明石(10・11・12) 源氏 vs 明石 恋のかけひき

p144 – 154
10.源氏、入道の娘に文を遣わす 娘の思案
 〈p123 入道は願いがどうにか叶えられたという気がして、〉
 
 ①源氏が明石の君に粋を尽くした和歌を贈る。(どんな返歌が来るか期待いっぱい)
  明石の君は畏れ多くて返事できず入道が代筆(そりゃあないだろう)
  再び贈る。返歌くる。
   思ふらん心のほどややよいかにまだ見ぬ人の聞きかなやまむ(明石の君)
   →明石の君からの最初の歌。機智に富んだ返歌に源氏はいたく感じる

 ②源氏と入道(明石の君)とのかけひき(心くらべ)
  源氏は娘に来させたい(召人的に扱える)
  娘は源氏に通わせたい(召人などでは困る。キチンと奥様の一人にしてもらわねば)

 ③この段に明石の君を形容する詞として「思ひあがりたる」が二度出てくる。
  広辞苑を引いてみると「(平安時代にはきりっとした態度で高貴性を保持しようとつとめることを意味した)①心に誇りをもつ。自負する。②うぬぼれる。つけあがる」と書かれている。

  →賢木冒頭の与謝野晶子の歌 
   五十鈴川神のさかひへのがれきぬおもひあがりしひとの身のはて
    与謝野晶子の言う「おもひあがりしひと」もそういうことでしょう。
    浅学にして理解が届かなかったようで晶子さんにはお詫びしたいと思います。

11.朱雀帝、桐壷院の幻を見て目を病む
 〈p129 その年、朝廷では、〉
 
 ①明石から舞台は京に転じ何が起こっているかが語られる。
  ・3月13日桐壷院、朱雀帝の夢枕に立つ。睨まれて目を患う。
  ・右大臣(太政大臣)亡くなる(唐突ではあるが)
  ・弘徽殿大后(大宮)病気、弱っている

 ②朱雀帝は気弱に源氏を許したい旨弘徽殿大后に打診するが、大后は突っぱねる。
  罪に怖ぢて都を去りし人を、三年をだに過ぐさず赦されむことは、世の人もいかが言ひ伝へはべらん
    →誠に道理であります。政治的強さを持った人だなあと感心しきりです。

12.入道の娘や親たち思案にくれる
 〈p130 明石では、いつものように、〉

 ①10.で明石の君と歌を贈答しあってから大分経ったのであろうか。秋(七八月)になっている。源氏と明石の君との恋のかけひきが続いている。来させたい源氏 vs 来てもらいたい明石の君

 ②明石の君の心内が語られる。
   →誠にまともで正直な考えで納得させられる。

 ③明石の入道・尼君も同様思い悩んでいる。かくて次の展開への機が熟しつつあるのです。

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2 Responses to 明石(10・11・12) 源氏 vs 明石 恋のかけひき

  1. 青玉 のコメント:

    娘へのラブレターの返事を父親が代筆するなんて聞いたことがないですね。
    入道よほど娘の態度にじれていたのでしょうか?ちょっと滑稽。

    「思ひあがりたる」の所すでにチェック済み、そうです、「賢木」の晶子の歌で御息所のことについて色々意見が出ましたね。
    晶子の歌は素人には誤解を招きやすいと思います。
    ここの所はすごく勉強になりました。

    次に右大臣家にかげりが見えてきます。
    朱雀帝と言う人は何かと意志が弱く人の意見に紛動されやすい人ですね。
    故院の遺言に背いた引け目があるのでしょうか?
    それにしてもちょっとね・・・大后の血が薄いのかな?

    明石の君もそれなりの(御息所ほどの思ひあがりではないにしても受領の娘なりの矜持)誇りを持った人で好もしく感じます。
    和歌も優れていると思います。
    身の程弁えた明石の君に対し源氏は逆に身の程知らずと感じる・・・受領の娘の分際でという源氏の優越感と同時に何でも思いのままになると言う、うぬぼれが見えますね。

    さてこの恋の駆け引きの行方や如何に?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      明石の君、おっしゃる通り好ましい人柄と思います。誇りは持ちつつ身の程は弁えている。人としてこのバランスが一番難しく往々にしてバランス崩れの「ゴメンして」という人が多いですからね(まあ源氏はオールマイテイだからよしとしませんか)。

      どうしたらこんな田舎でこのように素晴らしい女性が育つのか。後の玉鬘もそうですが教育との絡みで考えていきたいと思います。

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