「薄雲」さくら散る春の夕のうすぐもの涙となりて落つる心地に(与謝野晶子)
薄雲の巻、前半は松風の巻に続き明石物語が展開されます。後半は一転して紫のゆかりのメインストーリーになります。重要であり面白い巻です。
ポイントは、
①明石の姫君、二条院へ(大堰の子別れ)
②藤壷崩御
③僧都の秘事奏上
④冷泉帝の動揺
⑤源氏、秋好中宮へのあやにくなる想い
でしょうか。それでは参りましょう。
p168 – 172
1.源氏、明石の姫君を紫の上の養女に望む
〈寂聴訳巻四 p10 冬に入るにつれて、〉
①G31年冬 松風巻末からの続き
②源氏→明石の君 必死に説得する
いっしょに二条院に来なさいよ、
ダメというなら姫だけでも。
紫の上は子ども好きで決して悪いようにしないから、、、
③紫の上(23才)は前斎宮(22才)を養女として世話している。
→紫の上の人柄の良さ、思いやりの深さ、面倒見のよさ
2.明石の君、その是非の判断に悩む
〈p12 「ほんとうに前々は、どういうお方だったら〉
①明石の君、思い悩む
この心内は一々ご尤もだと思います。
可愛い子ども、離したくない。でも離すのがこの娘のため。でも離したら源氏はもう来てくれないかもしれない。
②この局面では姫君は明石の君にとって切り札。手放すと自分の立場は弱くなると考えてしまう。
→無理もなかろう。
3.尼君、姫君を紫の上に渡すことを勧める
〈p13 母尼君は思慮深い人でした。〉
①この思い悩む場面での尼君の分析と判断が素晴らしい。
長い口上は誠にもって説得力に富んでいる。
②明石の君は父明石の入道と母明石の尼君のいい所を持って生まれてきたように思う。それに生まれつきに加えて素晴らしい教育を受けているがこれも皇族出身で教養高い尼君の教育に依るものだろう。
明石の君、姫君を手放すまでの心情、苦悩はいかばかりだったことでしょう。
千々に思い乱れる心・・・・・
手放す決め手となったのはやはり姫君の行く末、将来を考えてのことが一番だったでしょうね。
尼君の助言も大きかったでしょう。冷静かつ説得力ある判断ですね。
わが身の事のみを思えば当然姫を手元に置いて養育したかったでしょう。
源氏の訪れも姫がいてならばこそですもの。
明石の君の苦渋の決断に同苦すると共にその健気な決断によくぞ・・・と応援したくなります。
ありがとうございます。
明石母娘を先ず都に近づける(大堰に)のが第一段階。次が姫君を引き取るのが第二段階。そして明石の君を手元におくのが第三段階。この何れにも明石の君の同意と紫の上の納得が要る。源氏はとても辛抱強いと思います。決して強権的に事を進めることはしない。情況と相手の顔を見ながらジワジワと言葉巧みに押したり引いたりしながら結局は自分の思うような結果に導く。。。。商社マンの鑑ですなぁ。