花宴(1・2・3) 花の宴 朧月夜登場

「花宴」春の夜のもやにそひたる月ならん手枕かしぬ我が仮ぶしに(与謝野晶子)

G18年秋の紅葉賀に対応する春の宴(桜&藤)、G20年春のことです。これからの物語に文字通り彩りを添える人気抜群「朧月夜」の登場です。短いですがウキウキの巻です。

p244 – 256
1.花の宴に、源氏と頭中、詩作し、舞う
 〈寂聴訳巻二 p122 二月の二十日すぎに、〉

 ①G20年2月20日余 紫宸殿の左近の桜は満開(内裏図で位置をチェック)
  藤壷は中宮として帝の横に、弘徽殿女御は一介の女御として後列に(女御の心境如何)

 ②紅葉賀の試楽の描写に対比させて春の宴が語られる。
  題字を与えられて作詩する。この催し優れて文化的。
  いつもながら源氏が段トツ次いで頭中将、他はぐっと落ちる。

 ③年老いた博士どもの様子。貧相だがプライドを持っており帝も一目おいている。
 
 ④舞いは
   紅葉賀では 青海波(源氏&頭中) ・ 秋風楽(承香殿の四の皇子)
   花の宴では 春鶯囀(源氏ちょっとだけ) ・ 柳花苑(頭中)
 
 ⑤藤壷が複雑なまなざしで源氏の光輝く姿に見入る。
  藤壷 おほかたに花の姿を見ましかば露も心のおかれましやは 

2.宴後、弘徽殿の細殿で朧月夜の君に逢う  ここも名場面です
 〈p125 夜がたいそう更けてから、花の宴のすべてが終わったのでした。〉

 ①内裏図で藤壷・弘徽殿の位置関係をチェック。向かい合わせです。
  そのあたりをフラフラと藤壷を求めて彷徨う源氏

 ②藤壷はガード固くロックされている。弘徽殿は甘い、三の口開きたり
   かやうにて世の中の過ちはするぞかし
   「朧月夜に似るものぞなき」

  この辺りは解説不要で一気に読むべしです。何度読んでもワクワクする。
  紫の上の登場に匹敵する朧月夜の初出。女君が酔ってる所もこの場面だけか。

  こなたざまに来るものか。 →来るではないか。筆が躍っている。

 ③源氏 深き夜のあはれを知るも入る月のおぼろけならぬ契とぞ思ふ 代表歌
  まろは、皆人にゆるされたれば、召し寄せたりとも、なんでふことかあらん。ただ忍びてこそ → 源氏のゴーマン言葉集

  この君なりけりと聞き定めて、いささか慰めけり。
   → 源氏と知って抵抗の力が弱まる 酒井順子の言う「強制和姦」

 ④朧月夜 うき身世にやがて消えなば尋ねても草の原をば問はじとや思ふ
   と言ふさま、艶になまめきたり

    「艶になまめきたり」という表現は、本来、朧月夜の君の持っている特質かもしれないが、この場合は、一夜にして男を知ってしまった女の、もはや清純ではない婀娜っぽさが一言にいいつくされている。(瀬戸内寂聴 「わたしの源氏物語」)

 ⑤あれは誰であったのか源氏の推量と想い→現代感覚では受け入れがたいひどい話
  六の君は春宮への入内が決まっていた→それにしてはガードが甘いのでは。

 それにしてもコトの現場は弘徽殿の細殿。細殿って庇の間でいわば屋外ではないのだろうか。よく分かりません。。。

3.従者をやって、朧月夜の君の素性を探る 
 〈p131 その日は大きな宴会の後につづくきまりの小宴会があって、〉

 ①良清、惟光に素性を探らせる。、、、やっぱり右大臣の娘か。

 ②源氏 世に知らぬ心地こそすれ有明の月のゆくへを空にまがへて
  昨夜の女性、よほどいい女性だったのだろう。

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5 Responses to 花宴(1・2・3) 花の宴 朧月夜登場

  1. 式部 のコメント:

    細殿は渡殿とも言われます。殿舎から殿舎への渡り廊下のようなもの、あるいは殿舎のぐるりのことです。そこの通路以外の部分を簡単な間仕切りをして女房の局としていたようです。そこに女房などが住んでいるのを細殿住ともいいます。
     ですからプライバシーは全然ありません。お互いに「見ても見なかったことに、聞いても聞かなかったことに」するのが暗黙の了解事項だったようです。 ただ時間の経過とともに漏れて行って噂話になっていくことが多かったと思われます。
     枕草子の44段(底本によって異なりますが)「ほそ殿に人あまたゐて~~」の部分は清少納言の召使い論ですが、そこを読むと細殿の雰囲気がつかみ易いかもしれません。参考にしてください。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      細殿・渡殿のイメージよく分かりました。枕草子も読ませてもらいました。
      仕切って部屋なんかにしてたとはいえ色んな人が自由に出入りしたセミオープンスペースと思えばいいのでしょうか。そんな所でよくもまあ。「ワイルドだろおっ!」も真っ青ですね。

      プライバシーについてもよく分かりました。現代とはあまりに違い過ぎるのでちょっとピンときませんが。それも身分社会のなせるところなんでしょうね。同僚同士は「見ても聞いても知らんふり」ですか。身分の高い人は低い人を同じレベルの人間とは思っていないから、見られても聞かれても平気だったということですかね。

      (明日江戸東京博物館に行こうと思ってたのですがこの大雪で後半戦に延期しました)

  2. 青玉 のコメント:

    紫宸殿の位置が今いち良く解りません。
    内裏の内部にあるのでしょうか?
    6巻の平安京条坊図でいえば大内裏の中の①番の位置と思えば良いのでしょうか?

    秋(紅葉賀)から春(花宴)へ、ともに華やかな気分にさせてくれますね。

    朧月夜、初登場ですね。
    何やら名前からしても色っぽくなまめかしい女性のようですが・・・
    源氏、またまた新しい女性を求めてマメですね。
    男性の憧れトップとか、どんな女性か楽しみです。

    • 清々爺 のコメント:

      お忙しいところありがとうございます。

      1.あれっ、紫宸殿ですか。6巻p267 平安京内裏図です。真ん中です。
        紫宸殿=南殿 左近の桜 右近の橘です。

        なお、紅葉賀の試楽(青海波)は同図清涼殿の東庭(清涼殿と仁寿殿の間の庭)で行われました。

      2.朧月夜、明日の感想にも書きましたが興味深い女性です。今後とも論じ合うこと楽しみです。

      • 青玉 のコメント:

        あっ!!本当。
        p265を見ていました。
        さらに次ページの大内裏と内裏の図を見落としていました。
        よく解りました。
        有難うございます。
        地図って大事ですものね。いろんな事がイメージできますもの・・・

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