賢木(26・27・28) 藤壷出家

p180 – 188
26.桐壷院の一周忌 源氏と藤壷の追憶の歌
 〈p287 藤壷の中宮は、故桐壷院の一周忌の御法要に引きつづいて、〉

 ①法華八講の準備。4日間連続朝夕で法華経全八巻を講説する。大変な仏事だったのだろう。

 ②源氏・藤壷で歌の贈答があるがこの辺で源氏は藤壷の出家の意志に気づかなかったのだろうか。まあ無理でしょうね。

27.法華八講の果ての日、藤壷出家する
 〈p288 十二月十余日ごろ、中宮の御八講が催されます。〉

 ①時はG24年12月 御八講の様子
  初日 藤壷の父(桐壷帝の前の帝) 二日目 藤壷の母 三日目 桐壷院(五巻の日)

 ②最終日に出家 世を背きたまふよし仏に申させたまふ
  横川の僧都(藤壷のおじ)登場 宮の内ゆすりてゆゆしう泣きみちたり 
   → ここは劇的な場面
    
   藤壷は出家を決意し御八講を企画し僧都にいいくるめて秘密裡に事を運んだ。連立方程式を解くには出家しかない。でも周囲にバレたら必ず反対される。源氏などはどんな手を使っても阻止しようとしたであろう。それを見事に実行した。藤壷って帝の皇女とは言えすごいウーマンだったのだなあと思います。

28.源氏、出家した藤壷の御前に参上する
 〈p290 故院の御子たちは、昔の中宮の御栄華のさまをお思い出しになるにつけても、〉

 ①源氏の恨み節。何て早まったことをされたのか。何故一言相談してくれなかったのか。
  源氏の心はいくつものWHY?で埋め尽くされたことであろう。

 ②源氏 月のすむ雲居をかけてしたふともこのよの闇になほやまどはむ
  藤壷 おほかたのうきにつけては厭へどもいつかこの世を背きはつべき

  こうなったら藤壷は強い。「もう私は出家したのだから東宮の力にはなれない。東宮はあなたの息子よ、あなたがトコトン面倒みるのよ」って心境だったのではないか。

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4 Responses to 賢木(26・27・28) 藤壷出家

  1. 青玉 のコメント:

    桐壺帝の命日には法華経全八巻二十八品を読誦されるとはすごいです。
    そりゃ4日間は裕にかかるでしょう。
    源氏はこの場に及んでも藤壺の出家には気づかない、宮への思慕しかないようです。

    厳かな御八講の最終日での出家の意志表示、そして落飾。
    御をじの横川の僧都近う参りたまひて御髪おろしたまふほどに、宮の内ゆすりてゆゆしう泣きみちたり。その驚愕、どよめきが伝わってくるような場面です。
    ここでの藤壺はこれまでにない強靭な意志で見上げたものです。

    源氏の胸中やいかに?茫然自失だったのではないでしょうか。
    お互いに子ゆえの闇に惑いながらも藤壺は後事をきっぱりと源氏に託す思いだったのでは?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.「源氏が人生でビックリした時ベストテン」を選んだら、藤壷出家はベストスリーには入るでしょうね。この時の源氏は危機意識がなかったと言うか見たくないものは見えないと言うか、、、。まあ現代の夫婦でも妻の切実な思いを分かろうとせず自分本位に終始した結果突然妻から離婚状をたたきつけられるケースはままあるようで、、、。要注意であります。

      2.出家について考えてみました。源氏物語は出家の文学であるとも言われるほど出家する人が多い。ざっとピックアップしてみると、

        ①藤壷 (@賢木) 源氏との男女関係を断つため
       ②六条御息所 (@澪標) 重病になったため
        ③空蝉 (@関屋) 紀伊守の言い寄りから逃れるため
        ④紫の上 (@御法) 生前では出家許されず死後髪を下ろす
        ⑤光源氏  物語には描かれていないが「幻」の後出家が定説
       ⑥朧月夜 (@若菜下) 朱雀院の出家に続いて、源氏との関係を断つこともあったろう
        ⑦女三の宮 (@柏木) これも源氏との関係を断つためか
        ⑧浮舟 (@手習) これこそ錯綜する男女関係を断つため

      以上ちょっと物語を先取りしてしまいましたが殆どが男女関係に悩み男女関係を断つために出家しています(正に西行の出家もそうですね)。逆に言うと男女関係に悩んでない人たち(末摘花・花散里・明石の君・源典侍)は出家など口にも出していません。

      そして出家した女性たちは仏道に真面目に励んでいるかどうかはともかく一様にスッキリした感じになっているのです(寂聴さんは出家した女は途端に源氏より優位に立つようになるという意味のことを言われています)。

      出家のことこれからも色々と出てきます。その時の参考まで。

  2. 青玉 のコメント:

    出家といえば私は寂聴さんのように頭髪を丸めるものとばかり思っていました。
    そうではなくて黒髪を肩のあたりで短く切りそろえられるのですね。

    守屋多々志画伯の源氏物語の日本画ではそのお姿が美しく描かれており私は見惚れております。
    先ずは若紫の巻での尼君。
    おばあさまとは言え、お若いこともあり短髪で薄紫の御衣のお姿が優美に描かれています。
    続いて藤壺の落飾、空蝉、朧月夜、女三宮の出家のお姿がそれぞれにえも言われぬ美しさなのです。
    毎晩、睡眠前に源氏物語の図録を見るのが楽しみの一つになっています。

    出家とは俗世との縁や男女間の性も絶つことと聞きますがこの美しさを思えば源氏ならずとも心動かされるのではないでしょうか。不謹慎でしたかしら?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      「尼削ぎ」というのですね。長い方がいいとされた女性の髪、肩までで切るというのは世を捨てたということになったのでしょうか。私はショートカット派なのでそちらの方がいいのですが。

      クリクリ坊主頭の尼さんは少なかったようですね。とするとドラマに出てくる頭巾をかぶった尼さんというのはチトおかしいのかも。でも尼削ぎでは区別がつきませんものね。寂聴さんも丸めないと訳分かりませんからね。

      紫の上の祖母の尼君と明石の尼君。誠に品よく書かれていますね。紫式部の仏道への尊敬の念が表れていると思います。

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