さて場面ががらりと切替わり物語中屈指の重要場面となります。
p59 – 61
13.藤壷、宮中を退出 源氏、藤壷と逢う
〈p282 藤壷の宮のお加減がお悪くなられて、〉
①藤壷邸 = 三条宮というが二条大通りに面していて源氏の二条院の2区画西。極近である。
②宮中ではなかなか手出しできない。里帰りしている。チャンス到来。
かかるをりだにと心もあくがれまどひて、いづくにもいづくにもまうでたまはず、内裏にても里にても、昼はつれづれとながめ暮らして、暮るれば王命婦を責め歩きたまふ
もうボオーっとしてしまって何事も手につかない、さながら狂っている感じ、、この表現すごいですね。
③王命婦 = 藤壷の女房、身分高い。手引き者。おそらく源氏が手なづけたのであろう。
ちょっと年増、万事をよく心得た魅力ある女性だと勝手に想像してますがいかが。
④王命婦がどのように仕組んだのか全く語られず一挙に逢瀬の場面になる。
宮もあさましかりしを思し出づるにだに
この一節が重要。過去に既に密会があったことを語っている。
⑤G18年4月初めの短夜のこと
源氏 見てもまたあふよまれなる夢の中にやがてまぎるるわが身ともがな
藤壷 世がたりに人や伝へんたぐひなくうき身を醒めぬ夢になしても
二人が罪を共有した瞬間、二人の歌を繰り返し賞味したい。
見る・あふ・夢が縁語で情事を暗示している。
⑥命婦の君ぞ、御直衣などはかき集めもて来たる
すごくリアルな表現。短夜で夜が明けかかってる。二人はなかなか離れられない。王命婦が脱ぎ捨てられた直衣を持ってきて「もう明るくなりますよ。何をぐずぐずしてるんですか。早くこれを着て帰ってください!」って急き立ててる。。。ってなことをこの一行で語るのです。省筆の妙ですね。
(寂聴さんに藤壷との最初の逢瀬を語った「藤壷」(講談社文庫)という短編がある。想像どおりのストーリーで源氏読者には読まずもがなかと思います)
「紫の上」への思いも覚めやらないうちにもう今度は「藤壺」ですか。
仕事中も家にいても身も焦がれんばかりの源氏、「暮るれば王命婦を責め歩きたまふ」
まるでやんちゃな坊やがおねだりして付き纏っているように思えます。
王命婦の手引きで思いを遂げた源氏。
せつない短夜の贈答歌に二人の心情が溢れています。
結びの「御直衣などはかき集めもて来たる」に全てが凝縮されていますね。
返事が遅れすみません。
1.夜が待てないって強烈な表現は夕顔9.にも出てきましたね。夕顔の方は夜さえ来れば自分で行ける。早く夜になればいいってことだけど、この場面は何ともならない。昼間はボオ~っとして(折口信夫の「ながめ」)夜になると王命婦のところにおねだりに行く(青玉さんおっしゃるやんちゃな坊やですね)。ここまで言われたら王命婦としては母性本能で「しょうがないわね、いいわ、光るの坊や、わたしにまかせておいて」てなことになったのかもしれませんね。
2.藤壷、六条御息所といった超上流階級の女性との濡れ場は省筆というかモザイクというか詳しく書かないのが礼儀だったのでしょうか。空蝉とか夕顔とかの場面とはエライ違いです。
「御直衣などはかき集めてもて来たる」 なんて言われてもその前の場面をもうちょっとリアルに書いて欲しいなあと思うのですが。。。(寂聴さんも円地文子も精いっぱい筆を補って訳している感じではありますが特段飛躍はしてないと思います)
→ さて髭白大将、出番です。窯変の光る君はどんな風に藤壷に迫ったのでしょうか。