p168 – 180
17.源氏、明石の君と琴を弾き別れを惜しむ
〈p145 御出発はいよいよ明後日という日になって、〉
①別れを前に明石の君としみじみ語らう。
さやかにもまだ見たまはぬ容貌など
→契りを交してもう一年になるのにまだ明石の君の姿をはっきりとは見ていない。
これまでは忍んで深夜に来て明るくなる前に帰っていたのであろう。
②いとよしよししう気高きさまして、めざましうもありけるかなと見棄てがたく口惜しう思さる
→明石の君の高貴さ美質がわかってくる。都に連れ戻すことを決心する。
→明石の君が懐妊していたことも大きな要素であろう。
③源氏が京より持参した琴の琴を形見に(質草に)置いていく。
琴をネタにして歌を詠み合う。明石の君の素晴らしさを実感する。
18.源氏明石の浦を去る 明石一族の悲しみ
〈p149 御出立の明け方は、〉
①夜明け早々(或いは夜明け前)に出立する。
②良清の心中が述べられる。→明石の君の身分の程度が繰り返し強調される。
③入道の思い。
娘は源氏と契りを交し子どもを宿した。源氏は晴れて中央に復権する。
万事願った通りである。誠にめでたい、嬉しい。
でも源氏とはこれが最後、もう二度と会えまい。
入道は心を尽くし財を尽くして源氏帰京の準備をする。そして別れの朝、、もう取り乱して訳も分からない。→誇張された表現が面白い。
かひをつくる =べそをかく(口をへの字に曲げる=蛤の形)
④明石一族は入道も尼君も明石の君もそれぞれに源氏にこのまま見捨てられてしまうことの不安を抱き、悲しいながら源氏を見送ったのであろう。
明石の君の容貌、美質に満足しながら形見の琴を前に和歌を詠み合う。
明石の君にとっては今生の別れとも思えたことでしょう。
あわただしい夜明けの別れ、入道の心映え、気遣いの立派さがよくわかります。
形見の装束を遺しお互いの愁嘆が見えるようです。
特に入道の子どものような別れの表情。
「かひをつくるもいとほしながら」の表現にはなるほどと納得でした。
源氏が去り残された明石一族の嘆きように胸の痛む思いです。
やはりここでも親心ゆえの闇が出てきましたね。
夫婦の諍いまで起きる混乱ぶりです。
ありがとうございます。
明石の入道、本当に人間味がありますね。確かに偏屈なのでしょうが情に厚く涙にもろいストレートな人だと思います。中央で成功しなかったのは余りに正直過ぎたせいかもしれません。
お腹に子どもをかかえた娘と父と母。この場面は一人娘の幸せを願う家族の物語じゃないでしょうか。この家族は互いに分かりあい明日を目指す愛情深い素晴らしい家族だと思います。橋田壽賀子か向田邦子に脚本を書いて欲しいなあと思いました。
ほんとうにそのとおりだと思います。源氏物語全編のなかで明石一族の家族愛、親子愛、夫婦愛は一番すばらしく、現代に置きなおしてみても納得できます。 これは特に明石入道の人間性がもたらしたもので、私が明石入道大好きな理由のひとつです。
私も読み返す度に式部さんが「明石の入道、ゼッタイ!」って叫んでいた気持ちが分かるようになってきました。入道の長口舌、これからも何度も出てきます。朗読楽しみにしています!