったとは単純な私には理解が及びません。
何やら私には僧都が憎らしくて私憤に耐えません。
でも物語の展開としてはそうしないと成り立たないし、ここは紫式部の手腕ととらえることにしましょう。
帝は誰にも打ち明けることなく単独で過去の皇統乱脈の例を調べ唐土の事にまで及ばれる、全くお若いのにその心構えに感服します。
悪夢のような出来事に14歳の若き帝の苦脳の深さ、また臣下と思っていた父、源氏への思い、重すぎる試練です。
ありがとうございます。
1.当時僧侶(僧都他)はどんな階級にも尊敬されていたのだと思うのですが、どうも紫式部の書き振りは僧侶に厳しいように思います。けっこう茶化したりしてて「すごいなぁ、偉いなぁ」と思うより「何だこれは」と思う方が多いようです。この薄雲の僧都もそうだし、末摘花の兄の禅師なんてのもいましたね。
2.冷泉帝のショックは計り知れません。今まで信じてきた人間関係が突然否定されしかも秘密は誰にも打ち明けられず相談もできない。冷泉帝の悩みは想像を絶するものだったと思います。
出生の秘密は源氏物語最重要のテーマの一つで第一部の冷泉帝、第二部&宇治十帖の薫と続きます。これも楽しみです。