p202 – 212
33.源氏、朧月夜と密会 右大臣に見つかる
〈p306 その頃、朧月夜の尚侍の君は、宮中からお里に退出なさいました。〉
①一転して風俗小説です。朧月夜が登場するとぐっとトーンが変わり楽しくなります。
(丸谷才一)風俗小説的な面白さという点でいうと源氏物語中、随一の場面かもしれません。
②普段は宮中にいる朧月夜(尚侍の君)が病で里(二条の右大臣邸)に滞在している。
ここぞよしと源氏は 夜な夜な対面したまふ
→相手は病上がり、場所は右大臣邸。そんなところに毎晩通うなんて、、、。私にはコメント不能です。
③頃は夏、夕立雷。今でいうゲリラ豪雨でも来たのだろうか。設定が絶妙。
④右大臣登場。この人誠に面白い。この早口を式部さんの朗読はどう読むか、ものすごく楽しみです。
(物語中 舌疾はこの右大臣と後に出てくる近江の君)
⑤雷鳴りやみ、雨すこしをやみぬるほど、大臣渡りたまひて、、、、、
からこの段の終わりまで何度と声を出して読むといいと思います。分かり易いし面白さ抜群です。
⑥共寝のところに踏み込まれた場面は先の紅葉賀源典侍のところはおふざけとして、他にはこの場面だけです。
右大臣はあわてふためいている。
源氏は居直っている。
朧月夜はきまり悪がっている。
三者三様の想いを読感してください。
34.大臣の報告を聞き、弘徽殿源氏放逐を画策
〈p309 右大臣は直情径行で、何事も胸に収めておけない御性分の上に、〉
①右大臣から弘徽殿大后に早口での長口上がある。とうとうと述べまくったのであろう。「大変だ!大変だ!大変だ!」って叫びながら駆け込んだのでしょうね。
②でも右大臣の口上、一一尤もだと私は納得なんですが。。。
③弘徽殿大后の口上・想いもさもありなんでしょう。政治的分析はさすがと思います。源氏須磨流謫への流れが見事に描かれていると感じます。
→源氏は藤壷との不義密通がバレるのではないかとの恐れからむしろ朧月夜とのことが露見することで自ら一旦政治の表から身をひく(須磨に流れる)ことを計算していた、、、、という見方も多いようです。
朧月夜とわらは病みの取り合わせがピンときません。
この女性のイメージは健康そのもののように思えるのですが・・・
夜な夜な対面したまふ。
こういうスリル満点の逢瀬が源氏にとっては格好の状況なのではないかしら?
そこへもって雷のゴロゴロも好材料。
読者の方もハラハラドキドキで面白いです。
右大臣の舌疾の所では源氏が左大臣と比較されて苦笑される場面はまだ余裕ですね。
その後の薄二藍なる帯の御衣にまつはれて引き出でられたるを見つけたまひてあやしと思す・・・以下、慌てふためく右大臣、源氏、朧月夜、三者三様の様子が手に取るようにわかり笑わせます。
右大臣が驚きのあまり深慮なく弘徽殿大后に報告。
のべつまくなくが災いして火に油を注ぐ、弘徽殿大后のご立腹、そして様々に画策と言うことでしょうか。
今回の場面は一気に読ませます。
さて今日で「賢木」終了、御息所、藤壺、朧月夜と内容があちこち飛びました。
それぞれに想いはありますが、やはり賢木という巻名なので歌は御息所に絞って詠みたいと思います。
みやこ草おもかげ抱き五十鈴川
哀れはるけき恋のみちかな
晶子の和歌から五十鈴川いただきました。伊勢といえば五十鈴川
ありがとうございます。
1.この段面白くて大好きです。ストーリーとしてはやや唐突ですがよくできてます。それにしてもいくら示し合わせていて手引き者・協力者もいたとはいえ婿でもないのに他人宅に毎晩のように入って行き夜を過ごすとは一体セキュリティはどうなってたのでしょうかねぇ。
私は源氏は見つかるのを覚悟して(予想して)逢いに行ってたと思っているのですが、源氏の心境の推移を推測してみると、
・右大臣入って来る 「おっ、来よったな。さてどうなることやら」
「何と早口な、左大臣とは違うなあ、、ウフフ、、」
・帯見つかる 「バレたらしょうがない、、じっとしていよう」
「娘が恥ずかしがるし、まあ踏み込んで来ることはあるまい」
・畳紙見つかり踏み込まれる「入って来よったか。居直るしかないな」
「せめて、顔を合わせることはやめておこう。無粋なヤツめ」
相変わらずふてぶてしい態度ですね。
2.賢木の歌、ありがとうございます。これで10首になりましたね。
おっしゃる通りこの巻は色々ありますが第一の主人公は六条御息所だと思います。伊勢と結びつけて五十鈴川を詠み込まれたの大賛成です。鈴鹿川じゃインパクト弱いですもんね。与謝野晶子の歌についての追加コメントは明日の投稿をご覧ください。
小生も、この段、好きです。特に朧月夜の形容が 好いですねぇ。
『いと盛りに、 にぎははしきけはひしたまへる人の、
すこしうち悩みて、痩せ痩せになりたまへるほど、いとをかしげなり。』
“にぎははしきけはい”とは、たぶん、派手~な色っぽいLOOKSと
思うのですが。青玉さんが“朧月夜とわらは病みの取り合わせが
ピンときません”と、どうも 同性に対する反感を 感じる コメントを
されていますが、「わらは」瘧、つまり「おこり」です。子供や、
思春期の女性にはよくある間欠熱。若さの裏表現です。
朧さん、この時、幾つですかね?
→ 源氏 今、25歳、「花宴」で朧さんと懇ろになったのは、
源氏20歳。一方、将来のダンナになる朱雀(幼稚園)帝は
この時、6歳(の筈)。どうも 朧さんの年が 分かりません。
いずれにしても、朧さんはカラッとしていて、それでいて
艶っぽくて、今まで登場の女性の中で 一番 好いですね。
この段、気に入ってもらえて嬉しいです(意見が合うというのは嬉しいものです)。
いつも元気印の朧月夜が瘧病にかかったというのも設定としてはいいですね。源氏物語では病気になってやつれるのも却って風情があっていいとする表現がよく出てきます。ここもそうです。
さて、朧月夜の年令記述は直接的にも間接的にもないので不明です。私は勝手に頭中の北の方四の君が葵の上と同じくらいで、その妹の六の君=朧月夜は源氏と同年齢くらいかなあと想像しています。
ところで朱雀帝(源氏の兄)は源氏+3ですから今28才です。
そして東宮(藤壺と源氏の密通による子)は7才です。
朧月夜は朱雀帝の後宮に尚侍として入っています。
整理してみてください。
進乃君さん、ご指摘ありがとうございます。
朧月夜とわらは病みの取り合わせですね。
わらは病みが子ども、思春期の女性独特のおこりで若さの裏表現であれば70近いお婆さんの若さへの羨望かもしれませんね。
私も朧月夜、なかなか個性的でいい女だと思います。
源氏を女性にしたような・・・ね。