p210 – 217
10.源氏・藤壷、和歌に託して思いを交す
〈p94 源氏の君は二条の院の御自分のお部屋でお寝みになって、〉
①源氏と藤壷の歌の贈答。信頼できる王命婦経由とはいえ危なっかしい。
源氏 よそへつつ見るに心は慰まで露けさまさるなでしこの花
藤壷 袖ぬるる露のゆかりと思ふにもなほうとまれぬやまとなでしこ
この藤壷の歌、解釈が難しい。「やはり若宮をいとおしむ気にならない」と脚注にあるがそれなら藤壷は心にもないウソの気持ちを源氏に伝えたのだろうか。よく分かりません。
11.源氏、紫の上との遊びに思ひを慰める
〈p96 つくづくと物思いに沈みこんで寝ていらっしゃっても、〉
①紫の上のあどけない姿。会話に古歌を引用するところなど11才と言えどさすがに源氏の教育が行き届いてきたなあと思わせる。
②小さい紫の上が背を伸ばして琴を引く様子がいかにも可愛らしい。琴の名手になる。
小さき御ほどに、さしやりてゆしたまふ御手つきいとうつくしければ、
③出かけるに際しての源氏の紫の上への言い訳が何とも傑作
まづくねくねしく恨むる人の心破らじと思ひてむつかしければしばしかくも歩くぞ
→ 自業自得とはいえご苦労さまです。
④でも紫の上の無邪気さに負けて外出取りやめとなる。
→ それはいいけど、取りやめられた方の恨みは如何なんでしょうかね。
12.紫の上との風評につき、帝、源氏を戒める
〈p99 こんなふうにして、姫君に引き止められておしまいになる折々も〉
①噂を流すのは女房たち。色んな屋敷に出入りしている女房たちが見知ったプライバシーを尾ひれをつけて流し合う。ゴシップ・スキャンダルほど楽しい話題はないこと今も昔も変わりはない。
源氏が二条院に幼い娘を隠しているなどはかっこうの噂のタネだったろう。
「ねぇねぇ、ちょっと聞いて、とんでもないわよ!!」声が聞こえるようです。
②父帝にも噂が届いて苦言を呈する。当然でしょうね。
源氏、藤壺共に撫子に例えた若宮に愛おしさが湧かないのでしょうか?不思議?
お互いへの気持ちの方が優先しているように見受けられます。
紫の上はそんな源氏を慰めるべく格好のおもちゃ的存在に感じます。
源氏が出かける際にも拗ねてふさぎこむ様子などは幼女が「パパ行かないで!!一緒に遊ぼうよ」とおねだりするのに似てそんな紫の上に対し「しょうがないな~今夜は出かけるのを止そうか」
全く親子のやり取りみたいで何だか普通の家庭の会話を連想させます。
「さぶらふ人々も聞こえあへり」は、女ことばで女房の噂とわかりますね。
いつの世も噂かまびすしいのは女性です。太古の昔から変わらないのでしょうかね。
帝もご忠告せずにはおれなかったのでしょう・・・
ありがとうございます。
1.源氏と藤壷の歌の応酬。解釈が難しいですね。
両歌とも万一他人に露見した場合に配慮して両様に取れるように詠まれているのでしょうかねぇ。真意は両歌とも「二人のかわいい皇子を存分に可愛がれたらいいのになあ」ということだと思うのですが、、。
2.帝は源氏に二条院に女性を囲っていることは注意するものの、内々の女房たちへの軽々しい振舞いはないし、その点真面目なんだがなあと不思議に思っている。
→次段 源典侍との話につながってる所が面白い。