さて物語中有数な官能場面です。
p148 – 156
16.源氏、藤壷の寝所に近づく 両人の苦悩
〈p258 こうしたことがあるにつけても、〉
①源氏の藤壷への想いは続いている。桐壷院が亡くなり自制の歯止めがきかなくなっているのだろうか。藤壷としては春宮をバックアップしてくれてるという点では唯一の味方なのだが、バレることも恐れないかのごとく突進してくる源氏にはほとほと手を焼いたことであろう。
②源氏にとって三条宮は勝手知ったるところ、王命婦の手引きもなしで勝手に入りこむ。
夢のやうにぞありける
うつし心失せにければ
→情事を暗示
③途中藤壷の気分が悪くなる。源氏は下着だけで塗籠に隠れる。
王命婦・弁が源氏の脱ぎ捨てた衣服を持ってウロウロする。
→ちょっとコミック調でしょうか。
④源氏は隙を見て塗籠から抜け出し再び藤壷に迫る。
⑤「見だに向きたまへかし」と心やましうつらうて、ひき寄せたまへるに、御衣をすべしおきてゐざり退きたまふに、心にもあらず、御髪の取り添へられたりければ、いと心憂く、宿世のほど思し知られていみじと思したり。
→私が源氏物語絵巻を画かせるとしたら第一にこの場面でしょうね。若紫の巻のもののまぎれの叙述は抽象的でぼやっとしているのに対し、ここの描写はリアル。もう天皇の妃ではなくなってるから遠慮しなかったのだろうか。
→さすがに二日目のこの場面では実事までは行かなかった。だからこそ描写は却って細やかなのだって丸谷・大野先生はおっしゃってますが、、、。
いやあ何とも迫力がありますね。狂気の沙汰と見るか情熱の嵐と見るか。
いくら禁断の恋にこそ燃えあがるあやにくなる源氏とはいえ、ここは正気の沙汰とは思えないです。
藤壺の立場としては院亡き後、頼れるのは唯一源氏のみ。
その源氏からこの期に及んでなおあきらめることなく、しつこく言い寄られる。
もうこれは出家するしか道はない・・・この出来事が直接の原因で悲壮な決意をなされたのではないでしょうか。
塗籠での源氏、右往左往する情けない姿が想像され、つい笑えます。
ひき寄せたまへるに、御衣をすべしおきてゐざり退きたまふに、心にもあらず、御髪の取り添へられたりければ・・・この場面、おっしゃるようにまさに絵になりますね。
先日、守屋多々志美術館で求めた源氏物語の図録にもこの場面は描かれていませんでしたが行間から様々なことが読みとれますね。
物語の良い所です・・・
ありがとうございます。
おっしゃる通りこの場面様々に読み合うことができると思います。ウイスキーでも一本おいて感想会やれば楽しいでしょうね。
いくらあやにくなるご性格とは言え、藤壷とのことだけは絶対にバレてはいけない。さすれば少しは理性のブレーキがかかりそうなものを。朧月夜とのことも危ないのにいい加減にしたら、、、、と思うのですが。そういう常識に全くかからないお方なんですね。
この件を読んで、一条帝・彰子・道長はどう思ったのでしょうね。